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15.砂糖まみれの言葉ばかり

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 連れ込まれたのは、レオンの寝室。
 初めて入るその場所はすっきり片付いている。家具も莉緒の部屋にあるものよりずっとシンプルだった。
 ただベッドはクイーンサイズで、倒れ込んだ二人を心地良い反発力で迎える。


「んんぅ」
 レオンのキスは何だかとても饒舌だ、と口の中を嬲られながら莉緒は思う。
 ただ衝動のまま唇と唇が、舌と舌が触れ合うのではない。キスをするのが目的ではなく、これは手段の一つなのだと感じる。


 愛していること、触れたいこと、大切にしたいこと、それを伝えるために優しく、そして情熱的に莉緒の内側に触れる。


「リオ、リオも舌絡めて」
 そう言われて、受け身だった莉緒は彼の動きにおずおずと応える。ぬるぬると擦り合わせて互いの唾液を味わえば、ぐんと興奮が高まって来た。
 まだキスしかしていないのに、とんでもなく気持ち良い。キス一つでここまで気持ちや身体は高まるものだっただろうかと不思議になるくらいに。
「んっ、ふぁ、あぁ」
 圧し掛かられているだけで特別には触れられていないはずなのに、下腹の辺りが甘く疼いていた。久しぶりの高揚に、莉緒はただただ飲み込まれていく。
「レオン、もっとキスして。レオンの舌、きもちい」
「いくらでもしてあげる。リオ、可愛い」


 可愛いという一言の持つ破壊力は凄まじい。
 言われ慣れないから恥ずかしいけれど、とてつもなく心が満たされる。自分が特別になった気がする。
 添えられた手に頬を擦りつけながらもっともっとと莉緒が口付けをねだれば、ちゅぷっじゅぷっとわざと派手な音を立てながらレオンは狭い口腔を貪ってみせた。


 莉緒自身は気付いていなかったが、組み敷かれたその身体がもどかしげに揺れ始める。
 その訴えを拾って、大きな手がラフなショートパンツの裾から太腿を撫で上げた。
「ふぁ」
 ぞくん、と走る痺れ。思考が蕩けて行く感覚。莉緒の甘く緩んだ表情を確かめたレオンが誘惑するように絶妙な触れ方で何度も太腿をなぞる。
「あ、やぁ」
「気持ちイイ?」
「っは、は」
「もっと触ってほしい?」
「ぞ、ぞわぞわしちゃう」


 気持ちイイのは確かだった。けれど莉緒が知っている快楽を、この時点で超えているような気がして、これ以上の感覚が怖くてそう答える。


「もっとして」
 けれどレオンは愉しそうにそう言って、次はショーツのクロッチの隙間から指を侵入させた。
「ひゃ!」
 そう簡単に他人に触れさせない場所に、長い指が割り込む。花弁を割られて秘裂をひと撫でされればくちりといやらしい水音が響いた。


「キスだけで、濡れちゃった?」
「……!」


 違うと莉緒は叫びたくなったが、何も違わないので言葉に詰まるしかなかった。身体が潤い始めていることを否定はできない。


「あ、レオン、恥ずかし」
「今からもっと恥ずかしいことするんだよ、これくらいじゃ」
「ひゃあ!」
 つぷり、小さな入口に指先が沈み込む。異物感に身体は委縮するが、ナカは既にぬるぬると受け入れる準備をしていた。
「あ、あ、あ」
 慎重に、這うように莉緒の隘路をレオンの指が進む。じゅわりと蜜が滲む感覚に、羞恥はどんどん大きくなっていく。
「リオのナカ、熱いね。ぬるぬるで、狭い」
「ぁん!」


 耳たぶを甘噛みされ、反対の手が上の服をたくし上げブラをズラしてふくらみに直接触れた。ふにふにと揉みしだきながら、伸ばした人差し指で頂きを押し潰す。
 急にあちこちから刺激を与えられて、莉緒はベッドの上で身体を撥ねさせた。


「レオン、そんないっぺんに……!」
「どこ触っても気持ちイイ。リオの身体どうなってるの、歯止めが利きそうにない」
「んん――――っ!」
 さっそく芯を持ち始めた頂きをぱくりと口に含まれ強く吸い上げられれば、それだけで莉緒の身体は小さく達した。
「ナカ、締まった。リオ、先っぽいじめられるのが好き?」
「や、わかんなっ」
「好きなとこ、全部教えて」
「あ、あぁん! だめぇ!」


 莉緒の反応が格段に良くなったことに気を良くしたレオンが、ここぞとばかりに頂きを攻める。巧みな舌が絡み、舐め上げ、時に乳暈をそわりと刺激し。
 痛くないラインを見極めて甘噛みされれば、その全てに莉緒は翻弄された。おまけに秘所には依然指が入ったままなのだ。まま、というか、どんどんと奥へ侵入しあちこちを擦り上げる。


「あ、あっ、んぅ、やだぁ」
 自分の喉からあられもない声が出るのを止められない。
 気持ち良くて気持ち良くて、もうどうにかなりそうだった。シーツにしがみついて、何とか快感をやり過ごそうとするけれど、大した効果はない。
 莉緒はもう俎板の鯉で、彼の手によって如何様にも調理されてしまうのだから。


 それでも。
 じゅうっと一際強く吸い上げられたその瞬間、快感とは別の思考がハッと莉緒の頭に浮かんだ。


「シャワー!」


「リオ?」


 思い出してしまったのだ。
 日本ほどではないとは言え、夏場のこの時期に。


「まだ浴びてない……!」


 乙女として非情に頂けない。どう考えても汗くさいことになっている。
 レオンは突如叫んだ莉緒に一瞬驚いた顔になったものの、すぐにまたにこにこ笑顔に戻って真っ青になった莉緒を押さえ込んだ。


「うんうん、余計なこと考えるのはやめようか」
「余計じゃない、すっごくだいじ……!」


 乙女の沽券に関わってくる! という日本語での叫びは、“コケン?” と不思議そうな顔をされただけに終わった。


「んっ、ひゃあっ」
 隘路を探られていた指が抜ける。レオンはそのまま手早くショートパンツと一緒に下着を抜き取った。
「やだぁ!」
 急に下半身を無防備な状態にさせられあまりの羞恥に脚を閉じようとするが、それより早くレオンの身体が割り込んでいて、まるで腰に巻き付けるようなことになってしまった。
「ひ!」
 慌てて脚を外せば、自ら開脚するハメになる。
「ひ、ひどい……!」
 何をやっても追い詰められる。
「ごめんね」
 莉緒が涙ながらに抗議の声を上げると、レオンはそう言ってこめかみに軽いキスを落とされた。


「でも大丈夫だよ。リオ、いい匂い」


 それに、と晒された秘所から蜜をひと掬いし、レオンは言った。


「ここもすごく可愛い」


「か、可愛いとか言うような場所じゃないでしょ! っていうか、そんなに凝視しないでよぉ」
 感覚がおかしい。あと、睦言の破壊力がとんでもない。
 甘い言葉と卑猥な実況の嵐に、莉緒はそれだけで爆発しそうになる。


「可愛いよ、綺麗な色だ。ねぇ、ひくひくしてる。早くココに欲しいんだよね?」


 こんなにも言葉にされることも、莉緒には経験がなかった。
 つまり、耐性が全然ないのだ。


「レオン、あんまり色々言わないで……」
「言わなきゃ伝わらないのに?」


 莉緒の羞恥心を、きっとレオンは理解できていない。彼は当たり前に己の思うところを述べているだけだから。


「あっ」
 入口にまた指が添えられた。
「んん!」
 今度は二本、同時に侵入を試みられる。
「リオ、上手。ちゃんと僕の指、咥えられてるよ」
 次から次へとじゅわりと滲む蜜、奥へ誘うようにうねる膣壁。奥を許すことへの恐怖と圧倒的な期待。
 しかも次はクリトリスを一緒に弄られる。
「あぁあ!」
 バチン! と弾けるような強い快感だった。苦しいくらいに強い。でも、もっとしてほしい。
「リオの身体は敏感だね。可愛い。気持ちイイって感覚をいっぱい拾ってくれる」
「レオっ、あ、いやぁ、あんん!」
 我慢できない快感が涙になって目尻からぽろぽろ零れ落ちる。刺激されるほどにナカはうねって、淫靡にレオンの指を飲み込んで行った。
「リオ、可愛い、リオ、もっと聞かせて。沢山気持ち良くなって」
「レオン、だめ、あ、強い、ね、そんなにしたら気持ちイイの!」
「うん」
 二本の指がナカを拡張するように押し拡げる動きをする。できた隙間に捩じ込まれるのは三本目。バラバラに動く指達がどんどんと莉緒を追い詰めていく。
「は、あ、あぁ……! レオン、やだ、ナカもクリも一緒に触るの気持ちイイの! やだぁ、我慢できないぃ」
「我慢しなくていいよね? リオ、いいんだよ? ほら、イッて?」
 内側から持ち上げるように、けれど外側は充血しきってぷっくり膨れたクリトリスを押し潰すように強く刺激された瞬間、莉緒は絶頂を迎えた。
「あ、あ、あぁあ――――!」
 容赦のない快楽を身体全部で必死に受け止める。弓形にしなった背中がベッドから浮いた。快楽の頂点を過ぎれば、痺れた身体は脱力する。


 もう、何も抵抗できない。身体は柔らかく拓かれていた。
 投げ出された莉緒の肢体の上で、レオンがごそごそと前を寛げ避妊具を装着する気配。


「リオ……」


 囁かれた自分の名前は甘く蠱惑的な色をしていた。
 圧し掛かられて、肌と肌が触れ合う。お互いもうすっかり体温が上がっている。
 ずしり、男の人なんだと思わせる重量を感じた莉緒だったが。



「――――待って」


 下腹に感じる少々想定外の感覚に、一気に意識が鮮明になった。



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