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27章 魔人と神人
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「ここから先は陽子さんのダンジョンじゃないから、陽子さんはここで待っているよ」
陽子が先頭で進んでいると思ったら、そう言って突然足を止めて立ち止まった。
ただその先は進むことを拒むような壁であった。物理的に進むことができないとも言える。
しかし、そんな陽子の肩に手を置いてシェリーは言う。
「陽子さん。オリバーから、この先もダンジョンにするようにと言われていましたよね?」
「ささっち……ささっちにはわからないかもしれないけど、この先気持ち悪い感覚があるんだよ。陽子さんは絶対に進みたくないよ」
陽子はシーラン王国の中枢である城は一部ダンジョン化して侵食し、情報を得ていた。しかし地下の硬い岩盤から先にはダンジョンを延ばさず、穴が空いても閉じてしまったのは、陽子的にダンジョンをそこまで広げたくないという意思があったらしい。
「陽子さん。問題があれば、そこのシュロス王と炎王が解決してくれます。そのために連れて来たのですから」
「いや、そこの生物と言っていいかわからないヤツは役に立つかもしれないが、俺はここにいる必要はない」
炎王はここには一人いれば十分に賄える存在がいるのだから、自分はいる必要はないのではとシェリーに断言した。
その言葉にシェリーは、何も表情が浮かんでいない顔で後ろに振り向きながら言う。
「それを制御する人材は多い方がいいです」
シェリー自身が言葉を交わすのを止める程のシュロスの性格だ。それは炎王も巻き込んでおこうと言うもの。
「それに超越者が三人もいれば、大体のことは対処可能でしょう。私は陽子さんの守りに徹するので」
「ささっちー!」
シェリーは何があっても陽子の守りに徹すると宣言し、それに陽子が感激の声を上げた。
シェリーがそこまで陽子を思ってくれていると。
「陽子さんはルーちゃんが幸せに暮らしていくには必要な人ですから」
「ささっちの、そこのブレなさは陽子さんも関心するよ」
「ですから、さっさと北地区全域までダンジョンを広げてください」
「あ……その為ね。……うん。わかったよ」
シェリーの考えの中心は、弟のルークであることには変わらない。そう、先日の王都襲撃事件で、女神ナディアの神言が無ければ、シェリーは最愛のルークを失っていたかもしれなかった。
陽子に北側の学園までダンジョンを広げてもらうことは以前から言っていた。学生を鍛えるために、そこにダンジョンを新たに作ってはどうかと。
だが、王城の地下にある硬い岩盤の先もダンジョンとして侵略し、その先の北地区全域までさっさと広げてもらおうという算段だったのだ。
それは女神ナディアの催促も棒に振り、なにかと言い訳をして、王城の地下に陽子を連れて行こうとしたわけだ。
いや、シェリーの心の内の不安を払拭するために、オリバーが陽子に行くように示唆したと、言えばいいのだろうか。流石、異界の聖女の守護者の名を白き神から与えられた者というわけだ。
シェリーのルークに対する異常なまでの愛情を知っている陽子は諦めの境地で、壁に手を当てた。
すると、壁が空気に溶けるように消え去ったのだ。
壁が崩れたような入口の奥は、闇が顔を覗かせているかのように、漆黒に染まっている。
今、シェリーたちが立っているところは、ダンジョンの一部だと陽子が言っているように、空間自体かほのかに光っているため、その先の暗さが異様に引き立つのだ。
ここから先は陽子の支配下ではないと。
「シュロスだっけ?ここからは君が先を歩いてよね。ゆっくりとだよ。わかった?陽子さんはダンジョンの支配を広げて行くんだから、走らずにゆっくり歩くんだよ!」
陽子は、一番この場所をわかっているであろうシュロスに先に進むように言うも、何度も念を押すように、ゆっくりと進むように言う。
そう、ここにたどり着くまでのことが色々あったからだ。
洞窟のような通路には、オリバー作の魔導生物の出来損ない共がうろついている。それも陽子やシェリーの話を聞いて、どういうモノか作ってみたという怪しい生物が、うろついているのだ。
『鎧が集団で移動している!』
『なんか、あの先巨大なヘビが詰まってないか!』
『あれは雷を出すピカチ「走らない!!」じゃないか!』
と言いながら、走り出すことが何度もあったからだ。それは陽子は子どもに言い聞かせるように念押しをするわけだ。
「おう!任せろ!」
自信満々にいうシュロスに、誰しもが不安感を拭えない。
そしてシュロスは漆黒の闇の中に足を踏み入れる。
が、突如として、その姿が闇の中に消えた。
「馬鹿なの!見れば床が続いていないぐらいわかるよね!!」
陽子は暗闇の中、下を向いて叫んでいた。
そう、入口から先が漆黒ということは、ダンジョンの光が床にすら反射しない状況ということだったのだ。
陽子が先頭で進んでいると思ったら、そう言って突然足を止めて立ち止まった。
ただその先は進むことを拒むような壁であった。物理的に進むことができないとも言える。
しかし、そんな陽子の肩に手を置いてシェリーは言う。
「陽子さん。オリバーから、この先もダンジョンにするようにと言われていましたよね?」
「ささっち……ささっちにはわからないかもしれないけど、この先気持ち悪い感覚があるんだよ。陽子さんは絶対に進みたくないよ」
陽子はシーラン王国の中枢である城は一部ダンジョン化して侵食し、情報を得ていた。しかし地下の硬い岩盤から先にはダンジョンを延ばさず、穴が空いても閉じてしまったのは、陽子的にダンジョンをそこまで広げたくないという意思があったらしい。
「陽子さん。問題があれば、そこのシュロス王と炎王が解決してくれます。そのために連れて来たのですから」
「いや、そこの生物と言っていいかわからないヤツは役に立つかもしれないが、俺はここにいる必要はない」
炎王はここには一人いれば十分に賄える存在がいるのだから、自分はいる必要はないのではとシェリーに断言した。
その言葉にシェリーは、何も表情が浮かんでいない顔で後ろに振り向きながら言う。
「それを制御する人材は多い方がいいです」
シェリー自身が言葉を交わすのを止める程のシュロスの性格だ。それは炎王も巻き込んでおこうと言うもの。
「それに超越者が三人もいれば、大体のことは対処可能でしょう。私は陽子さんの守りに徹するので」
「ささっちー!」
シェリーは何があっても陽子の守りに徹すると宣言し、それに陽子が感激の声を上げた。
シェリーがそこまで陽子を思ってくれていると。
「陽子さんはルーちゃんが幸せに暮らしていくには必要な人ですから」
「ささっちの、そこのブレなさは陽子さんも関心するよ」
「ですから、さっさと北地区全域までダンジョンを広げてください」
「あ……その為ね。……うん。わかったよ」
シェリーの考えの中心は、弟のルークであることには変わらない。そう、先日の王都襲撃事件で、女神ナディアの神言が無ければ、シェリーは最愛のルークを失っていたかもしれなかった。
陽子に北側の学園までダンジョンを広げてもらうことは以前から言っていた。学生を鍛えるために、そこにダンジョンを新たに作ってはどうかと。
だが、王城の地下にある硬い岩盤の先もダンジョンとして侵略し、その先の北地区全域までさっさと広げてもらおうという算段だったのだ。
それは女神ナディアの催促も棒に振り、なにかと言い訳をして、王城の地下に陽子を連れて行こうとしたわけだ。
いや、シェリーの心の内の不安を払拭するために、オリバーが陽子に行くように示唆したと、言えばいいのだろうか。流石、異界の聖女の守護者の名を白き神から与えられた者というわけだ。
シェリーのルークに対する異常なまでの愛情を知っている陽子は諦めの境地で、壁に手を当てた。
すると、壁が空気に溶けるように消え去ったのだ。
壁が崩れたような入口の奥は、闇が顔を覗かせているかのように、漆黒に染まっている。
今、シェリーたちが立っているところは、ダンジョンの一部だと陽子が言っているように、空間自体かほのかに光っているため、その先の暗さが異様に引き立つのだ。
ここから先は陽子の支配下ではないと。
「シュロスだっけ?ここからは君が先を歩いてよね。ゆっくりとだよ。わかった?陽子さんはダンジョンの支配を広げて行くんだから、走らずにゆっくり歩くんだよ!」
陽子は、一番この場所をわかっているであろうシュロスに先に進むように言うも、何度も念を押すように、ゆっくりと進むように言う。
そう、ここにたどり着くまでのことが色々あったからだ。
洞窟のような通路には、オリバー作の魔導生物の出来損ない共がうろついている。それも陽子やシェリーの話を聞いて、どういうモノか作ってみたという怪しい生物が、うろついているのだ。
『鎧が集団で移動している!』
『なんか、あの先巨大なヘビが詰まってないか!』
『あれは雷を出すピカチ「走らない!!」じゃないか!』
と言いながら、走り出すことが何度もあったからだ。それは陽子は子どもに言い聞かせるように念押しをするわけだ。
「おう!任せろ!」
自信満々にいうシュロスに、誰しもが不安感を拭えない。
そしてシュロスは漆黒の闇の中に足を踏み入れる。
が、突如として、その姿が闇の中に消えた。
「馬鹿なの!見れば床が続いていないぐらいわかるよね!!」
陽子は暗闇の中、下を向いて叫んでいた。
そう、入口から先が漆黒ということは、ダンジョンの光が床にすら反射しない状況ということだったのだ。
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