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27章 魔人と神人

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「ああ!もしかしてアレを触っただろう?」

 いやシュロスには、心辺りがあるようだ。その叫び声を上げたシュロスにこの場にいる者たちの視線が突き刺さる。

「何をしたのです?」

 シェリーはシュロスが悪いと決めつけるような聞き方をした。いや、今までが今までだけに、何かをしたのだと確信がある言い方をしたのだ。

「ちょっと待て!んーあー……解除!」

 シュロスは慌てて何かを解除した。だが、この場には何も変化は起こっていない。

「説明をしてください」

 一人納得しているシュロスに、シェリーは説明を求める。するとシュロスはニヤリと笑って自慢げにいい始めた。

「精神と時の部屋ってあるだろう?それが……」
「ちょっと待ってください」

 シュロスが説明を始めたというのに、シェリーはその言葉を止めた。そして、炎王と陽子の側に行って深刻な顔をして話し出す。

「精神と時の部屋って、なんだと思います?言葉からは嫌な予感しかないのですが」

 シェリーは、そんなゲーム設定があるのかと二人に確認してみる。シェリーの知識は、その言葉は何も引っかからなかったからだ。
 そして、どうも時間系の何かだと予想ができて嫌な予感しかしないと。

「時間操作系だろう?でも精神が関係するのか?」

 炎王には心当たりがないようだ。

「あっ!陽子さんわかったかも!」

 心当たりがある陽子に四つの視線が向けられる。

「ドラゴ◯ボールだよ」

 とある漫画の題名を出してきた。なにかとキャラクターもののTシャツを着ている陽子だ。そういう知識は他の二人に比べてあるらしい。

「時間加速が施されている部屋で、修行するという話に出てくるよ」
「そうだ!」

 陽子の答えにシュロスが同意する。ならばこの状況にも理解できるというものだ。元々の内装には変化は見られないが、外から持ち込んだものには時間加速が適応され、外の世界より時間が経過し、三十年のはずが千年という年月が経過したときと同様の状態になった可能性がある。

「使えない!」

 シェリーは強く否定した。粉々になった元は紙であったものを握りしめながら。

「ここの資料が欲しかったのに、これでは全く読むことが出来ないではないですか」
「ほぼ文化財を保管する域の朽ち具合だものな」

 炎王はシェリーの言葉に同意する。見た目は書類として存在していても、触ると朽ちてしまうのであれば、読めない資料と同じだと。特殊な保管方法が必要な朽ち具合だと。

「わかった。元に戻せばいいんだろう?言っておくが悪いのは設定を触ったヤツだからな!」

 シュロスは自分は悪くないアピールをしながらも、朽ちた残骸が固まっているところに向かっていく。

「そもそも何故そんな時間加速が必要だったんだ?」
「作ってみたかっただけじゃない?」
「あり得ますね」

 普通の状況であるなら、時間を操作する必要など無いはずだ。いや、過去に戻れたのなら、ということはあるかもしれないが、時間の感覚をずらす必要があったのかという話だ。
 この場にいる者たちの見解は、シュロスだからに結論づけられる。

「いや、修行するにはいるだろう!」

 よく分からないことを言いきったシュロスに、やはりそんなことかと、誰しも納得したのだった。

「ほら、戻ったぞ」

 シュロスはドヤ顔をして言ったが、シュロスの行動を見ていた誰しもが、シュロスの異常さを見せつけられたのだ。
 まるで逆再生したように物が元に戻っていく姿を見せられた。

「これはこれは、流石アーク族の王というわけじゃな」
「流石の陽子さんも逆再生はできないよ。時間という概念は何かに阻害されているからね」
「確かに、時を操作する魔術は使えなかったな」

 時間に干渉することは、ダンジョンマスターである陽子も、魔術創造を持っている炎王ですら無理なようだ。
 いや、一人だけ時を操作する存在はいる。だが、彼女もまた上手く使いこなせずに、生物破壊兵器を作り出してしまっていた。

「ん?時間っていうのはずっと動いているからなぁ。止めようと思っても止められない。だからこう絡め取るようにだな、くるくるとすると、遅くなるんだよ」

 なにかよく分からない説明をしだしたシュロスを放置して、シェリーは一人、落ちている紙や書物を集めだしている。いや、シュロスがドヤ顔をしていた時点で、無視をして集めていた。それをカイルが側で手伝っている。

 そして、資料を回収しているシェリーは、説明しているシュロスを無視して、炎王と陽子に疑問の答えを教えた。

「時の女神オーラ様の加護でもないと、時間の操作は難しいかもしれません」

 そう自称シェリーの友であるアフィーリアの様に加護が無いと、時を操るというのは難しいだろう。

「え?いや、それは要らないな」

 己の末の血族の有り様を知っている炎王は、時の女神の加護を否定したのだった。

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