435 / 780
25章-2 冬期休暇-旅行先の不穏な空気
423
しおりを挟む
「だけど、教えてもらわないとそんなことわからないじゃないか!」
ルークの言い分は当たり前の事だ。知識とは他者から与えられるものだ。
「では、君は知識を手に入れる為にどういう行動を起こしたのだ?」
「え?」
「自分にはないモノを手に入れる為に、行動を起こしたのかと聞いている」
はっきり言ってカイルの質問は13歳のルークにするには意地悪な質問だ。13歳でしかない、まだ成人もしておらず親の庇護下にいるべき少年に言う言葉ではない。
「そんなこと、まだ学生の僕に言われても」
「子供から、できないと?」
その言葉にルークはカッとなり、カイルに食って掛かる。
「当たり前ではないですか!僕に何ができたと言うのです。父さんと姉さんに僕に隠している事を教えて欲しいと言えばよかったのですか!」
与えられてきたモノをそのまま受け入れ、それ以上のモノを求めては来なかった者の言い分だ。いや、父親は地下の己の部屋から殆ど出てこず、5つ離れた姉が家の事を一人で仕切っており、迷惑を掛けないようにと、わがままを言わなかったルークの優しさであった。
だが、カイルはそんなルークを否定する。
「行動を起こさなかった結果がこれだ」
家族の事を知らなかったと、教えてもらえなかったと、勝手に拗ねて癇癪を起こしている子供のわがままだと。
「君はシェリーの人脈がどれほどのものか知っているか?」
唐突にカイルは全く違う話をしだした。シェリーの人脈と言われてもルークに知るすべはない。
「俺がシェリーと出逢ったのは、シェリーが今の君と同じ歳ぐらいだったか?出逢った頃にはシェリーはラースの大公閣下、ギランの総統閣下、炎国の初代王という各国の要人と顔つなぎをしていたのではないのか?」
カイルにそう問われてもルークはその場にいたわけではないのでわからない。
確かに、ラース公国のミゲルロディアとは直接会っていた。その後、騎獣に乗ってではあるが、マルス帝国を横断しギラン共和国にたどり着き、ルークの剣の指導をしてもらう『ライターリエーレ・ヴァーリシク』の住まいに突撃し、師になってくれるようにシェリーがお願いたのだ。
その時、剣術の適正を見るからとひと月ほどルークはライターの元で剣の基礎を学んでいたが、その一ヶ月の間、ルークの側にシェリーの姿は無かったのだ。
だから、その一ヶ月の間、シェリーが何をしていたのかルークは知らなかった。
その間に金狼族の長であり傭兵団をまとめる総帥を脅し、ギラン共和国の総統閣下との面会とユールクスのダンジョンの入る許可をもぎ取り、シェリーのツガイであるオルクスに通行人のふりをして近づき、ツガイであることを認識出来ないことを確認していた。
そして、炎国行きの船が出るまでダンジョンで時間つぶしをし、炎国に渡れば、食材を買い漁り、リオンの居場所を突き止め遠目で見ていると、アフィーリアに見つかり、炎王に見つかり、リオンに捕獲され、リオンの態度に疑問に思いつつもツガイとは認識をしていないと結論付けて、転移でギラン共和国にいたルークの元に戻ってきたことなんて、ルークには知り得ることは出来なかった。
カイルのいう人脈も元をたどれば、シェリーがツガイという者に捉えられたくないが為に行動を起こした結果だと言えるが、そもそも普通はそこまではしない。これは、シェリーがツガイという者たちを心底警戒し、ツガイという呪いを断ち切ろうとした行動だ。
しかし、結論からいえば、神というどうしようもない力の強制力によって、シェリーはツガイ達に捕まってしまったことによりシェリーの行動は無に返ってしまったのだったが、各国の要人である彼らとの縁は今もあり、それはシェリーとって有益なものとなっているのも確かだ。
「君は学生だからというが、ではシェリーはどうなんだ?シェリーは知識を学ぶべき場所に行っていたか?」
その言葉に今更ながらルークは気付かされた。姉であるシェリーは学校というものには行っていないと。殆ど家におり、時より家を開けることもあるが、長期間居なくなることはなかったと。
ただ、それがルークにとっては当たり前だったのだ。お腹が空いたといえば食事を出してくれ、怪我をして泣いていると直ぐに駆けつけ治療をしてくれる。
「だが、シェリーは自分の得た知識と行動力で各国の要人と交渉の末、目的を達したのではないのか?」
カイルはそうは言っているが、シェリーはある意味『俺Tueeee』を再現した超チート能力の塊だ。
そもそも知識を得たところからおかしい。神々からの祝福という名の雑談を聞かされたときの知識であり、あとはこの世界の転換点を作り出したラフテリアとロビンとマリートゥヴァからであり、最後に、シェリーを育てたマルゴからであった。
このことからシェリーは真実というこの世界が歩んできた歴史には詳しいが、一般常識というものが欠落していた。
__________
ここまで読んでいただきましてありがとうございます。
今回は長々とした説明文になっております。
13歳のシェリーがオーウィルディアと出会い、意気消沈のクストを脅してライターの名を聞き出し、ラース公国の大公の継承権の辞退とライターに会いに行くのに半年掛けて旅をした時の概要になります。
(『番とは~』はシェリーが18歳からの話になっておりますので、この頃の話は『6年後~』に少し被ってきています。が、読まなくても問題ありません。)
その旅から帰って来た後に、カイルと出逢っているので、カイルが言っているように13歳でラース、ギラン、炎の要人と出逢っていることになっています。
ルークの言い分は当たり前の事だ。知識とは他者から与えられるものだ。
「では、君は知識を手に入れる為にどういう行動を起こしたのだ?」
「え?」
「自分にはないモノを手に入れる為に、行動を起こしたのかと聞いている」
はっきり言ってカイルの質問は13歳のルークにするには意地悪な質問だ。13歳でしかない、まだ成人もしておらず親の庇護下にいるべき少年に言う言葉ではない。
「そんなこと、まだ学生の僕に言われても」
「子供から、できないと?」
その言葉にルークはカッとなり、カイルに食って掛かる。
「当たり前ではないですか!僕に何ができたと言うのです。父さんと姉さんに僕に隠している事を教えて欲しいと言えばよかったのですか!」
与えられてきたモノをそのまま受け入れ、それ以上のモノを求めては来なかった者の言い分だ。いや、父親は地下の己の部屋から殆ど出てこず、5つ離れた姉が家の事を一人で仕切っており、迷惑を掛けないようにと、わがままを言わなかったルークの優しさであった。
だが、カイルはそんなルークを否定する。
「行動を起こさなかった結果がこれだ」
家族の事を知らなかったと、教えてもらえなかったと、勝手に拗ねて癇癪を起こしている子供のわがままだと。
「君はシェリーの人脈がどれほどのものか知っているか?」
唐突にカイルは全く違う話をしだした。シェリーの人脈と言われてもルークに知るすべはない。
「俺がシェリーと出逢ったのは、シェリーが今の君と同じ歳ぐらいだったか?出逢った頃にはシェリーはラースの大公閣下、ギランの総統閣下、炎国の初代王という各国の要人と顔つなぎをしていたのではないのか?」
カイルにそう問われてもルークはその場にいたわけではないのでわからない。
確かに、ラース公国のミゲルロディアとは直接会っていた。その後、騎獣に乗ってではあるが、マルス帝国を横断しギラン共和国にたどり着き、ルークの剣の指導をしてもらう『ライターリエーレ・ヴァーリシク』の住まいに突撃し、師になってくれるようにシェリーがお願いたのだ。
その時、剣術の適正を見るからとひと月ほどルークはライターの元で剣の基礎を学んでいたが、その一ヶ月の間、ルークの側にシェリーの姿は無かったのだ。
だから、その一ヶ月の間、シェリーが何をしていたのかルークは知らなかった。
その間に金狼族の長であり傭兵団をまとめる総帥を脅し、ギラン共和国の総統閣下との面会とユールクスのダンジョンの入る許可をもぎ取り、シェリーのツガイであるオルクスに通行人のふりをして近づき、ツガイであることを認識出来ないことを確認していた。
そして、炎国行きの船が出るまでダンジョンで時間つぶしをし、炎国に渡れば、食材を買い漁り、リオンの居場所を突き止め遠目で見ていると、アフィーリアに見つかり、炎王に見つかり、リオンに捕獲され、リオンの態度に疑問に思いつつもツガイとは認識をしていないと結論付けて、転移でギラン共和国にいたルークの元に戻ってきたことなんて、ルークには知り得ることは出来なかった。
カイルのいう人脈も元をたどれば、シェリーがツガイという者に捉えられたくないが為に行動を起こした結果だと言えるが、そもそも普通はそこまではしない。これは、シェリーがツガイという者たちを心底警戒し、ツガイという呪いを断ち切ろうとした行動だ。
しかし、結論からいえば、神というどうしようもない力の強制力によって、シェリーはツガイ達に捕まってしまったことによりシェリーの行動は無に返ってしまったのだったが、各国の要人である彼らとの縁は今もあり、それはシェリーとって有益なものとなっているのも確かだ。
「君は学生だからというが、ではシェリーはどうなんだ?シェリーは知識を学ぶべき場所に行っていたか?」
その言葉に今更ながらルークは気付かされた。姉であるシェリーは学校というものには行っていないと。殆ど家におり、時より家を開けることもあるが、長期間居なくなることはなかったと。
ただ、それがルークにとっては当たり前だったのだ。お腹が空いたといえば食事を出してくれ、怪我をして泣いていると直ぐに駆けつけ治療をしてくれる。
「だが、シェリーは自分の得た知識と行動力で各国の要人と交渉の末、目的を達したのではないのか?」
カイルはそうは言っているが、シェリーはある意味『俺Tueeee』を再現した超チート能力の塊だ。
そもそも知識を得たところからおかしい。神々からの祝福という名の雑談を聞かされたときの知識であり、あとはこの世界の転換点を作り出したラフテリアとロビンとマリートゥヴァからであり、最後に、シェリーを育てたマルゴからであった。
このことからシェリーは真実というこの世界が歩んできた歴史には詳しいが、一般常識というものが欠落していた。
__________
ここまで読んでいただきましてありがとうございます。
今回は長々とした説明文になっております。
13歳のシェリーがオーウィルディアと出会い、意気消沈のクストを脅してライターの名を聞き出し、ラース公国の大公の継承権の辞退とライターに会いに行くのに半年掛けて旅をした時の概要になります。
(『番とは~』はシェリーが18歳からの話になっておりますので、この頃の話は『6年後~』に少し被ってきています。が、読まなくても問題ありません。)
その旅から帰って来た後に、カイルと出逢っているので、カイルが言っているように13歳でラース、ギラン、炎の要人と出逢っていることになっています。
0
お気に入りに追加
1,014
あなたにおすすめの小説
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
たとえ番でないとしても
豆狸
恋愛
「ディアナ王女、私が君を愛することはない。私の番は彼女、サギニなのだから」
「違います!」
私は叫ばずにはいられませんでした。
「その方ではありません! 竜王ニコラオス陛下の番は私です!」
──番だと叫ぶ言葉を聞いてもらえなかった花嫁の話です。
※1/4、短編→長編に変更しました。
放蕩公爵と、いたいけ令嬢
たつみ
恋愛
公爵令嬢のシェルニティは、両親からも夫からも、ほとんど「いない者」扱い。
彼女は、右頬に大きな痣があり、外見重視の貴族には受け入れてもらえずにいた。
夫が側室を迎えた日、自分が「不要な存在」だと気づき、彼女は滝に身を投げる。
が、気づけば、見知らぬ男性に抱きかかえられ、死にきれないまま彼の家に。
その後、屋敷に戻るも、彼と会う日が続く中、突然、夫に婚姻解消を申し立てられる。
審議の場で「不義」の汚名を着せられかけた時、現れたのは、彼だった!
「いけないねえ。当事者を、1人、忘れて審議を開いてしまうなんて」
◇◇◇◇◇
設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
それを踏まえて、お読み頂ければと思います、なにとぞ。
R-Kingdom_8
他サイトでも掲載しています。
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる