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27章 魔人と神人
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「あ、佐々木さんの彼氏ってことか。うんうん。NPC《ノンプレイヤーキャラクター》でも生きてる設定だものな」
これだけのことが起きたというのに、シュロスの中では未だにゲームの世界設定だった。
いや、そう思っていなければ、空島などとっくに地上に落ちていただろう。
シェリーが白き神を喚び出して、シュロスに現実を突きつけたことは、無駄だったようだ。
「佐々木さんには色々と教えてもらったから、俺は佐々木さんとマブダチだよな」
「違います。できれは一生関わりたくないです」
怪しい白い甲冑から『ハハハッ』という笑い声と共に言った言葉を、シェリーはぶった切る。
自己紹介するはずだったが、結局は有耶無耶になってしまったところで、モルテ王が上を向きながら呟いた。
「そろそろ終わりそうだ」
終わる。それは神からの天罰だというように攻撃され続けてきた、力の塊が空から降ってきていることだ。
「終わるのはいいのですが、この一帯に足場となる地面がないのですが、足場だけ残せばいいですか?」
シェリーはこの後、完全体の悪魔どもから攻撃されることを想定しているような口ぶりで聞いてきた。
それも、攻撃された範囲に地面など存在しないと。
今は、結界を足場にして立っているにすぎないと。
「ああ、構わない。先程の感じからすれば、大したことはなさそうだしな。見掛け倒しだな」
見掛け倒し。姿は変わっても、元々のアーク族と大差ないといいたいのだろう。先程の者たちも、モルテ王に簡単にやられてしまったぐらいだ。
そして、光は収まり、元々のモルテ国の太陽の光を遮る黒雲が広がる空に戻った。だが、足元をみるとシェリーが作り出した結界の内側にあった青い建物だったであろう床と壁以外何も無くなっている。
ただただ深い闇が周りには広がっている。その底は視界では確認できないほど深かった。
それが、小高い丘だった部分の地面がなくなっている。これは確かに神罰と言っていい威力だろう。
「これで何をする気だったか聞いてもいいですか?」
シェリーはあまりにもの威力の大きさに、シュロスに使用目的を聞いた。何の為にこのような、すべてを破壊する術を創ったのかと。
「え?こんなに威力はないはずだけどなぁ。地面を焦がす程度だ」
「それで何をする気だったのですか?」
シュロスはこんな威力はないと否定したが、シェリーとしては使い道が気になったようだ。
「それは空を飛ぶ島といえばラピュ……『ガンッ』……」
「何も考えてなかったとわかりましたので、それ以上はいいです」
「最後まで言わせて欲しい」
カイルに抱えられたシェリーは距離が開いていたため、カバンから不要になった剣を投げつけて黙らせたのだ。
「ほら来たぞ。遊んでいないで、そこの鎧、戦ってみろ」
モルテ王にとって、シェリーとシュロスのやり取りは遊んでいるようにしか見えず、苛立ちが窺えた。いや、その投げられた剣で戦えと言ったのだ。
超越者まで至ったのだ。戦えないことはないはず。
「お!これ刀じゃないか!佐々木さん!もしかして、俺専用のレアアイテムってことか!」
シュロスが手にしているのは、シェリーが贔屓にしている炎国の鍛冶師ファブロの刀だ。
「ただの量産品です。私には合わないので差し上げます」
これはシェリーが本気で奮うと壊してしまう不用品だった。
「おお!レアアイテムってことだな!」
シェリーはそのようなことを一言も言っていないのに、レアアイテムと称した刀を鞘から抜いて、シュロスは上から下に振り切った。
すると空から落ちてきていた巨体を一刀両断する。
巨体……空から落ちてきたのは、完全体の悪魔ではなく、次元の悪魔だった。
「んあ?頭がない奴が落ちてきたと思ったが気の所為だよな。しかし、このレアアイテムの刀すげーなぁ!衝撃波って言うやつ?すぐに出たじゃないか!」
シュロスは頭がない存在を、気の所為として処理したようだ。普通の生き物は頭という脳をもつ機構が存在する。それも人の形であるなら、あって当然のこと。それが足元の深い闇の中に落ちていき、姿を再度確認することはできなかったのだ。
だから頭部が無いということは脳内で、存在したことに置き換えてしまったようだ。
「次々と来るぞ」
空を見上がるモルテ王の言葉に、シェリーとカイルも黒い空を見上げた。
そこにはつい先日見た光景が広がっている。
「三十?五十ぐらいありそう」
シェリーが言うように黒い空には多数の漆黒のヒビが浮かんでいる。これはシーラン王国の空に浮かんでいたひび割れよりも断然的に多かった。
「首なし……これは……漆黒に変色した皮膚に浮き出た血管……レベリオンの血を飲んだのか!愚かしいこと甚だしい」
モルテ王が聞いたことがない言葉をはき捨てるように言った。
レベリオンの血。それが悪魔と呼ばれるモノになるために、必要な物なのだろうか。
これだけのことが起きたというのに、シュロスの中では未だにゲームの世界設定だった。
いや、そう思っていなければ、空島などとっくに地上に落ちていただろう。
シェリーが白き神を喚び出して、シュロスに現実を突きつけたことは、無駄だったようだ。
「佐々木さんには色々と教えてもらったから、俺は佐々木さんとマブダチだよな」
「違います。できれは一生関わりたくないです」
怪しい白い甲冑から『ハハハッ』という笑い声と共に言った言葉を、シェリーはぶった切る。
自己紹介するはずだったが、結局は有耶無耶になってしまったところで、モルテ王が上を向きながら呟いた。
「そろそろ終わりそうだ」
終わる。それは神からの天罰だというように攻撃され続けてきた、力の塊が空から降ってきていることだ。
「終わるのはいいのですが、この一帯に足場となる地面がないのですが、足場だけ残せばいいですか?」
シェリーはこの後、完全体の悪魔どもから攻撃されることを想定しているような口ぶりで聞いてきた。
それも、攻撃された範囲に地面など存在しないと。
今は、結界を足場にして立っているにすぎないと。
「ああ、構わない。先程の感じからすれば、大したことはなさそうだしな。見掛け倒しだな」
見掛け倒し。姿は変わっても、元々のアーク族と大差ないといいたいのだろう。先程の者たちも、モルテ王に簡単にやられてしまったぐらいだ。
そして、光は収まり、元々のモルテ国の太陽の光を遮る黒雲が広がる空に戻った。だが、足元をみるとシェリーが作り出した結界の内側にあった青い建物だったであろう床と壁以外何も無くなっている。
ただただ深い闇が周りには広がっている。その底は視界では確認できないほど深かった。
それが、小高い丘だった部分の地面がなくなっている。これは確かに神罰と言っていい威力だろう。
「これで何をする気だったか聞いてもいいですか?」
シェリーはあまりにもの威力の大きさに、シュロスに使用目的を聞いた。何の為にこのような、すべてを破壊する術を創ったのかと。
「え?こんなに威力はないはずだけどなぁ。地面を焦がす程度だ」
「それで何をする気だったのですか?」
シュロスはこんな威力はないと否定したが、シェリーとしては使い道が気になったようだ。
「それは空を飛ぶ島といえばラピュ……『ガンッ』……」
「何も考えてなかったとわかりましたので、それ以上はいいです」
「最後まで言わせて欲しい」
カイルに抱えられたシェリーは距離が開いていたため、カバンから不要になった剣を投げつけて黙らせたのだ。
「ほら来たぞ。遊んでいないで、そこの鎧、戦ってみろ」
モルテ王にとって、シェリーとシュロスのやり取りは遊んでいるようにしか見えず、苛立ちが窺えた。いや、その投げられた剣で戦えと言ったのだ。
超越者まで至ったのだ。戦えないことはないはず。
「お!これ刀じゃないか!佐々木さん!もしかして、俺専用のレアアイテムってことか!」
シュロスが手にしているのは、シェリーが贔屓にしている炎国の鍛冶師ファブロの刀だ。
「ただの量産品です。私には合わないので差し上げます」
これはシェリーが本気で奮うと壊してしまう不用品だった。
「おお!レアアイテムってことだな!」
シェリーはそのようなことを一言も言っていないのに、レアアイテムと称した刀を鞘から抜いて、シュロスは上から下に振り切った。
すると空から落ちてきていた巨体を一刀両断する。
巨体……空から落ちてきたのは、完全体の悪魔ではなく、次元の悪魔だった。
「んあ?頭がない奴が落ちてきたと思ったが気の所為だよな。しかし、このレアアイテムの刀すげーなぁ!衝撃波って言うやつ?すぐに出たじゃないか!」
シュロスは頭がない存在を、気の所為として処理したようだ。普通の生き物は頭という脳をもつ機構が存在する。それも人の形であるなら、あって当然のこと。それが足元の深い闇の中に落ちていき、姿を再度確認することはできなかったのだ。
だから頭部が無いということは脳内で、存在したことに置き換えてしまったようだ。
「次々と来るぞ」
空を見上がるモルテ王の言葉に、シェリーとカイルも黒い空を見上げた。
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シェリーが言うように黒い空には多数の漆黒のヒビが浮かんでいる。これはシーラン王国の空に浮かんでいたひび割れよりも断然的に多かった。
「首なし……これは……漆黒に変色した皮膚に浮き出た血管……レベリオンの血を飲んだのか!愚かしいこと甚だしい」
モルテ王が聞いたことがない言葉をはき捨てるように言った。
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