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炎国への旅路編

25話 俺さ英雄の話をしたよな

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「先見の目?」

「一種の未来視だ。絶対ではないが、キョウの目には助けられている。まぁ、初代様に言わせると、神に気に入られているか、遊ばれているかどちらかだろうと言われているがな。」

 あれ?今おかしな言葉がありましたね。初代様っていいましたよね。まだ、ご顕在なのですか?
 あの少女が炎王の事を語ったとき『一度、炎国を訪ねるといいかと思います。初代炎王はかなり手広くやったみたいですよ。多分、無から有を生み出すことができたのでしょう。』と過去の人物の様な言い方をしていました。どういうことでしょう。

「初代様が炎国を作られて千年と聞きましたが鬼族って長生きするのですね。」

 私がそうザックさんに尋ねますと、甲板にいる皆さんの視線が一斉に刺さりました。離れたところの船首で前方を確認していたキョウさんも振り返っています。

 何かいけないことを言ってしまったのでしょうか。

「奥様。あんた炎国に行かない方がいいと思う。それか炎国に着いたら一切喋らないかだ。」

 ザックさんのその言葉に甲板にいる皆さんが首を縦に振っています。何がダメだったのでしょう。

「奥様。」

 マリアに呼ばれ後ろを振り向きます。

「初代様は龍人です。鬼族ではありません。」

「え?炎国は鬼の国なのですよね。なのに初代炎王が龍人?」

 なんだか周りからの視線が凄く痛い気がします。

「なぁ。マジで言っているのか?炎国に送り届けるが、その後の命の保証はしないぞ。」

「俺も案内役は拒否をする。」

 ザックさん命の保証って、そこまでの事を私何か言ってしまいましたか?いつの間にかキョウさんが後ろにいました。キョウさんに案内役を降りられるのは困ります。

「何が悪かったのか教えてください。炎国で問題を起こさないために教えてください。」

「俺さ、英雄の話をしたよなぁ。」

 キョウさんの英雄の話ですか?覚えていますよ。

「俺たちはフィーディスだ。マリアはガレーネだ。グアトールはシーラン王国に渡った。残った英雄はアマツとグラシアールだ。」

 はい。そうですね。

「初代様の名はエン・グラシアール様だ。龍人の英雄と豹獣人の英雄の子だ。炎国の王でもあるが、ギランでも英雄の血を引いていることで、重要人物なんだよ。そこ間違うとあんた殺されても文句言えないぞ。」

 そ、そこまでの事なのですか!

「あの、このような事にならない為にも、基本的なことから教えて欲しいのです。」

「「そんな暇はない。」」

 ザックさんとキョウさんから拒否をされてしまいましたか。そうですよね。お仕事中ですよね。しかし、困りました。本当に何も知らなかったです。ギラン共和国では英雄と言う人たちが未だに崇められているのですね。

「マリアに聞けばいい。」

 ザックさんがそのように言われたのでマリアを見てみると首を横に振られました。

「私は炎国に行った事がありませんので、お話しできることがありません。」

 そうですね。マリアが炎国の事を知っていればこうなる前に教えてくれていましたよね。

「取り敢えず炎国に着いたら何も話すな。炎国の国民と絶対に話すなよ。それでキョウを付けるからなんとかしろ。」

「俺に丸投げするなよ。ザック。俺は仕事に戻る。」

 ザックさんに炎国に着いたら何も話すなと言われ、キョウさんには背中を向けられてしまいました。本当に困りました。


 船の客室に戻ってきまして、マリアに知っている炎国の情報を聞いてみましたが、初代炎王がギラン共和国生まれで島国に渡り炎国を作ったということぐらいしか知らないと言われてしまいました。

「そう言えば、シェリーさんが以前炎国に行くことを勧めてくれたときに、初代炎王が過去の人のように言われた気がしたのですが?」

「ああ、それはきっと今の炎王が5代目だからだろう。」

 クストが教えてくれましたが、5代目!千年で5代目って鬼族も長く生きる種族なのでしょうか?

「因みに鬼族はどれぐらいの寿命なのですか?」

「奥様。聞いた話では500年程と。」

「愚兄は5代目はとても気が合うと言っていましたから、近づかないようにしてください。きっと、ろくなことになりません。それから、炎国に行く度に初代炎王にお目通りが叶わなかったっと言って戻ってくるので、炎国にはあまりいらっしゃらないのかもしれません。」

 セーラから今の炎王の情報が出ましたが、愚兄と言っているお兄さんは外交官か何かですかね。

 そのような話をしながら一日目が過ぎて行き、2日目の日が登る前の早朝に突き上げるような振動で目が覚めました。
 何があったのでしょう。遠くから大きな声で何か言っている声が聞こえますが、何を言っているか聞き取れません。
 未だに振動は続いています。

「襲われているな。」

 隣で寝ていたはずのクストの声が離れたところから聞こえていました。
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