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25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影
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「にゃ!いらっしゃいませにゃ!」
オレンジショートボブの髪を弾ませながら、猫獣人のミーニャがシェリーを出迎えてくれた。
「シェリーちゃん、にゃににするにゃ?」
相変わらず“な”が“にゃ”になっているミーニャに注文を聞かれ、シェリーは厨房の奥で暇そうにしている食堂のオヤジに視線をむけてから注文を口にする。
「アラビアータパスタのランチセットで」
「····そんなメニューにゃいにゃ」
「暇そうにしているジェフさんなら作れますので、お願いします」
そう言ってシェリーは一つのテーブルに向かって行く。そこは遅めのランチを取っているギルドの職員が数人集まっているところだった。
「エリサさん。食事が終わってからでいいので、写真を取らせてもらえませんか?」
「あら、シェリーちゃん。室内なのにそんなに深くフードを被ってどうしたの?写真なら今からでいいわよ。食べ終わって、おしゃべりしているだけだから」
シェリーにエリサと呼ばれた女性はさらりとした銀髪の青目。見た目は儚げで庇護欲をそそるギルドの受付嬢の中でも人気No.1の人族だ。
「フードは色々問題があるだけなので、気にしないでください」
そう言いながら、シェリーはカバンの中をゴソゴソしだす。
「ねぇねぇ。シェリーちゃん最近一緒にいる彼達ってどう言う関係?おねえさん興味津々!」
青白い皮膚にうっすら鱗が浮いており、マリンブルーの髪が美しい女性がシェリーに詰め寄ってきた。
「そうそう、カイル様だけでもドキドキなのに、あの有名なギランのオルクス様。遠くでみているだけで胸がいっぱいになるわ」
胸の前で手を組んでため息を吐いているのは、金髪碧眼の狐獣人·····どうみても王族の血が入っている女性だ。
「関係?ただの居候『ははははは』····」
ニールの笑い声が聞こえてきた。一瞬そちらの方に視線を向けるが、カイルと何かを話しているだけなので、シェリーは無視をして、カメラをカバンから取り出した。
これはユーフィアに頼んで作ってもらったポラロイドカメラである。勿論、ルークの成長を記録していくために頼んだものだ。
「ニールさんが笑っているわ。明日は雨かしら?」
そのような事を言って立ち上がろうとしているエリサをシェリーは止める。
「エリサさん。そのまま座っていてください。上目遣いをこちらに向けてください」
シェリーはエリサを座らせたまま高めにカメラを構える。そして、シャッターを押す。
「髪を横にかきあげる感じで」
美しい銀髪をなびかせるようにポーズを取るエリサ。慣れたものだ。
「ありがとうございます」
「もういいの?じゃ、アレをいただける?」
エリサはシェリーに向かって右手を差し出す。エリサが何も文句を言わずに写真を取られることに同意をしたのは、どうやらエリサには下心があったようだ。
シェリーは出された右手に青い石を数個置く。
「ああ、これよこれ!いいわ!美しいわ!美しい私を飾るのにふさわしいわ」
そう言ってエリサは青い石を恍惚に眺めている。
その表情もシャッターをきることをシェリーは忘れてはいない。
「エリサの私大好きが始まってしまったわ」
「こうなると長いのよね。夕方までに復活してくれるかしら?」
自分の瞳と同じ色の青い宝石が大好きで、その青い宝石で着飾った自分を想像するエリサに、同僚の二人はいつもの事が始まってしまったと、二人でおしゃべりを始めてしまった。
「シェリーちゃん。ランチできたにゃー!」
ミーニャの声が聞こえたのでシェリーは遅めのお昼を取るために、3人に背を向けた。そして、今後の交渉材料が手に入った事を内心、ほくそ笑んでいた。
ミーニャに呼ばれ、厨房前のカウンターに腰を降ろすと、隣にカイルが座ってきた。ニールとの話は終わったのだろう。
「シェリーは何にしたの?見たことのないパスタだね」
シェリーの前に置かれているアラビアータを指してカイルが言った。ミーニャがメニューにはないと言っていたので、ここでは取り扱わないメニューがシェリーの前にはあるのだ。
「今日はこれが食べたかったので、頼んだのです」
そう言ってシェリーは食事を始めてしまった。
「食べたいというだけで、注文するなといつも言っているだろうが」
厨房からシーフードパスタをカイルの前に置いて文句を言っているのは、厨房のオヤジであるジェフだ。
しかし、シェリーの注文も難なく作り出して、シェリーの前に出してくるというのは料理人としての矜持なのだろうか。
「いいじゃないですか。作れるのですから」
シェリーはパスタを食べながら言う。作れるのなら作ればいいと。
隣でカイルも食事に手をつけ始めるが、一瞬固まったようになり、再び食べ始める。
「なぁ。今思ったんだが、これはシェリーの料理じゃないのか?」
食べ終わったカイルが何故か怒っているかのような低い声でジェフに問いかけた。
オレンジショートボブの髪を弾ませながら、猫獣人のミーニャがシェリーを出迎えてくれた。
「シェリーちゃん、にゃににするにゃ?」
相変わらず“な”が“にゃ”になっているミーニャに注文を聞かれ、シェリーは厨房の奥で暇そうにしている食堂のオヤジに視線をむけてから注文を口にする。
「アラビアータパスタのランチセットで」
「····そんなメニューにゃいにゃ」
「暇そうにしているジェフさんなら作れますので、お願いします」
そう言ってシェリーは一つのテーブルに向かって行く。そこは遅めのランチを取っているギルドの職員が数人集まっているところだった。
「エリサさん。食事が終わってからでいいので、写真を取らせてもらえませんか?」
「あら、シェリーちゃん。室内なのにそんなに深くフードを被ってどうしたの?写真なら今からでいいわよ。食べ終わって、おしゃべりしているだけだから」
シェリーにエリサと呼ばれた女性はさらりとした銀髪の青目。見た目は儚げで庇護欲をそそるギルドの受付嬢の中でも人気No.1の人族だ。
「フードは色々問題があるだけなので、気にしないでください」
そう言いながら、シェリーはカバンの中をゴソゴソしだす。
「ねぇねぇ。シェリーちゃん最近一緒にいる彼達ってどう言う関係?おねえさん興味津々!」
青白い皮膚にうっすら鱗が浮いており、マリンブルーの髪が美しい女性がシェリーに詰め寄ってきた。
「そうそう、カイル様だけでもドキドキなのに、あの有名なギランのオルクス様。遠くでみているだけで胸がいっぱいになるわ」
胸の前で手を組んでため息を吐いているのは、金髪碧眼の狐獣人·····どうみても王族の血が入っている女性だ。
「関係?ただの居候『ははははは』····」
ニールの笑い声が聞こえてきた。一瞬そちらの方に視線を向けるが、カイルと何かを話しているだけなので、シェリーは無視をして、カメラをカバンから取り出した。
これはユーフィアに頼んで作ってもらったポラロイドカメラである。勿論、ルークの成長を記録していくために頼んだものだ。
「ニールさんが笑っているわ。明日は雨かしら?」
そのような事を言って立ち上がろうとしているエリサをシェリーは止める。
「エリサさん。そのまま座っていてください。上目遣いをこちらに向けてください」
シェリーはエリサを座らせたまま高めにカメラを構える。そして、シャッターを押す。
「髪を横にかきあげる感じで」
美しい銀髪をなびかせるようにポーズを取るエリサ。慣れたものだ。
「ありがとうございます」
「もういいの?じゃ、アレをいただける?」
エリサはシェリーに向かって右手を差し出す。エリサが何も文句を言わずに写真を取られることに同意をしたのは、どうやらエリサには下心があったようだ。
シェリーは出された右手に青い石を数個置く。
「ああ、これよこれ!いいわ!美しいわ!美しい私を飾るのにふさわしいわ」
そう言ってエリサは青い石を恍惚に眺めている。
その表情もシャッターをきることをシェリーは忘れてはいない。
「エリサの私大好きが始まってしまったわ」
「こうなると長いのよね。夕方までに復活してくれるかしら?」
自分の瞳と同じ色の青い宝石が大好きで、その青い宝石で着飾った自分を想像するエリサに、同僚の二人はいつもの事が始まってしまったと、二人でおしゃべりを始めてしまった。
「シェリーちゃん。ランチできたにゃー!」
ミーニャの声が聞こえたのでシェリーは遅めのお昼を取るために、3人に背を向けた。そして、今後の交渉材料が手に入った事を内心、ほくそ笑んでいた。
ミーニャに呼ばれ、厨房前のカウンターに腰を降ろすと、隣にカイルが座ってきた。ニールとの話は終わったのだろう。
「シェリーは何にしたの?見たことのないパスタだね」
シェリーの前に置かれているアラビアータを指してカイルが言った。ミーニャがメニューにはないと言っていたので、ここでは取り扱わないメニューがシェリーの前にはあるのだ。
「今日はこれが食べたかったので、頼んだのです」
そう言ってシェリーは食事を始めてしまった。
「食べたいというだけで、注文するなといつも言っているだろうが」
厨房からシーフードパスタをカイルの前に置いて文句を言っているのは、厨房のオヤジであるジェフだ。
しかし、シェリーの注文も難なく作り出して、シェリーの前に出してくるというのは料理人としての矜持なのだろうか。
「いいじゃないですか。作れるのですから」
シェリーはパスタを食べながら言う。作れるのなら作ればいいと。
隣でカイルも食事に手をつけ始めるが、一瞬固まったようになり、再び食べ始める。
「なぁ。今思ったんだが、これはシェリーの料理じゃないのか?」
食べ終わったカイルが何故か怒っているかのような低い声でジェフに問いかけた。
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