676 / 775
27章 魔人と神人
663
しおりを挟む
「あら?何処かに行っていると思ったら、案外早く戻ってきたのね」
エリザベートは意外だと言う感じで立ち上がり、ホラーのようにドアノブだけが、ガチャガチャと鳴り響いている扉に向かっていく。
案外早くということは、ラフテリアとロビンが出かけると中々戻ってこないということだろうか。
いや、そうなのだろう。今まではラフテリアがロビンの頭部を持っていたのだ。ラフテリアの性格から、気になったところに直行していき、戻ってこないことがあったと推測できる。
だが、今はロビンがラフテリアを引っ張って行くことで、行動の制御ができているということなのだろう。
エリザベートは扉の前に立って言葉を放つ。
「壊れそうだわ。手を離してもらえるかしら?」
するとホラーのように絶え間なく動いていたドアノブがピタリと止まる。そして、止まったドアノブをエリザベートは掴んで中から扉を開いたのだ。
黒髪の少女がエリザベートに突進するように外から入ってくる。
「エリー!エリー!エリー!」
ラフテリアはエリザベートに抱きつき叫んでいる。これは突然世界の記憶に還ってしまったエリザベートに対して、思うことがあったのだろう。
「神様にね。会ったの!凄いの!私を愛してくださったの!」
いや、違った。白き神がこの地に降臨したことに対して興奮しているのが、まだ収まらないらしい。
それから白き神はラフテリアを愛しているとは言ってはいない。言葉にしたことは『存在を否定しない』だ。
こうして神の言葉は歪められていくのだろう。
「そんな事を白き神が言ったのかしら?」
エリザベートは神々に対していい印象は持ってはおらず、ラフテリアの言葉に疑問を投げかける。それは本当に白き神の言葉なのかと。
「正確には魔人という存在を認めるということだね」
ラフテリアの後ろから苦笑いを浮かべたロビンが現れる。きっと道中も白き神に祈りを捧げ続け、時間が経つとそれが興奮に変わっていったのだろう。
また、直接白き神から神言を賜ったと。
「ああ、そういうことね。神が個人にどうこう言うなんて、よっぽどの事ですもの」
神が個人的に言葉を言う。エリザベートの言葉にシェリーの椅子と化しているカイルが首を傾げた。聖女となれば個人的に神々と関わるものではないのかと。
「シェリー。聖女となれば神々から祝福をもらったと言っていたけれど、それは個人に言うことには当てはまらないのかな?」
「あれは神々が好き勝手に愚痴を言ってきただけです」
シェリーは神々を貶す言葉を平気で口に出す。敬う気持ちなど微塵もないという風にだ。
「モルテ神が黒の聖女に頼み事をするぐらいだ。黒の聖女は今までの囚われるだけの聖女共とは違うのだろう」
モルテ王は、死の神モルテが国の民たちの現状を愁いて、シェリーに頼み事をすることは普通ではないと言う。神が何か頼み事を言葉にする。それはあり得ないことだと。
皮肉めいた笑みを浮かべ、ツガイに囚われ続けられた聖女たちを揶揄った。
いや、初代聖女を囚えていた己の愚かさを嘲笑ったのだろうか。
「しかし、アレはどうなっている?何故、身体があるのだ?」
そして、モルテ王はロビンに視線を向けて、シェリーに尋ねる。ラフテリアに愛しい者を見る視線を向けて、二本足で立っているロビンを見ているのだ。
あの者の肉体は己が奪ったものだと。
モルテ王は確信しているようにシェリーに尋ねたのだ。お前が関わっているのだろうと。
その答えをシェリーは勿論知っている。だが、これをモルテ王に言って良いのか躊躇した。
モルテ王とマリートゥヴァとの間に繋がりが無いことは、シェリーの目で見れば確認できた。しかし何がモルテ王の逆鱗に触れるかわからない。
いや、この4人の関係性がいまいち理解できないでいた。
王太子であったモルテ王を殺したラフテリア。
王太子と聖女の婚姻のため殺された番のロビン。
ラフテリアに殺されたエリザベート。
番であるロビンの死に絶望し、世界の全てを呪い、悪心を取り込んで魔人化したラフテリア。
そのラフテリアに首だけで世界に繋ぎ止められたロビン。
赤き女神の神言により、ラフテリアの手によって生き返ったエリザベート。
魔女の実験の様に、別の人物の身体を得て、モルテ神とオスクリダー神の手によって生まれ変わったルナティーノ・トールモルテと名を与えられたモルテ王。
殺した者。殺された者。
生を与えた者。生を与えられた者。
全てが入り混じり、混沌とした関係なのだ。
よくわからない身のシェリーが口を挟むと、よくない方向に転がる可能性もある。
モルテ王が住む城にエリザベートの資料があるのだ。下手なことは口には出せない。
「ロビン様」
シェリーは全てをロビンに投げつけた。本人同士で話して欲しいと。
エリザベートは意外だと言う感じで立ち上がり、ホラーのようにドアノブだけが、ガチャガチャと鳴り響いている扉に向かっていく。
案外早くということは、ラフテリアとロビンが出かけると中々戻ってこないということだろうか。
いや、そうなのだろう。今まではラフテリアがロビンの頭部を持っていたのだ。ラフテリアの性格から、気になったところに直行していき、戻ってこないことがあったと推測できる。
だが、今はロビンがラフテリアを引っ張って行くことで、行動の制御ができているということなのだろう。
エリザベートは扉の前に立って言葉を放つ。
「壊れそうだわ。手を離してもらえるかしら?」
するとホラーのように絶え間なく動いていたドアノブがピタリと止まる。そして、止まったドアノブをエリザベートは掴んで中から扉を開いたのだ。
黒髪の少女がエリザベートに突進するように外から入ってくる。
「エリー!エリー!エリー!」
ラフテリアはエリザベートに抱きつき叫んでいる。これは突然世界の記憶に還ってしまったエリザベートに対して、思うことがあったのだろう。
「神様にね。会ったの!凄いの!私を愛してくださったの!」
いや、違った。白き神がこの地に降臨したことに対して興奮しているのが、まだ収まらないらしい。
それから白き神はラフテリアを愛しているとは言ってはいない。言葉にしたことは『存在を否定しない』だ。
こうして神の言葉は歪められていくのだろう。
「そんな事を白き神が言ったのかしら?」
エリザベートは神々に対していい印象は持ってはおらず、ラフテリアの言葉に疑問を投げかける。それは本当に白き神の言葉なのかと。
「正確には魔人という存在を認めるということだね」
ラフテリアの後ろから苦笑いを浮かべたロビンが現れる。きっと道中も白き神に祈りを捧げ続け、時間が経つとそれが興奮に変わっていったのだろう。
また、直接白き神から神言を賜ったと。
「ああ、そういうことね。神が個人にどうこう言うなんて、よっぽどの事ですもの」
神が個人的に言葉を言う。エリザベートの言葉にシェリーの椅子と化しているカイルが首を傾げた。聖女となれば個人的に神々と関わるものではないのかと。
「シェリー。聖女となれば神々から祝福をもらったと言っていたけれど、それは個人に言うことには当てはまらないのかな?」
「あれは神々が好き勝手に愚痴を言ってきただけです」
シェリーは神々を貶す言葉を平気で口に出す。敬う気持ちなど微塵もないという風にだ。
「モルテ神が黒の聖女に頼み事をするぐらいだ。黒の聖女は今までの囚われるだけの聖女共とは違うのだろう」
モルテ王は、死の神モルテが国の民たちの現状を愁いて、シェリーに頼み事をすることは普通ではないと言う。神が何か頼み事を言葉にする。それはあり得ないことだと。
皮肉めいた笑みを浮かべ、ツガイに囚われ続けられた聖女たちを揶揄った。
いや、初代聖女を囚えていた己の愚かさを嘲笑ったのだろうか。
「しかし、アレはどうなっている?何故、身体があるのだ?」
そして、モルテ王はロビンに視線を向けて、シェリーに尋ねる。ラフテリアに愛しい者を見る視線を向けて、二本足で立っているロビンを見ているのだ。
あの者の肉体は己が奪ったものだと。
モルテ王は確信しているようにシェリーに尋ねたのだ。お前が関わっているのだろうと。
その答えをシェリーは勿論知っている。だが、これをモルテ王に言って良いのか躊躇した。
モルテ王とマリートゥヴァとの間に繋がりが無いことは、シェリーの目で見れば確認できた。しかし何がモルテ王の逆鱗に触れるかわからない。
いや、この4人の関係性がいまいち理解できないでいた。
王太子であったモルテ王を殺したラフテリア。
王太子と聖女の婚姻のため殺された番のロビン。
ラフテリアに殺されたエリザベート。
番であるロビンの死に絶望し、世界の全てを呪い、悪心を取り込んで魔人化したラフテリア。
そのラフテリアに首だけで世界に繋ぎ止められたロビン。
赤き女神の神言により、ラフテリアの手によって生き返ったエリザベート。
魔女の実験の様に、別の人物の身体を得て、モルテ神とオスクリダー神の手によって生まれ変わったルナティーノ・トールモルテと名を与えられたモルテ王。
殺した者。殺された者。
生を与えた者。生を与えられた者。
全てが入り混じり、混沌とした関係なのだ。
よくわからない身のシェリーが口を挟むと、よくない方向に転がる可能性もある。
モルテ王が住む城にエリザベートの資料があるのだ。下手なことは口には出せない。
「ロビン様」
シェリーは全てをロビンに投げつけた。本人同士で話して欲しいと。
10
お気に入りに追加
1,016
あなたにおすすめの小説
婚約者が最凶すぎて困っています
白雲八鈴
恋愛
今日は婚約者のところに連行されていました。そう、二か月は不在だと言っていましたのに、一ヶ月しか無かった私の平穏。
そして現在進行系で私は誘拐されています。嫌な予感しかしませんわ。
最凶すぎる第一皇子の婚約者と、その婚約者に振り回される子爵令嬢の私の話。
*幼少期の主人公の言葉はキツイところがあります。
*不快におもわれましたら、そのまま閉じてください。
*作者の目は節穴ですので、誤字脱字があります。
*カクヨム。小説家になろうにも投稿。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
【完結】少年の懺悔、少女の願い
干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。
そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい――
なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。
後悔しても、もう遅いのだ。
※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。
※長編のスピンオフですが、単体で読めます。
聖女だけど、偽物にされたので隣国を栄えさせて見返します
陽炎氷柱
恋愛
同級生に生活をめちゃくちゃにされた聖川心白(ひじりかわこはく)は、よりによってその張本人と一緒に異世界召喚されてしまう。
「聖女はどちらだ」と尋ねてきた偉そうな人に、我先にと名乗り出した同級生は心白に偽物の烙印を押した。そればかりか同級生は異世界に身一つで心白を追放し、暗殺まで仕掛けてくる。
命からがら逃げた心白は宮廷魔導士と名乗る男に助けられるが、彼は心白こそが本物の聖女だと言う。へえ、じゃあ私は同級生のためにあんな目に遭わされたの?
そうして復讐を誓った心白は少しずつ力をつけていき…………なぜか隣国の王宮に居た。どうして。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラや攻略不可キャラからも、モテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる