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27章 魔人と神人
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「私は魔眼の耐性をもっているので、大丈夫です。カイルさん、ナディア様がお呼びです」
シェリーは個人的に何度も呼ばれているにも関わらず、それを魔眼の耐性を得るためだと捻じ曲げて、カイルに押し付けようとした。
そこに割り込んでくる声がある。
「神界だって!」
カレーのスプーンを持って食べようとしていた異形の怪人……いや、なんとも言えない姿になっているシュロスである。
「神界って神さんがいるところなのか?」
「あ。ナディア様が消えた」
シュロスが神界というところに興味を持ってしまったからか、神界から覗き見ていた女神ナディアは逃げるように去ってしまった。
女神ナディアの神気を感じなくなったシェリーは口角を上げる。そう、めずらしく口角を上げたのだ。
「これはシュロス王といれば、ラース様に会わなくていいということに」
「なんだね。そんなにあのラースに会いたくないのかね?ただの哀れな男であろう?」
オリバーの言葉にシェリーは凄く嫌そうな表情をした。これほどシェリーの表情を動かすほど、ラースという存在に会うことが嫌なのだろう。
そもそも女神ナディアの『ラースに会いに来い』と何度もいっている言葉を無視し続けている時点で、シェリーの行きたくないオーラを感じるというものだ。
「なぁ、神界ってどんなところなんだ?」
なんとも言えない雰囲気を出しているシェリーと呆れているオリバーの間に、堂々と割り込んでくるシュロス。シェリーが、白き神と似ていると言うぐらい場を読まない。
「コレと話をしているのと同じぐらい苛つくからね」
「ではここに居ても、会いに行っても変わらぬであろう?」
「こっちはまだ制御可能」
シェリーはそう言って、カバンから青い袋を取り出す。この世界には存在しないナイロン性の袋。その青い袋にはなんとも表現しがたい少年の絵が描かれている。
「ガリガリなアイス!」
「これを食後のデザートに如何ですか?それから、カレーを食べるなら、お行儀よく座って食べてください」
スプーンを握りしめたままのシュロスに、シェリーは氷菓子を差し出して言う。そのパッケージを見たシュロスは雷にでも打たれたかのように打ち震え、何かに耐えていた。
「これこのゲームで売っているところがあるんだ……」
「それ、炎王からいただいたものなので、お礼は炎王に言ってください」
するとシュロスはどう移動したのかわからないが、突然座っている炎王の隣に現れ、炎王の肩を揺さぶっている。
「エンオウ!ありがとう!」
「こぇー!凄くこぇーよ!」
上の立場として言葉遣いには気を使っているはずの炎王が、素のエンが出るほど、シュロスを怖がっている。
それは人っぽいのに、仮面を貼り付けた骸骨みたいな存在に、近づかれたら怖いだろう。
陽子はいつの間にかシェリーの後ろに立っていた。先程まで炎王の隣に居たはずなのに。
「シェリー。女神のところに行かなくてもいいのか?大公閣下の依頼は終えたのだから、行った方がいいと思う」
カイルも流石に神と言う存在に抗うことに意味がないのではと。するとシェリーは嫌な顔のままカイルを振り返って見る。
「ナディア様はいいのです。あのラース様に会いたくないのです。たぶん会えば即殴っていると思います」
シェリーがそこまで言う相手はあまり居ない。会った瞬間に殴りつける狐はいるが、会うのが嫌という存在は勇者ナオフミぐらいだろう。
それほどまで会いたくないというラースという神人はどのような者なのだろうか。オリバーは哀れな男と言うだけだ。
この二人の認識の違いはなんだろうか。
「オリバーは会ったことはあるのか?」
「もちろん、ダンジョンを攻略すれば必然的に会うことになる」
「必然的?」
「ダンジョンの最後の相手がラースだからだ」
なんとダンジョンのラスボスがラース自身だという。
しかし、これは理に適っているとも言える。
女神ナディアから神眼を与えられた存在が、新たな国主の為に試練を与えるのだ。
そして、国主として立てるかどうかを見極める。
ラース公国の大公になる存在の為のダンジョンというだけはある。
「お前は佐々木さんが作ったカレーを食べるんじゃなかったのか!さっさと座って食べろ!!」
そこに炎王の声が響き渡る。シュロスの喜びの叫びに耐えかねたのだろう。
「そのアイスが溶けても新しい奴はださないからな!さっさと食べろ!」
これは誰かと重ねているような言い方だ。恐らく炎王の側にいるアイス好きの少女のことだろう。
「それは大丈夫だ」
そう言ってシュロスはむき出した歯で笑んで見せる。そして、青いナイロン袋を覆うように魔力の糸を出して、球状に陣を描いたのだった。
シェリーは個人的に何度も呼ばれているにも関わらず、それを魔眼の耐性を得るためだと捻じ曲げて、カイルに押し付けようとした。
そこに割り込んでくる声がある。
「神界だって!」
カレーのスプーンを持って食べようとしていた異形の怪人……いや、なんとも言えない姿になっているシュロスである。
「神界って神さんがいるところなのか?」
「あ。ナディア様が消えた」
シュロスが神界というところに興味を持ってしまったからか、神界から覗き見ていた女神ナディアは逃げるように去ってしまった。
女神ナディアの神気を感じなくなったシェリーは口角を上げる。そう、めずらしく口角を上げたのだ。
「これはシュロス王といれば、ラース様に会わなくていいということに」
「なんだね。そんなにあのラースに会いたくないのかね?ただの哀れな男であろう?」
オリバーの言葉にシェリーは凄く嫌そうな表情をした。これほどシェリーの表情を動かすほど、ラースという存在に会うことが嫌なのだろう。
そもそも女神ナディアの『ラースに会いに来い』と何度もいっている言葉を無視し続けている時点で、シェリーの行きたくないオーラを感じるというものだ。
「なぁ、神界ってどんなところなんだ?」
なんとも言えない雰囲気を出しているシェリーと呆れているオリバーの間に、堂々と割り込んでくるシュロス。シェリーが、白き神と似ていると言うぐらい場を読まない。
「コレと話をしているのと同じぐらい苛つくからね」
「ではここに居ても、会いに行っても変わらぬであろう?」
「こっちはまだ制御可能」
シェリーはそう言って、カバンから青い袋を取り出す。この世界には存在しないナイロン性の袋。その青い袋にはなんとも表現しがたい少年の絵が描かれている。
「ガリガリなアイス!」
「これを食後のデザートに如何ですか?それから、カレーを食べるなら、お行儀よく座って食べてください」
スプーンを握りしめたままのシュロスに、シェリーは氷菓子を差し出して言う。そのパッケージを見たシュロスは雷にでも打たれたかのように打ち震え、何かに耐えていた。
「これこのゲームで売っているところがあるんだ……」
「それ、炎王からいただいたものなので、お礼は炎王に言ってください」
するとシュロスはどう移動したのかわからないが、突然座っている炎王の隣に現れ、炎王の肩を揺さぶっている。
「エンオウ!ありがとう!」
「こぇー!凄くこぇーよ!」
上の立場として言葉遣いには気を使っているはずの炎王が、素のエンが出るほど、シュロスを怖がっている。
それは人っぽいのに、仮面を貼り付けた骸骨みたいな存在に、近づかれたら怖いだろう。
陽子はいつの間にかシェリーの後ろに立っていた。先程まで炎王の隣に居たはずなのに。
「シェリー。女神のところに行かなくてもいいのか?大公閣下の依頼は終えたのだから、行った方がいいと思う」
カイルも流石に神と言う存在に抗うことに意味がないのではと。するとシェリーは嫌な顔のままカイルを振り返って見る。
「ナディア様はいいのです。あのラース様に会いたくないのです。たぶん会えば即殴っていると思います」
シェリーがそこまで言う相手はあまり居ない。会った瞬間に殴りつける狐はいるが、会うのが嫌という存在は勇者ナオフミぐらいだろう。
それほどまで会いたくないというラースという神人はどのような者なのだろうか。オリバーは哀れな男と言うだけだ。
この二人の認識の違いはなんだろうか。
「オリバーは会ったことはあるのか?」
「もちろん、ダンジョンを攻略すれば必然的に会うことになる」
「必然的?」
「ダンジョンの最後の相手がラースだからだ」
なんとダンジョンのラスボスがラース自身だという。
しかし、これは理に適っているとも言える。
女神ナディアから神眼を与えられた存在が、新たな国主の為に試練を与えるのだ。
そして、国主として立てるかどうかを見極める。
ラース公国の大公になる存在の為のダンジョンというだけはある。
「お前は佐々木さんが作ったカレーを食べるんじゃなかったのか!さっさと座って食べろ!!」
そこに炎王の声が響き渡る。シュロスの喜びの叫びに耐えかねたのだろう。
「そのアイスが溶けても新しい奴はださないからな!さっさと食べろ!」
これは誰かと重ねているような言い方だ。恐らく炎王の側にいるアイス好きの少女のことだろう。
「それは大丈夫だ」
そう言ってシュロスはむき出した歯で笑んで見せる。そして、青いナイロン袋を覆うように魔力の糸を出して、球状に陣を描いたのだった。
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