無想無冠のミーザ

はらわた

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第一章 「占拠された花園」

九章 character(2)

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 穏和な顔をしてそれぞれの顔を確かめ、陽気に話し始める。

「ボクの名前は風上かざかみ信夫しのぶと言うんだ。これでも忙しい三年生でね、それでもここの番は勤めているんだ。先輩を見習うのならボクからの方が身のためだよ」

 風上というのか。これから風上先輩と呼んでいけばいいのかな。

「そんなんどーでも良いからよぉ。なんで他の奴らは誰もいねぇんだよ」

 隣の浅野が顔を歪めて風上先輩を睨む。チンピラだろお前。

「それはね、馬鹿やってるからさ」

「馬鹿やってるだとぉ……?」

 風上先輩はふっふっふと笑いながら指を眼鏡のふちを掴んで掛け直し、浅野に指を指す。

「忠告をしておくけど、この平和部に入るからにはこれまで過ごしてきた当たり前は無くなるものと思ってほしい。いいかい? 今までのことはキミ達を安心させたり、喜ばせるだけのただのサービス。触れるものは血で、聞こえてくるのも血の音、見るのも臭うのも、口の中で味わうもの全て血で出来ている」

 ここで俺はびびってしまっていた。恐ろしいことを口にする場合、大抵冗談とか、血が上って理性がない時なのだが、この風上先輩は陽気なまま普通に言っている。

 風上先輩の当たり前を言っているだけなのだ。

「はぁん? 知ってて来てんだよ俺様はよぉ!」

 浅野の何に怒りが触れたのか、風上先輩に怒鳴り散らした。

「けどね、精神衛生がきついほど楽しいことには全力で打ち込むんだよ。ボク以外の部員は、明日の部活動紹介の為に色々な準備をしている。イベントってのは少ないから、みんなはためすぎたエネルギーを派手に使ってるんだ。キミ達には、いや、アレクトー以外には分からないだろうね」

 話に出されたフリアエは特に何も言わない。

「で、さぁ。豚はどんな活動してるのか教えろよ。わざわざ俺様が来てやってんだからよぉ!」

「まあまぁ、もちろん教えるよ」

 何を言われても動じない風上先輩は鋼の心臓を持っているのか気になった。

「ボクはね、戦うのは嫌いなんだ。だからここで依頼の受付や平和部の連絡事項のまとめ、部員の呼び出し、あとちょっとした人生相談をしてあげる。平和でしょ?」

 それに対して声は無かった。みんな、何も言うことが無いということだ。

「でもこの役割はボクが取っちゃったから、キミ達は戦う役割を持たないといけない。ボクみたいに機転を利かせて楽な役割を作るのなら話は別だけど」

「無理ですよ、風上先輩」

「ん?」

 俺は思うよりも先に口が出てしまい、そのまま言ってしまった。

「俺達には目の前のやるべきことがあるんですから、逃げられません」

「……ボクのやり方が逃走だと言いたいのかな」

「いいえ、それは風上先輩の正義が成したことであります」

「……語るまでも無き人の世かな」

 風上先輩は嬉しそうに見える。その風上先輩から出てきた言葉はどこか暖かみがあり、何故か納得ができた。
 
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