766 / 775
27章 魔人と神人
753
しおりを挟む
「そんなものシュロス王に用がある……」
シェリーが、魔神リブロ神がこの場にいる理由を代弁しようとしたところで、シェリーは言葉を止めた。
いや、シェリーの口は動いているので、音の伝搬を阻害されたようだ。
「これは喧嘩を売られている」
カイルは空間の間にいる魔神リブロ神を探すように、辺りを睨みつける。
そのカイルの態度にため息を吐くシェリー。
「はぁ、さっさとシエロ様を呼びに行ってください。でないと再び引きずり出しますよ」
いや、子供じみた抵抗をしている魔神リブロ神にため息を吐いたのだ。
リブロ神の気配が消えたことを確認したシェリーは視線を前方にむける。
「ということで、リブロ様とシエロ様のお力を借りるということで如何でしょう?」
そこには信じられないものを見たという感じで、レイアルティス王は唖然としている。
「何か間違っていないか?」
間違っている。それは神頼みではなく、神を脅して力を貸すように言うシェリーのことだ。
「え?二柱では足りませんか?そうですねぇ」
シェリーは首を傾げながら、チラチラと周りに視線を向けている。そしてハッとしてある一点で視線を止めた。
「これは珍しいですね。ルーチェ様がいらしているではないですか」
シェリーの目には金色の髪を靡かせ、いつもと変わらない笑みを浮かべている光の女神ルーチェの姿を捉えていた。
「炎国からお離れになるとは思っていませんでした」
炎国に祀られ崇められている光の女神ルーチェ。ただ民を見守り、時々声をかけるだけの女神が、このシーラン王国の地にいるのだ。
それはとても珍しいことだった。
そしてシェリーの言葉に、光をまとい金色の輝く髪を靡かせながら、人が住まう空間に現れたのだ。
「うっ」
「これは……」
女神が放つ神力に耐えかねるうめき声が聞こえるも、女神ルーチェはそのようなことは一切気にすることもなく、シェリーの前に顕れる。
『少しやり過ぎではないのかえ?』
シェリーが行おうとしていることに注意をするためにこの場に顕れたようだ。それはそうだろう。
たかが、聖女のお披露目パーティー如きのことで、世界の認識を強引に変えようとしているのだ。
神々からすれば、たかが人の分際で、そこまで干渉すべきではないと。
「そうでしょうか?これは必要なことですよね?」
しかしシェリーは女神ルーチェから直接注意をされたにも関わらず、自分は正しいと言わんばかりに女神ルーチェに反論した。
「ただ、エリザベート様が気に入らないだけですよね?」
それもシェリーは女神ルーチェの個人的な心情が入っていると指摘する。大魔女エリザベートが気に入らない。ただそれだけだと。
『それはそうであろう?あれはナディアの恩情を無下にした者である。ナディアは許しても妾は許せぬ』
女神ルーチェは大魔女エリザベートが構築した術を使い、その孫にあたるレイアルティス王に施行させようというのがただ気に入らないという個人的なものだった。
そしてその視線をこの状況にニヤニヤと笑みを浮かべているシュロスに向ける。
『あのようなモノを復活させて如何する?あれは厄災である。多くの同胞を無に帰した厄災は抹消すべきではないのかえ?』
女神ナディアはシュロスの前に顕れることを厭うていたが、女神ルーチェは本人を目の前にして死を口にした。
いやシュロスに死は白き神より与えられない祝福をされたために、抹消という言葉を口にしたのだ。
「あ!思い出した。この神さん。喚び出してもいないのに、俺を殺そうとした神さんだ」
シュロスの言葉から女神ルーチェは太古の時代にシュロスの存在は悪害になると言わんばかりに始末しようとしたらしい。
一柱でしかない女神ルーチェが、白き神から選ばれた変革者を始末しようとしたのだ。
これは白き神の威を否定する行為だと受け止められる。
「でもさぁ、それ八つ当たりだろう?神さんの代わりに死んだ神さんは、俺が何かする前に、光の矢に貫かれて消えたよな?」
シュロスの言葉に女神ルーチェが放つ神力の量が増える。床に倒れる音が聞こえるため、この異常な空間に耐えられなくなった者がいるようだ。
そしてシュロスの言葉から、女神ルーチェの行いを肩代わりするように死んだ者がいるようだ。
「今、思うとあれって、白い神さんの忠告だよな?やり過ぎなのは神さんの方だと思う」
神々も白き神に存在を許され存在しているのだ。何かしらのルールから外れたものは、白き神から罰を与えられるのだろう。
白き神の威に反抗することは許されないと言わんばかりだ。
『どの口が言う!全ての元凶はそなたであろう!』
いつもは穏やかな笑顔を見せている女神ルーチェが怒気をはらんだ声で叫んだのだった。
シェリーが、魔神リブロ神がこの場にいる理由を代弁しようとしたところで、シェリーは言葉を止めた。
いや、シェリーの口は動いているので、音の伝搬を阻害されたようだ。
「これは喧嘩を売られている」
カイルは空間の間にいる魔神リブロ神を探すように、辺りを睨みつける。
そのカイルの態度にため息を吐くシェリー。
「はぁ、さっさとシエロ様を呼びに行ってください。でないと再び引きずり出しますよ」
いや、子供じみた抵抗をしている魔神リブロ神にため息を吐いたのだ。
リブロ神の気配が消えたことを確認したシェリーは視線を前方にむける。
「ということで、リブロ様とシエロ様のお力を借りるということで如何でしょう?」
そこには信じられないものを見たという感じで、レイアルティス王は唖然としている。
「何か間違っていないか?」
間違っている。それは神頼みではなく、神を脅して力を貸すように言うシェリーのことだ。
「え?二柱では足りませんか?そうですねぇ」
シェリーは首を傾げながら、チラチラと周りに視線を向けている。そしてハッとしてある一点で視線を止めた。
「これは珍しいですね。ルーチェ様がいらしているではないですか」
シェリーの目には金色の髪を靡かせ、いつもと変わらない笑みを浮かべている光の女神ルーチェの姿を捉えていた。
「炎国からお離れになるとは思っていませんでした」
炎国に祀られ崇められている光の女神ルーチェ。ただ民を見守り、時々声をかけるだけの女神が、このシーラン王国の地にいるのだ。
それはとても珍しいことだった。
そしてシェリーの言葉に、光をまとい金色の輝く髪を靡かせながら、人が住まう空間に現れたのだ。
「うっ」
「これは……」
女神が放つ神力に耐えかねるうめき声が聞こえるも、女神ルーチェはそのようなことは一切気にすることもなく、シェリーの前に顕れる。
『少しやり過ぎではないのかえ?』
シェリーが行おうとしていることに注意をするためにこの場に顕れたようだ。それはそうだろう。
たかが、聖女のお披露目パーティー如きのことで、世界の認識を強引に変えようとしているのだ。
神々からすれば、たかが人の分際で、そこまで干渉すべきではないと。
「そうでしょうか?これは必要なことですよね?」
しかしシェリーは女神ルーチェから直接注意をされたにも関わらず、自分は正しいと言わんばかりに女神ルーチェに反論した。
「ただ、エリザベート様が気に入らないだけですよね?」
それもシェリーは女神ルーチェの個人的な心情が入っていると指摘する。大魔女エリザベートが気に入らない。ただそれだけだと。
『それはそうであろう?あれはナディアの恩情を無下にした者である。ナディアは許しても妾は許せぬ』
女神ルーチェは大魔女エリザベートが構築した術を使い、その孫にあたるレイアルティス王に施行させようというのがただ気に入らないという個人的なものだった。
そしてその視線をこの状況にニヤニヤと笑みを浮かべているシュロスに向ける。
『あのようなモノを復活させて如何する?あれは厄災である。多くの同胞を無に帰した厄災は抹消すべきではないのかえ?』
女神ナディアはシュロスの前に顕れることを厭うていたが、女神ルーチェは本人を目の前にして死を口にした。
いやシュロスに死は白き神より与えられない祝福をされたために、抹消という言葉を口にしたのだ。
「あ!思い出した。この神さん。喚び出してもいないのに、俺を殺そうとした神さんだ」
シュロスの言葉から女神ルーチェは太古の時代にシュロスの存在は悪害になると言わんばかりに始末しようとしたらしい。
一柱でしかない女神ルーチェが、白き神から選ばれた変革者を始末しようとしたのだ。
これは白き神の威を否定する行為だと受け止められる。
「でもさぁ、それ八つ当たりだろう?神さんの代わりに死んだ神さんは、俺が何かする前に、光の矢に貫かれて消えたよな?」
シュロスの言葉に女神ルーチェが放つ神力の量が増える。床に倒れる音が聞こえるため、この異常な空間に耐えられなくなった者がいるようだ。
そしてシュロスの言葉から、女神ルーチェの行いを肩代わりするように死んだ者がいるようだ。
「今、思うとあれって、白い神さんの忠告だよな?やり過ぎなのは神さんの方だと思う」
神々も白き神に存在を許され存在しているのだ。何かしらのルールから外れたものは、白き神から罰を与えられるのだろう。
白き神の威に反抗することは許されないと言わんばかりだ。
『どの口が言う!全ての元凶はそなたであろう!』
いつもは穏やかな笑顔を見せている女神ルーチェが怒気をはらんだ声で叫んだのだった。
32
お気に入りに追加
1,016
あなたにおすすめの小説
婚約者が最凶すぎて困っています
白雲八鈴
恋愛
今日は婚約者のところに連行されていました。そう、二か月は不在だと言っていましたのに、一ヶ月しか無かった私の平穏。
そして現在進行系で私は誘拐されています。嫌な予感しかしませんわ。
最凶すぎる第一皇子の婚約者と、その婚約者に振り回される子爵令嬢の私の話。
*幼少期の主人公の言葉はキツイところがあります。
*不快におもわれましたら、そのまま閉じてください。
*作者の目は節穴ですので、誤字脱字があります。
*カクヨム。小説家になろうにも投稿。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
聖女だけど、偽物にされたので隣国を栄えさせて見返します
陽炎氷柱
恋愛
同級生に生活をめちゃくちゃにされた聖川心白(ひじりかわこはく)は、よりによってその張本人と一緒に異世界召喚されてしまう。
「聖女はどちらだ」と尋ねてきた偉そうな人に、我先にと名乗り出した同級生は心白に偽物の烙印を押した。そればかりか同級生は異世界に身一つで心白を追放し、暗殺まで仕掛けてくる。
命からがら逃げた心白は宮廷魔導士と名乗る男に助けられるが、彼は心白こそが本物の聖女だと言う。へえ、じゃあ私は同級生のためにあんな目に遭わされたの?
そうして復讐を誓った心白は少しずつ力をつけていき…………なぜか隣国の王宮に居た。どうして。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラや攻略不可キャラからも、モテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍化決定
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる