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25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影
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「ぐっ。ぐふっ!」
俯いて震えながら口元を押さえるサリー。
「冷徹のツヴェーク様が、そのような笑顔で·····ぐふっ!」
冷徹のツヴェーク。挙動不審だった第3師団長からは想像もできない二つ名だ。
「サリーさん。ルーちゃんと会わせてもらえるのなら、もう一枚差し上げます」
その言葉にサリーはバッと顔を上げ、シェリーのかかげた手元を見て、廊下に崩れ落ちる。
「ぐふっ。ぐふっ。騎士の姿を取りながら、上目遣いで愛を囁くような笑顔。感無量」
サリーのその言葉が聞こえたのか、中から顔見知りの女性が出てきて、シェリーの手元を見る。
「ふわぁ!ぐんそー!どうします?これシェリーちゃんの一点物ですよ。これを逃すと手に入りませんよ!」
「今回も嵐を呼ぶわね」
「荒れますね。ぐんそー」
二人しかわからない会話をしている。そんな二人はいつものことなので、シェリーは話がつくのを待っている。その横のカイルはというと、得体のしれないモノを見る目で二人を見ている。この写真に上からの命令を背いてまで手に入れる価値があるのだろうかという視線だ。
「わかったわ!シェリーちゃん交渉成立よ。ミルティー。シェリーちゃんを案内してあげて」
「サリー軍曹。了解しました!第3師団長の命に背いてでも第3師団長のレア写真を手にいれるべきだと判断しました!」
今回のことに第3師団長が一枚噛んでいたようだ。
「第3師団長が今回の事を仕切っていたのですか?」
シェリーは首を傾げてサリーに尋ねる。
「第3師団は魔術師団ですよね。今回の第7師団のこともルーちゃんのことも関係ないですよね」
そう、第3師団とは主に人族で編成された魔術師の師団なのだ。
「ああ、それね。ほらツヴェーク様ってニール様の甥っ子でしょ?ツヴェーク様自身はニール様の事を苦手に思っているけれど、ニール様って使えるものはなんでも使う方でしょ?だから、今回の話をツヴェーク様に持って行って、陛下に許可をいただいたのよ」
ニールの甥っ子?初耳だとシェリーは頭の中でニールとツヴェークを並べて見るが、全く似てはいない。
普段のツヴェークは無表情で黙々と仕事をしている人物だ。
ニールはと言えば言わずもがな、タバコを吹かしながら眉間にシワを寄せ、仕事に没頭している···ああ、姿は似ていなが、そういうとことは似ているのかとシェリーは納得をした。
しかし、ツヴェークの写真でツヴェークの命を覆すこととなるとは、なんとも偶然とは恐ろしいものだ。
そして、ツヴェークはニールを苦手としているということは、決して西区の方に足を運ぶことはないということだ。
これだと彼は一生己の番と会うことは叶わないだろう。近くに己の番がいるというのに、自ら足を運ぶことを避けているが為に会うことはない。
運命とはなんとも皮肉なのだろうか。いや、白き神の性格の悪さだろうか。
シェリーは面白い情報をくれたサリーに、もう一枚写真を付けて手渡した。
ミルティーと呼ばれた女性が、付いてくるようにと背を向けたので、シェリーとカイルは案内をしてくれる彼女の後について行く。背後からはサリーの怪しい笑い声が廊下に響き渡っていた。
_______________
「ぐっ。ぐふふふふふふふふふ」
廊下で一人立って怪しい笑い声を響かせている者は騎士団広報部で軍曹の地位にあるサリーだ。
「これは、これは、我が同志のイリアにあげよう」
サリーは扉を開けて少し席を外すと言い残し、急いで騎士団本部を後にした。
勿論、外交官であるイリアの元に向かうために隣接している王城へ向けて、ギリギリ歩いているようにみえる速さで、足を進めていく。
外交官であるイリアの姿を、王城に入る前に見つけたサリーは慌てて声をかけた。もう少し時間がずれていたら、イリアは帰ってしまったあとになっていた。
「イリア外交官!少しいいですか!」
まるで仕事を話をするように声をかけるサリー。この声で立ち止まり振り返るのは、黒髪に前髪だけが白く、背中から生えた黒い翼が印象的な女性だ。
「どうかしましたか?サリー軍曹」
人の通行の邪魔にならないように人が通る道から外れた二人は内緒話でもするように身を屈めて草木でその姿を隠す。
「いきなりどうしました?」
「イリア外交官!朗報よ!次の会議は大荒れよ!」
コソコソと話しながらもサリーの興奮はやまない。
「次の会議は明後日でしたか?」
「そう、だから我が同志のイリア外交官に前もって情報をあげるわ。頑張って手に入れるのよ」
二人が言っている会議とは写真販売会の隠語である。獣人は耳がいいため、このようにコソコソ話をしていても意味がないのだ。だから、隠語を用いている。
「これは、売ることができないから、イリアにあげるわ」
差し出された写真を目にしたイリアは目を見開いて、ふるふる震えながら写真を受け取る。
「これは!破壊神様が撮られたモノ!」
「そう、一点物よ」
「まさか!一点物がまた出るのですか!」
「そう、よだれモノよ」
売ることができない写真。それは涙目で困惑の表情を浮かべ、中腰になっているツヴェークの写真だ。
何が売れないのか。以前、とある写真が出た時の販売会が大いに荒れたのだ。普段では考えられない写真が出されたときに起こる大嵐。この国は獣人の国だ。話し合いで解決とはならず、武力行使になってしまう。
そこでの勝者が写真を手に入れることができる。ただ、事が大きくなりすぎると外部にこの販売会がバレてしまうことになってしまう。それは避けなければならない。
だから、サリーはそのような写真が手に入れば、同志に渡すようになったのだった。
俯いて震えながら口元を押さえるサリー。
「冷徹のツヴェーク様が、そのような笑顔で·····ぐふっ!」
冷徹のツヴェーク。挙動不審だった第3師団長からは想像もできない二つ名だ。
「サリーさん。ルーちゃんと会わせてもらえるのなら、もう一枚差し上げます」
その言葉にサリーはバッと顔を上げ、シェリーのかかげた手元を見て、廊下に崩れ落ちる。
「ぐふっ。ぐふっ。騎士の姿を取りながら、上目遣いで愛を囁くような笑顔。感無量」
サリーのその言葉が聞こえたのか、中から顔見知りの女性が出てきて、シェリーの手元を見る。
「ふわぁ!ぐんそー!どうします?これシェリーちゃんの一点物ですよ。これを逃すと手に入りませんよ!」
「今回も嵐を呼ぶわね」
「荒れますね。ぐんそー」
二人しかわからない会話をしている。そんな二人はいつものことなので、シェリーは話がつくのを待っている。その横のカイルはというと、得体のしれないモノを見る目で二人を見ている。この写真に上からの命令を背いてまで手に入れる価値があるのだろうかという視線だ。
「わかったわ!シェリーちゃん交渉成立よ。ミルティー。シェリーちゃんを案内してあげて」
「サリー軍曹。了解しました!第3師団長の命に背いてでも第3師団長のレア写真を手にいれるべきだと判断しました!」
今回のことに第3師団長が一枚噛んでいたようだ。
「第3師団長が今回の事を仕切っていたのですか?」
シェリーは首を傾げてサリーに尋ねる。
「第3師団は魔術師団ですよね。今回の第7師団のこともルーちゃんのことも関係ないですよね」
そう、第3師団とは主に人族で編成された魔術師の師団なのだ。
「ああ、それね。ほらツヴェーク様ってニール様の甥っ子でしょ?ツヴェーク様自身はニール様の事を苦手に思っているけれど、ニール様って使えるものはなんでも使う方でしょ?だから、今回の話をツヴェーク様に持って行って、陛下に許可をいただいたのよ」
ニールの甥っ子?初耳だとシェリーは頭の中でニールとツヴェークを並べて見るが、全く似てはいない。
普段のツヴェークは無表情で黙々と仕事をしている人物だ。
ニールはと言えば言わずもがな、タバコを吹かしながら眉間にシワを寄せ、仕事に没頭している···ああ、姿は似ていなが、そういうとことは似ているのかとシェリーは納得をした。
しかし、ツヴェークの写真でツヴェークの命を覆すこととなるとは、なんとも偶然とは恐ろしいものだ。
そして、ツヴェークはニールを苦手としているということは、決して西区の方に足を運ぶことはないということだ。
これだと彼は一生己の番と会うことは叶わないだろう。近くに己の番がいるというのに、自ら足を運ぶことを避けているが為に会うことはない。
運命とはなんとも皮肉なのだろうか。いや、白き神の性格の悪さだろうか。
シェリーは面白い情報をくれたサリーに、もう一枚写真を付けて手渡した。
ミルティーと呼ばれた女性が、付いてくるようにと背を向けたので、シェリーとカイルは案内をしてくれる彼女の後について行く。背後からはサリーの怪しい笑い声が廊下に響き渡っていた。
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「ぐっ。ぐふふふふふふふふふ」
廊下で一人立って怪しい笑い声を響かせている者は騎士団広報部で軍曹の地位にあるサリーだ。
「これは、これは、我が同志のイリアにあげよう」
サリーは扉を開けて少し席を外すと言い残し、急いで騎士団本部を後にした。
勿論、外交官であるイリアの元に向かうために隣接している王城へ向けて、ギリギリ歩いているようにみえる速さで、足を進めていく。
外交官であるイリアの姿を、王城に入る前に見つけたサリーは慌てて声をかけた。もう少し時間がずれていたら、イリアは帰ってしまったあとになっていた。
「イリア外交官!少しいいですか!」
まるで仕事を話をするように声をかけるサリー。この声で立ち止まり振り返るのは、黒髪に前髪だけが白く、背中から生えた黒い翼が印象的な女性だ。
「どうかしましたか?サリー軍曹」
人の通行の邪魔にならないように人が通る道から外れた二人は内緒話でもするように身を屈めて草木でその姿を隠す。
「いきなりどうしました?」
「イリア外交官!朗報よ!次の会議は大荒れよ!」
コソコソと話しながらもサリーの興奮はやまない。
「次の会議は明後日でしたか?」
「そう、だから我が同志のイリア外交官に前もって情報をあげるわ。頑張って手に入れるのよ」
二人が言っている会議とは写真販売会の隠語である。獣人は耳がいいため、このようにコソコソ話をしていても意味がないのだ。だから、隠語を用いている。
「これは、売ることができないから、イリアにあげるわ」
差し出された写真を目にしたイリアは目を見開いて、ふるふる震えながら写真を受け取る。
「これは!破壊神様が撮られたモノ!」
「そう、一点物よ」
「まさか!一点物がまた出るのですか!」
「そう、よだれモノよ」
売ることができない写真。それは涙目で困惑の表情を浮かべ、中腰になっているツヴェークの写真だ。
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そこでの勝者が写真を手に入れることができる。ただ、事が大きくなりすぎると外部にこの販売会がバレてしまうことになってしまう。それは避けなければならない。
だから、サリーはそのような写真が手に入れば、同志に渡すようになったのだった。
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