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26章 建国祭
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「そう言われても実際に目にしたことがないので、理解できませんね」
風竜ディスタの意見は現実主義者の考え方だ。己が見たものしか信用できないと。
「別に他の世界があるかないかとは、普通に生活していれば、気にすることはないので、理解されなくてもいいです」
シェリーはディスタの言葉を否定しなかった。はっきり言って、この世界に生まれた存在は必ず白き神の干渉を受けている。その干渉を断ち切る術は存在するが、誰も望んで実行しようとはしないだろう。
一度死を体験しなければならないなんて。
「あれでしょう?ナオフミが居たところってことでしょう?」
オーウィルディアは別の世界を召喚者であり勇者ナオフミが居た異界だと理解を示した。
「ウィル。あのナオフミが召喚者っていうのも知っているし、ナオフミのよくわからない話を聞いたこともある。だけど、俺は常々疑問に思っていた。人としてはあり得ない力を持ったヤツこそ神が創り出した存在ではないのかと」
ディスタは突拍子もないことを言い出した。勇者ナオフミは神が魔王という存在を倒すために、創り出した者ではないのかと。
「ディスタ。考え過ぎじゃないかしら?」
「ウィル。例えば知らないところに連れて来られて、魔王を倒せと言われて、ハイわかりましたって言うか?言わないだろう?ナオフミは剣など持ったことが無かったと言っていたが、その戦いぶりは熟練者を思わせる戦い方だった。その姿を見て、俺はこいつは嘘を付いていると思ったな」
ディスタはナオフミの言動と行動に疑問を感じた結果、神の存在を疑ったようだ。
「ナオフミの存在そのものに、俺は疑問を持った。だから、異界の存在も信じていない」
ディスタは別の世界があることを理解出来ないし、異界というモノを信じていないと言い切った。その言葉にシェリーはため息を吐く。
ディスタはグローリア国がナオフミに何をしたかを知らない。彼の世界ではゲームというものが存在し、戦術的なものをゲームとして経験を得ることが出来るということを知らない。
しかし、シェリーはナオフミを擁護する言葉は口にはしなかった。そんなことを言っても仕方がない。シェリーが口出すことではないのだ。
「別に理解も信じることも、しなくていいです。あの存在の気まぐれでしか行けない世界のことなんて……」
シェリーの脳裏によぎるのは、佐々木の姿で知っている街並みを目にしたことだ。それも、少し様変わりした風景。
ある部分だけ、モザイクがかかったかのように思い出したくない記憶。
「シェリー。俺はここにいるからな」
シェリーを抱えているカイルが、突然おかしなことを言った。
「知っていますよ」
当たり前のことを、言わないで欲しいとシェリーは言わんばかりの態度だが、カイルとしては、シェリーの居場所はここにあると言いたかったのだろう。
「それで、うだうだ言っている間に全部集まりましたか?」
シェリーは黒い塊が積まれた一角を見て言った。別にこの場で、ただ単に無駄話をしていたのではなく、次元の悪魔の核が集まってくるのを待っていたのだ。
「そうね。連絡があった数は揃っているわね」
オーウィルディアは、ミゲルロディアやディスタが次元の悪魔を倒したあとの、核の回収の指示をしていたのだろう。北側に集められたものはこれで全てだと。
「カイルさん、降ろしてください」
「このままでも、浄化できないかな?」
「……降ろしてください」
最近のカイルの独占欲の強さに、シェリーは無言で睨みつけてから、再度同じことを口にする。
そして、先程から一言も喋っていない四人からも、無言の圧力を感じる。
「仕方がないなぁ」
何が仕方がないのかわからないが、カイルは無言の圧力を受けながらも、ニコニコと笑顔でシェリーを地面に降ろした。
シェリーが集められた黒い塊に向かっていく背後では、オーウィルディアとディスタが何とも言えない表情をしている。
「ウィル。以前来たときよりも、悪化していないか?ピリピリ感がすごいぞ」
「そんなことを私に言われてもねぇ。……グレイシャル。こちらに来なさい」
オーウィルディアに呼ばれたグレイは、何の話があるのだろうかと首を傾げながら、近寄っていく。
「なんですか。叔父上」
「なにか、あったの?」
曖昧な聞き方をされたグレイは、ますます首を傾げる。
「何を聞きたいかわからない」
「あなた達の間でピリピリしていることよ」
何が聞きたいのかわかったグレイは、一瞬にして不機嫌な表情になった。
「言いたくない」
グレイは、カイルだけが己の番と儀式を行い、絆が結ばれたことを言いたくないと口を噤んだ。
「そう、じゃぁ。なぜ、あんな中途半端な獣化なのかしら?私が見た獣人の獣化とは全然違うわね」
聞き出せないのであれば、別のことを聞き出そうとしたオーウィルディアの心無い言葉に、グレイはウッと声を漏らし、うつむいてしまった。
「ナディア様に聞いてください」
「シェリーちゃんからは、可愛い一択のことしか聞いていないわ。他に理由があるのかしら?」
可愛い一択。
女神ナディアから言われたことに、間違いはない。だがグレイとしては認めたくない一言だ。
「言いたくない」
うつむいたグレイの目には、光が消えていたのだった。
風竜ディスタの意見は現実主義者の考え方だ。己が見たものしか信用できないと。
「別に他の世界があるかないかとは、普通に生活していれば、気にすることはないので、理解されなくてもいいです」
シェリーはディスタの言葉を否定しなかった。はっきり言って、この世界に生まれた存在は必ず白き神の干渉を受けている。その干渉を断ち切る術は存在するが、誰も望んで実行しようとはしないだろう。
一度死を体験しなければならないなんて。
「あれでしょう?ナオフミが居たところってことでしょう?」
オーウィルディアは別の世界を召喚者であり勇者ナオフミが居た異界だと理解を示した。
「ウィル。あのナオフミが召喚者っていうのも知っているし、ナオフミのよくわからない話を聞いたこともある。だけど、俺は常々疑問に思っていた。人としてはあり得ない力を持ったヤツこそ神が創り出した存在ではないのかと」
ディスタは突拍子もないことを言い出した。勇者ナオフミは神が魔王という存在を倒すために、創り出した者ではないのかと。
「ディスタ。考え過ぎじゃないかしら?」
「ウィル。例えば知らないところに連れて来られて、魔王を倒せと言われて、ハイわかりましたって言うか?言わないだろう?ナオフミは剣など持ったことが無かったと言っていたが、その戦いぶりは熟練者を思わせる戦い方だった。その姿を見て、俺はこいつは嘘を付いていると思ったな」
ディスタはナオフミの言動と行動に疑問を感じた結果、神の存在を疑ったようだ。
「ナオフミの存在そのものに、俺は疑問を持った。だから、異界の存在も信じていない」
ディスタは別の世界があることを理解出来ないし、異界というモノを信じていないと言い切った。その言葉にシェリーはため息を吐く。
ディスタはグローリア国がナオフミに何をしたかを知らない。彼の世界ではゲームというものが存在し、戦術的なものをゲームとして経験を得ることが出来るということを知らない。
しかし、シェリーはナオフミを擁護する言葉は口にはしなかった。そんなことを言っても仕方がない。シェリーが口出すことではないのだ。
「別に理解も信じることも、しなくていいです。あの存在の気まぐれでしか行けない世界のことなんて……」
シェリーの脳裏によぎるのは、佐々木の姿で知っている街並みを目にしたことだ。それも、少し様変わりした風景。
ある部分だけ、モザイクがかかったかのように思い出したくない記憶。
「シェリー。俺はここにいるからな」
シェリーを抱えているカイルが、突然おかしなことを言った。
「知っていますよ」
当たり前のことを、言わないで欲しいとシェリーは言わんばかりの態度だが、カイルとしては、シェリーの居場所はここにあると言いたかったのだろう。
「それで、うだうだ言っている間に全部集まりましたか?」
シェリーは黒い塊が積まれた一角を見て言った。別にこの場で、ただ単に無駄話をしていたのではなく、次元の悪魔の核が集まってくるのを待っていたのだ。
「そうね。連絡があった数は揃っているわね」
オーウィルディアは、ミゲルロディアやディスタが次元の悪魔を倒したあとの、核の回収の指示をしていたのだろう。北側に集められたものはこれで全てだと。
「カイルさん、降ろしてください」
「このままでも、浄化できないかな?」
「……降ろしてください」
最近のカイルの独占欲の強さに、シェリーは無言で睨みつけてから、再度同じことを口にする。
そして、先程から一言も喋っていない四人からも、無言の圧力を感じる。
「仕方がないなぁ」
何が仕方がないのかわからないが、カイルは無言の圧力を受けながらも、ニコニコと笑顔でシェリーを地面に降ろした。
シェリーが集められた黒い塊に向かっていく背後では、オーウィルディアとディスタが何とも言えない表情をしている。
「ウィル。以前来たときよりも、悪化していないか?ピリピリ感がすごいぞ」
「そんなことを私に言われてもねぇ。……グレイシャル。こちらに来なさい」
オーウィルディアに呼ばれたグレイは、何の話があるのだろうかと首を傾げながら、近寄っていく。
「なんですか。叔父上」
「なにか、あったの?」
曖昧な聞き方をされたグレイは、ますます首を傾げる。
「何を聞きたいかわからない」
「あなた達の間でピリピリしていることよ」
何が聞きたいのかわかったグレイは、一瞬にして不機嫌な表情になった。
「言いたくない」
グレイは、カイルだけが己の番と儀式を行い、絆が結ばれたことを言いたくないと口を噤んだ。
「そう、じゃぁ。なぜ、あんな中途半端な獣化なのかしら?私が見た獣人の獣化とは全然違うわね」
聞き出せないのであれば、別のことを聞き出そうとしたオーウィルディアの心無い言葉に、グレイはウッと声を漏らし、うつむいてしまった。
「ナディア様に聞いてください」
「シェリーちゃんからは、可愛い一択のことしか聞いていないわ。他に理由があるのかしら?」
可愛い一択。
女神ナディアから言われたことに、間違いはない。だがグレイとしては認めたくない一言だ。
「言いたくない」
うつむいたグレイの目には、光が消えていたのだった。
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