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24章-2 魔の大陸-魔人が治める国

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「神様との約束だね」

 ラフテリアは嬉しそうにロビンに笑いかけた。神との約束。

「ロビンが約束を守れるように、わたしもお手伝いするね」

 ラフテリアが果たせなかった神との約束だ。今度は約束を破ることがないように。

「ラフテリアが手伝ってくれるなんて嬉しいな。それに、また一緒に旅をしよう。ラフテリアの神様との約束はまだ終わってないよ。ラフテリアの力で世界は浄化できるよ」

 聖女の力はシェリーに渡してしまったが、浄化が完全に使えなくなったわけではない。一度覚えた魔術が使えなくなることが無いように、浄化の力は使える。ただ、無尽蔵には使えないだけだ。

「うん」

 例え、番の絆が無くなったとしても、この二人の関係性は変わりはなかった。その姿をシェリーは微笑ましげに見ていた。
 そう、番などという世界に決められた存在ではなく信頼関係を築いた二人が手を取り合う姿を。

「あ、新しい子のところに案内をしないといけないね」

 ラフテリアと手を繋いだロビンが思い出したかのように言った。いや、恐らく今まで忘れていたのだろう。

「こっちだよ」

 そう言って己の足で歩き始めたロビンの行く先に視線をむけると、集落の入り口に数人の魔人が集まっていた。あの巨大な力を感じて見に来たのだろう。その中にシェリーの見覚えがある人物がいた。魔人化したミゲルロディアだ。

 そのミゲルロディアはここの大陸の王と言っていいラフテリアを目の前にして膝を折る。それに続き周りにいた魔人たちもならった。

 数人の魔人がラフテリアに向かって膝を折る。その光景はまさにこの大陸の支配者に敬意を払っているようにも見える。
 なぜ、魔人化し膨大な力を手に入れた者たちがラフテリアに膝を折るか。それはラフテリアの纏う力が半端ないからだ。

 あの白き神が愁いを感じ、聖女という存在を創り出したほど、世界には人の悪の心が満ちていたのだ。それをラフテリアは受け入れ魔人化した。
 それは、それは、他を逸脱して膨大な力をその身にまとっているのだ。他の魔人が足元に及ばないほどに。

「ラフテリア様、先程の世界の軋みは何が起こったのでありましょうか」

 魔人ミゲルロディアが、ラフテリアに尋ねる。この集落と思える町で新参者であるミゲルロディアが代表して言葉を発したのだ。

「神様がね。来てくれたの。それでロビンを人にしてくれたの」

 ラフテリアは嬉しそうに答える。しかし、人にしてくれたと言ってはいるが、本当に人なのか怪しい存在だ。モルテ王が不死者なら、ロビンは何の存在になったのだろうか。

「神様が来てくれた?それはどちらの神様でありましょうか?」

 普通なら神が来てくれたと言っても比喩だと思うだろうが、相手はミゲルロディアだ。その辺りには大いに理解を示してくれた。

「名前は知らないの。白い神様なの」

 確かに他の神々は名がある。その名を呼んで人々は崇め奉っているのだ。しかし、白き神の名が示されたものはこの世界に存在しない。
 その言葉を聞いたミゲルロディアはどの神かはわかったようで、うなずいて理解を示した。

「あと、ここに来た理由は君の客人を案内してきたんだよ」

 ロビンはそう言いて、シェリーの方に視線を向けた。その視線をたどったミゲルロディアは黒く濁った目を見開く。
 きっと、思いもよらなかったのだろう。



 シェリー達は一軒の家に案内された。ミゲルロディアが今住んでいるという平屋の一軒家だ。今まで大公として暮らしてきた者としては些か不便を強いられているのではないのかと思えば、魔人の使用人が二人ほど付けられていた。
 それなりに、問題なく暮らせてはいたようだ。

「それで、この私に何用か」

 魔人ミゲルロディアがシェリー達を目の前にして尋ねた。
 その姿は、金髪だった髪は黒く、ラースの目だったピンクの目も黒く、そして、ベッドで寝込んでいた姿は70歳ぐらいに見えたが、今では20歳から30歳ぐらいに見えた。そのミゲルロディアとテーブルを挟んでシェリーは向き合っていた。

「実は、伯父様まだ大公ですので、戻っていただこうと思ったのです」

 そのシェリーの言葉にミゲルロディアの眉間に皺が寄る。

「何を言っているのだ。私の姿が見えないのか?」

 この魔人と成った姿が見えないのかと、両手を広げて、己の姿をシェリーに見せつける。

「わかっております。しかし、今現在大公に立てる者がおりません。伯父様もそれはわかっていらしたのでしょ?だから、跡継ぎを指名しなかった」

 シェリーの言葉にミゲルロディアは口をつくんだ。己の子がいるが、誰一人ラースの目を持たなかったのだ。なら、親族から跡継ぎを指名しなければならなかったのだが、ミゲルロディアは誰一人、己の跡継ぎだと口にしなかったのだ。いや、正確にはビアンカの子の誰かだとは言ってはいたが、誰とは指名していなかったのだ。

 それは、国を治める者としては有り得ないことだった。

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