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27章 魔人と神人
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「六番目ー!」
声を張り上げながら、積もった雪を舞い上げて、シェリーたちに近づいてくるモノがいる。
それは勿論、魔人ラフテリアだ。
シェリーを抱えたカイルは、以前ミゲルロディアが統治を任されていた、町に向かっていた。
そして、シェリーの常時展開されているマップ機能に記されているラフテリアとロビンのマークは、そのカイルの位置を把握しているかのように、方向を修正していっており、こうして魔人ラフテリアはシェリーと合流することになったのだ。
「久しぶりだねぇ。元気にしていた?」
黒髪の少女は真冬の吹雪いている外にいるにも関わらず、薄手の黒いワンピースを着ていた。いや、もしかするとラフテリアが居た南側はこのような服装でも問題ない気候なのかもしれない。
しかし、彼女のタールを流したような目が人外であることを示しているように、寒暖差というものを感じないのかもしれない。
そんな人外のラフテリアが白い雪を舞い上げなから、目の前にやってきたことに対し、シェリーはカイルから飛び降り、頭を下げて挨拶をする。
「ひと月ぶりです。ラフテリア様。ロビン様」
シェリーに名を呼ばれたロビンはラフテリアの背後を守るように付いてきていたが、一歩前に出てラフテリアの横に立った。
その姿は魔人の肉体を元にして構成された為に黒髪になってしまったものの、瞳は以前と同じく青い瞳を宿しているため、普通の人族にしかみえない。
「まだ満月の日ではありませんが、お元気そうでなによりです。本日はどうされたのですか?」
用があるのならば、己が先に聞こうというロビンだが、その身にまとう魔力は一般に人が有する魔力量を遥かに超え、周りに圧迫感を感じさせるほどだ。
人であるが、人ではない。ならば、彼は何者と言うべきなのだろうか。
そんなロビンに尋ねられたシェリーは頭を上げて、単刀直入に言った。
「ミゲルロディア大公閣下に手を貸してもいい、という魔人の方を紹介してください」
「ん?それはどういう意味なのかな」
単刀直入過ぎたようだ。シェリーの言葉だけでは、国を支える者が欲しいと捉えられてもおかしくはない。
「ねぇねぇ。六番目。家にロビンが作ってくれたおかしがあるんだよ。一緒に食べよう?」
魔人ラフテリアは真面目な話をしている雰囲気をぶち壊すように、シェリーとロビンの間に割り込む。いや、マイペースと言って良い。
「ああ、そうだね。さっき氷菓子を作っていたんだよ。きっと今頃冷えているよ。一緒に食べる?」
この吹雪いている雪の中で言う会話ではない。寒さが一段と増すようだ。
「はい、いただきます」
ここが極寒の地だろうと、二人を通さなければ、話が進まないため、シェリーはラフテリアとロビンの言葉に頷いたのだった。
「あっ!ロビン!もしかして家にお客さんが来るの初めてかも!」
「そうだね。初めてだね」
ラフテリアは家に人が来るということが嬉しいのか、雪が降り積もる雪原の上を楽しそうに踊りだした。
そんなラフテリアを眩しいものを見るようにロビンは目を細め見ている。
「リア。転移で帰るからこっちにおいで」
その言葉と同時にロビンの足元から陣が広がっていく。その陣はシェリーが嫌がらせのように出す狭い陣ではなく、2メル四方に渡って広がった。
その光景を見たラフテリアは慌ててロビンに飛びつくように抱きつている。
転移が発動される瞬間、シェリーにとっては珍しく笑みを浮べていた。微笑ましい彼らの姿が、嬉しいと言わんばかりに。
いや、番というものに囚われない彼らが羨ましいと。
空気が変わったと感じた瞬間、頭上から強い光を感じて、シェリーは空を見上げた。青く高い空が頭上には広がっている。そして、降り注ぐ光は熱をおび、大気を熱している。
「夏?」
思わずシェリーは呟く。真冬の極寒の地から常夏の地に転移してきたのだ。
「そう、夏だよ!だから上脱いじゃって!」
ラフテリアは空に向かって両手を上げて、ケラケラと笑っている。こうしてみると、外見より幼く感じるものの普通の人のように見える。
確かに分厚い毛皮の外套をまとう気候ではないので、シェリーもカイルも外套を外す。
「空島の残骸があるから南側だね」
カイルもシェリーと同じく空を見上げていたが、シェリーとは違うものを見ていたようだ。
「空島の残骸?」
シェリーはカイルが何を言っているのかと思い、青い空に目を凝らすも、青い空しか見えない。
「あそこは岩と木しかない小さな島で、あっちが門のような残骸しかない島。どちらも人が数人、入れればいい大きさしかないね」
カイルがシェリーの視線に合わせて指し示したところには、広大な空にゴミがあるとしか思われない小さな異物が見えるのみ。
シェリーの中の空島の大きさとは比べ物にならないほど、小さなものだった。
だが、それがあることで、この地はシェリーが今まで居た空の下ではないという証拠でもあったのだった。
声を張り上げながら、積もった雪を舞い上げて、シェリーたちに近づいてくるモノがいる。
それは勿論、魔人ラフテリアだ。
シェリーを抱えたカイルは、以前ミゲルロディアが統治を任されていた、町に向かっていた。
そして、シェリーの常時展開されているマップ機能に記されているラフテリアとロビンのマークは、そのカイルの位置を把握しているかのように、方向を修正していっており、こうして魔人ラフテリアはシェリーと合流することになったのだ。
「久しぶりだねぇ。元気にしていた?」
黒髪の少女は真冬の吹雪いている外にいるにも関わらず、薄手の黒いワンピースを着ていた。いや、もしかするとラフテリアが居た南側はこのような服装でも問題ない気候なのかもしれない。
しかし、彼女のタールを流したような目が人外であることを示しているように、寒暖差というものを感じないのかもしれない。
そんな人外のラフテリアが白い雪を舞い上げなから、目の前にやってきたことに対し、シェリーはカイルから飛び降り、頭を下げて挨拶をする。
「ひと月ぶりです。ラフテリア様。ロビン様」
シェリーに名を呼ばれたロビンはラフテリアの背後を守るように付いてきていたが、一歩前に出てラフテリアの横に立った。
その姿は魔人の肉体を元にして構成された為に黒髪になってしまったものの、瞳は以前と同じく青い瞳を宿しているため、普通の人族にしかみえない。
「まだ満月の日ではありませんが、お元気そうでなによりです。本日はどうされたのですか?」
用があるのならば、己が先に聞こうというロビンだが、その身にまとう魔力は一般に人が有する魔力量を遥かに超え、周りに圧迫感を感じさせるほどだ。
人であるが、人ではない。ならば、彼は何者と言うべきなのだろうか。
そんなロビンに尋ねられたシェリーは頭を上げて、単刀直入に言った。
「ミゲルロディア大公閣下に手を貸してもいい、という魔人の方を紹介してください」
「ん?それはどういう意味なのかな」
単刀直入過ぎたようだ。シェリーの言葉だけでは、国を支える者が欲しいと捉えられてもおかしくはない。
「ねぇねぇ。六番目。家にロビンが作ってくれたおかしがあるんだよ。一緒に食べよう?」
魔人ラフテリアは真面目な話をしている雰囲気をぶち壊すように、シェリーとロビンの間に割り込む。いや、マイペースと言って良い。
「ああ、そうだね。さっき氷菓子を作っていたんだよ。きっと今頃冷えているよ。一緒に食べる?」
この吹雪いている雪の中で言う会話ではない。寒さが一段と増すようだ。
「はい、いただきます」
ここが極寒の地だろうと、二人を通さなければ、話が進まないため、シェリーはラフテリアとロビンの言葉に頷いたのだった。
「あっ!ロビン!もしかして家にお客さんが来るの初めてかも!」
「そうだね。初めてだね」
ラフテリアは家に人が来るということが嬉しいのか、雪が降り積もる雪原の上を楽しそうに踊りだした。
そんなラフテリアを眩しいものを見るようにロビンは目を細め見ている。
「リア。転移で帰るからこっちにおいで」
その言葉と同時にロビンの足元から陣が広がっていく。その陣はシェリーが嫌がらせのように出す狭い陣ではなく、2メル四方に渡って広がった。
その光景を見たラフテリアは慌ててロビンに飛びつくように抱きつている。
転移が発動される瞬間、シェリーにとっては珍しく笑みを浮べていた。微笑ましい彼らの姿が、嬉しいと言わんばかりに。
いや、番というものに囚われない彼らが羨ましいと。
空気が変わったと感じた瞬間、頭上から強い光を感じて、シェリーは空を見上げた。青く高い空が頭上には広がっている。そして、降り注ぐ光は熱をおび、大気を熱している。
「夏?」
思わずシェリーは呟く。真冬の極寒の地から常夏の地に転移してきたのだ。
「そう、夏だよ!だから上脱いじゃって!」
ラフテリアは空に向かって両手を上げて、ケラケラと笑っている。こうしてみると、外見より幼く感じるものの普通の人のように見える。
確かに分厚い毛皮の外套をまとう気候ではないので、シェリーもカイルも外套を外す。
「空島の残骸があるから南側だね」
カイルもシェリーと同じく空を見上げていたが、シェリーとは違うものを見ていたようだ。
「空島の残骸?」
シェリーはカイルが何を言っているのかと思い、青い空に目を凝らすも、青い空しか見えない。
「あそこは岩と木しかない小さな島で、あっちが門のような残骸しかない島。どちらも人が数人、入れればいい大きさしかないね」
カイルがシェリーの視線に合わせて指し示したところには、広大な空にゴミがあるとしか思われない小さな異物が見えるのみ。
シェリーの中の空島の大きさとは比べ物にならないほど、小さなものだった。
だが、それがあることで、この地はシェリーが今まで居た空の下ではないという証拠でもあったのだった。
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