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27章 魔人と神人

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 シェリーはシュロスの言葉に何も言わない。言っても仕方がないことだ。
 よくも悪くも彼は王として人々をここまで導いてきてしまったのだ。

「ああ、神さんが声を掛けてきたかどうかってやつだよな。佐々木さん、聞いてくれ!なんと『それでよい』と言ってくれたんだ」
「それ偽物です」

 シェリーはすぐさまシュロスの言葉をぶった切る。それは白き神の言葉ではないと。

「なにー!」
「私は言いましたよね。神は複数いると、その神に名を問えばいいのです。名を答えた神は白き神によって創られた神です」
「それを先に言えよ!見分け方があるじゃないか!」

 頭ごなしに怒鳴るシュロスに、シェリーは言い方を変えて答えた。

「攻略本を見ながらゲームするのと、自分で手探りで攻略するのと、どちらがお好きですか?」

 するとシュロスの態度が一変した。

「確かに自分で攻略していった方が、やりがいがあるな。それで、こうやって行き詰まったら聖女の佐々木さんが来て、ヒントをくれるっていうシステムか」

 ゲーム脳のシュロスにはゲーム要素で答えると、納得するのも早いらしい。

「もうさぁ、4ヶ月経つんだよ。そろそろエンディングを迎えないとヤバイんだよ。これで終わりなんだよな」

 4ヶ月。それはの世界の時間の流れというものだが、それはシェリーが適当に答えたものなので、正確かどうかは知っているのは、正に神のみぞ知るというものだ。
 シュロスの年齢は逆算すると120歳。その年月を費やして、竜人族との空の覇権を争う戦いを始め、敵にここまで侵略されてしまっていると言っていい。
 なのにシュロスはエンディングと言葉にしたのだ。

「敵にここまで侵略されていますが?」
「これは、ここまでおびき寄せたんだ。敵を引き寄せて一気に叩く。これも戦法の一つだ」

 どうやらワザと竜人をここまでおびき寄せて、街を火の海にして、民を犠牲にして、ここで逆転する切り札があると言っているのだ。

「その切り札が、この城だ!変形型のロボットだ!そこから打ち出す魔道砲!カッコイイ―」

 シェリーは先程出てきた城を見上げる。ロボットには見えないが、がらんどうの城だと思った理由は、これが兵器だったからだ。だからここに民を避難させるわけにはいかない。 

 ロボットがかっこいいと言っている馬鹿なシュロスを見て、シェリーは気になったことを聞く。

「これって飛べるのですか?」
「ん?これが飛ぶと島が落ちるな」

 この言い方は島を浮遊させている機構を、がらんどうのガラスの城が担っていると言っている。

「この島。以前より小さくなりましたよね」
「佐々木さんが言うから、分けたからな。ここは一都市程の大きさしか残していない」

 シェリーから見た島の大きさはガラスの城を中心に直径5キロメートルほど。中核都市ほどの大きさしかなかった。

「そのロボットというものを飛ばさずに、コレほどの大きさのモノの魔道砲を撃てば、島ごと何処かに飛んで行きませんか?」

 シェリーが懸念していることは支えがない空中で、切り札というべき攻撃を撃った場合、その反動で島ごと何処かに流されないのかということだ。
 これが以前の一国というほどの大きさの空島なら、別に構わなかった。しかしあの時と変わらない城がそのままあり、島が小さくなっているのだ。
 ゲーム脳を持つシュロスは恐らく最大限の攻撃力を詰め込むとシェリーは考えたのだ。

 シェリーの言葉にシュロスは固まってしまう。確かにこの城を設置したのは、初期の頃だったと。

「うわぁぁぁー!言われてみればそうだ!もしかしてエンディングを迎えられない?」
「知りませんよ」

 存在しないエンディングにこだわっているシュロスに、シェリーは冷たい声で返す。

「佐々木さん!攻略法!へるぷみー!」
「はぁ。戦争を終わらすには、いくつか方法がありますよね」
「完膚なきまで叩き潰す」

 ゲーム脳のシュロスには戦うしか選択肢が無いようだ。
 このバカさ加減に付き合うのも、シェリーは疲れてきたと、歩きだす。それは高台から街に降りる階段だ。

「佐々木さん。ヒント!ヒント!」

 そう言いながらシュロスは背後にある白い翼をはためかせて、シェリーについてくる。

「シュロス王。あの魔道兵が10体で、なんとか竜人一人を戦闘不能にしていますが、竜人が手加減していると思っていないですよね」
「は?テカゲン?」

 シェリーの言葉にシュロスの思考は停止してしまっているらしい。

「まだここには王族が出てきていません。居れば、魔道兵10体ぐらい一捻りでしょう」
「ヒトヒネリ……」
「それに飛ぶスピードもまだ、止まって見えるぐらいですね。彼らが本気で飛べば残像しか見えないほどです」
「ザンゾウ……そんなの無理ゲーじゃないか!」
「無理ゲーですか。私はそもそも竜人になぜ、喧嘩を売ったのか知りたいですね」

 そもそもだ。シュロスが歴史に刻む程の戦いを竜人としたのかということだ。

「それは佐々木さんが」
「私の所為にしないでください。私は一言も戦争をしろとは言ってはいません。国をまとめるには、歴史的にこのようなものがありますよと言ったまでです。戦いをしようと思ったのはシュロス王自身のはずです」

 シェリーは戦争をするようには、助言してはいない。ただ民をこの国に連れてきて、まとめる手段の一つに軍事国家というものがあると答えただけで、国ができれば戦いだと言葉にしたのはシュロス自身だ。
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