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【第二話】意中の騎士とやっっっと恋仲になったのに何故か一向に手を出してこないので、ここらで一服盛ることにした件について
【第二話】その13
しおりを挟むこの間、コレ、本当に挿ってた?
短期間でサイズアップしてない? 絶対ムリなんですけど。
いや、大きすぎる。あまりに大きい。こんなモノ、人体に入るサイズじゃない。
裂ける。オレの尻がご臨終を迎えてしまう。
オレの冷静な部分が全速力でそうまくし立てていた。
お前、コレはやめておけと。
が、男には、いやこの際男女なんてものは関係ない、人間には引けない場面というのが確実にある。
今がまさにそれ。
この状況、催淫効果のあるものを盛っておいて、散々に相手を煽っておいて、押し倒して弄って自分を解しているところまでお見せしておいて、いざ御対面したらすみませんまたのお越しをお待ちしております、今日のところはお引き取りくださいなんて、そんな訳にはいかない。いく訳がない。
「っ……!」
覚悟を決めろ。
オレは怯みそうになる己をそう叱咤して、アレクに跨り直した。
「っふ!」
その昂りに昂った先端を、己の後孔に宛がう。
「うぐっ」
「ん、んぁ」
何度か滑って失敗したが、そのうちに先端がくぷんと沈む感覚がした。
「ぁ、あぁ」
少しずつ、上下に腰を振って深度を深くしていく。自分の指でするのとは違う。自分のナカを押し広げて行く、圧倒的な存在感。
苦しい。苦しいけど、嫌じゃない。
怖いけど、とても挿る気はしないけど、でもコレが欲しかった。
欲を言うなら、もっとお互い蟠りのない状態が理想ではあったけど。
「シオン、止めてくれ、ぐっ!」
「うぅ……!」
重心を後ろにズラして、少しずつ体重をかけていく。解す練習はいくらかしていたが、言っても初心者の自主練である。程度が知れている。
もちろんこんなに太くて大きいものを挿れたりはしていないので、何とか主導権を取ってはいるがきっとオレの動きには拙いところが多々ある。
「シ、オン!」
己のナカに挿れようとしているモノに全ての意識を持っていかれそうになる。それでも制止するように伸びて来た手は、すかさず払ってみせた。
「全部っ自分の思い通りになると、思うなよぉ!」
オレは怒っているし、悲しいとも思ってるし、自分のしていることはひどく間違っている気も、全て押し切って快楽で塗り潰したいと考えてもいる。
「オレはお前が好きでっ、お前だってオレが好きって言うなら!」
何がどうして、アレクとこんなことになってしまってるのか分からない。
「こんな方法じゃなくて、ホントは……ホントはもっとやりようがあるはずなんだからな……!」
ムカつく。オレばかり、振り回されて。
勇気を出して、腰をグッと落とす。喉から妙な声が漏れて、下腹の圧迫感はさらに増したが、それでも多分まだ半分くらいしか挿っていない。
「アレクの阿呆!」
叫んだオレが涙目なのは、圧迫感が酷いからだ。
めそめそしている訳ではない。断じてない。
「そんな阿呆なお前でも、オレは好きで……!」
幻滅できたら良かったのに。いや、したような気もする。
でも、その後でまたむくむくと理屈では説明できない感情が湧いてきて、想いを寄せてしまう。
そう、阿呆なのはオレの方である。
「う、うぅっ! う~!」
果敢にも挑み続けていたオレだったが、遂にアレクの剛直を飲み込むのに限界を迎えてしまった。まだもう少し残っているのに、ここから奥へと受け入れられない。勢いをと思うけれど、もうお腹がいっぱいなのだ。これ以上は何も咥えられない。
「……シオン」
僅かばかり腰を振るが、それでどうにもならないことは分かっていた。
多分、もっと思い切りが必要。でもこれ以上なんてそんな、人体にも限界が、アレクの方に努力して頂いてもう少しサイズダウンするなりして頂かなくてはというラインに達していた。
シてもらえないなら、自分でするしかないのに。
逃がさないってアレだけ宣言したんだからやり遂げてみせろ、オレのへなちょこ、腰抜け、有言不実行!
苦戦に苦戦を重ね続けていると、不意に身体のバランスが崩れた。
へばってしまった訳ではない。アレクが身体を起こしたのだ。
「なっ」
されるがままになっていたはずなのに、まさかもう薬の効き目が切れ始めた?
店主は確かに、体格によって効きが変わってくるとは言っていたけど、アレクは惚れ惚れする鍛えられた身体ではあるけれど。
「それじゃ駄目だ」
が、違うかもしれないと瞬時に思い直した。
身体を動かす自由は戻っているのかもしれないが、目が異様にギラついている。吐息は荒く、首筋を汗の玉が転がっていく。
「え、あ?」
不意に両側から腰を掴まれた。一瞬軽く持ち上げられる。抜く気か……! と思ったが、それは杞憂だった。
「あぐっ!?」
「っは……!」
ぐちゅん! と最奥を潰される感覚。あまりの衝撃に息が詰まるし、瞳の裏に星が散る。
勢いをつけて、アレクがオレの腰を引き落としたのだ。自分一人ではなかなか思い切れない勢いがあった。
「あ、あ、あぁあ」
脳の奥から痺れる。腰は重だるいのに、その中に甘く中毒性のある刺激を内包している。
確認する余裕はなかったが、どう考えても埋め込まれたモノでオレの下腹はぽっこりしている。どこにも隙間がない。隙間がないというか、無理矢理に全部アレクの形にされている。
強烈にその形を、熱を、質量を刻み付けられている。
「シオン、シオンっ」
「うぁ、あ、ひうぅ!」
容赦なく腰を打ち付けられる。耳元で零される声はいやに熱を帯びていて、呼ばれた名前のその中に愛してるだとか、どこにもやりたくないとか、そういう言葉が存分に含まれていることを教える。
何だよアレク、お前、本当にムカつくな。
こんなムカつくのに、まだ愛おしい。信じられん。恋ってのは盲目すぎるし、おまけに言えばしぶとすぎる。
「うぅ~!」
悔しい。惚れたが負けというやつだ。オレの方が圧倒的に弱い。
悔しいから、オレは簡単にコイツのことは諦めてやらない。多少ムカついたり、幻滅したりしても、嫌ってなんかやらないのだ。
「アレクの阿呆!」
もう一度、悔し紛れにそう罵ってやる。
「お前の言うことは、尤もだ」
が、その怒りも快楽の前にはチョロかった。罵りはそのうちにただの喘ぎ声に成り下がっていく。
仕方がない。だってもう仕方がない。
オレの恋心はどうにも不死身なようなので、こうなったらもうとことんこの気持ちと付き合っていくしかないのだ。
「あ、や、ソコはむりぃ……!」
容赦なく責め立てられ啼かされながらも、オレは諦観と共に改めて覚悟を決めたのだった。
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