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24章-2 魔の大陸-魔人が治める国
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白き神は、聖女と選んだ者に神言した。
「この世界はね、最初はよかったんだ」
その姿は何もかもが白い存在だった。
「皆幸せ。でも、人という意思を持ち思考をする者たちは、今のままでは、幸せを感じなくなってしまったみたいでね。より高みを目指そうとしたんだ。本当に愚かだよね」
真っ白な髪をなびかせる風が、ほのかに花の香りを運んで来た。
「そうすれば、不平、不満、悪意、憎悪、嫉妬なんて感情を持ち出すじゃないか。本当にバカだよね。あのままいればそんな感情持たなくてすんだのに」
金属を流したような白い目を細め、目の前の少女を見る。
「君に特別な力を与えようと思う。人の闇の心がたまった世界を浄化してほしんだ。君は今が幸せだよね?番と共に暮らせればいいよね?それ以上のこだわりはないよね?そんな君にやってほしい」
何もかもが白い存在は、少女にそう言った。少女の幸せは番と共にいることだろうと。それ以上の望みはないのだろうと。
(*【聖女は魔に転じて世界を狂わす】より一部抜粋)
_____________
「ここだよ」
人の姿となったロビンが、指をさして示したものは、小さな家々が点在し、町というより村と表現した方がいいような集落だった。
「この町に新しく来た子がいる。統治に優れていたから、この町の管理を任せているんだ」
やはり、この集落を町と言っているようだ。しかし、ラフテリアが魔人となって4千年は経つが、その間にどれほどの者たちが魔人化したかはわからない。数から言えば、それほど多くはないのだろう。
そして、この集落の管理をミゲルロディアに任せている。確かに適材適所だ。
「うー。もう、着いちゃった。もっとロビンと一緒に歩きたい!もっと一緒にいろんなところにお出かけしたい!」
ロビンの隣では、ラフテリアがこの姿のロビンと一緒にもっといたいと駄々をこね始めていた。
「リア。わがままを言っては駄目だよ。シェリーちゃんには聖女のお役目があるからね。僕達はここまでだよ」
そんな、ラフテリアをロビンが諭す。しかし、ラフテリアはイヤイヤと首を横に振っている。
ロビンは困ったという顔をしながら、シェリーを見る。どうにかならないだろうかという目だ。
シェリーの術で今のロビンの姿があるのだから、シェリー次第と言いたいところだが、ここに来て、ロビンの維持に使っている魔力量の消費が激しくなってきたのをシェリーは感じていた。
そう、天津の時と同じだ。死者はこの世には普通は存在しない。これ以上は駄目だと言われているのだ。
「ラフテリア様」
シェリーはロビンにすがりついているラフテリアに声を掛ける。
「白き神様がこれ以上は駄目だと言われています。私の術もこれ以上は維持ができません。ラフテリア様自身が神様にお願いをされてはいかがでしょうか?」
仮にも聖女であったものだ。あの白き神との接触があったのなら、交渉はできるのではないのかと、シェリーはラフテリアに言ってみる。
「わたしは白い神様に嫌われちゃっているの。約束を破ったから、もうお姿も見られないし、お声もかけてもらえない。わたしはロビンを人にはできないの」
いや、それは無いとシェリーは思った。あのシェリー曰く謎の生命体だ。
己の選んだ聖女とその守護者という役目を与えた番を、人の欲の為に良いように扱ったことに対して不満を顕にしたのだ。
ラフテリアの事を嫌っているわけではないだろう。
「ラフテリア様から願いを言われた事はありますか?」
だから、シェリーは尋ねる。ラフテリアの方から声をかけたことがあるのかと。
「わたしが神様お願いを?約束を守れなかったわたしが、お願いを言うなんてできない」
やはり、ラフテリアの方から願いを口にする事はなかったようだ。
「一度、お願いを口にされるといいですよ」
「お願いを言ってもいいのかな?」
その時、シェリーの術が突然解除された。もちろん、シェリーが解いたわけではない。外部から干渉を受けたのだ。思わずシェリーは舌打ちをする。
ラフテリアはすがっていた存在が無くなり、バランスを崩して地面に膝を着いた。その腕の中には首だけになったロビンがいた。
その姿を見たラフテリアは天に向けて声を上げる。言葉にならない慟哭の様な叫び声だ。
4千年前の己の番を失った記憶が甦ったのかもしれない。
「神様!神様!わたし、神様との約束を守れなかったけど、お願いを言ってもいい?ロビンを人にして欲しいの!その為ならどんな事でもするから!」
その姿は大切な人を失った、ただの少女のようだ。聖女でも無く。魔人でも無く。ただの人族の少女。
『いいよ』
そんな声が耳を掠めた。その声を聞いたシェリーは眉を潜め、ため息を吐く。
ラフテリアはというと立ち上がり、天を仰ぎ見て呟く。
「ありがとう···ござい··ます」
しかし、シェリーは内心嫌な予感がしていた。あの謎の生命体だ。素直にロビンを人に戻すとは思えなかった。
「この世界はね、最初はよかったんだ」
その姿は何もかもが白い存在だった。
「皆幸せ。でも、人という意思を持ち思考をする者たちは、今のままでは、幸せを感じなくなってしまったみたいでね。より高みを目指そうとしたんだ。本当に愚かだよね」
真っ白な髪をなびかせる風が、ほのかに花の香りを運んで来た。
「そうすれば、不平、不満、悪意、憎悪、嫉妬なんて感情を持ち出すじゃないか。本当にバカだよね。あのままいればそんな感情持たなくてすんだのに」
金属を流したような白い目を細め、目の前の少女を見る。
「君に特別な力を与えようと思う。人の闇の心がたまった世界を浄化してほしんだ。君は今が幸せだよね?番と共に暮らせればいいよね?それ以上のこだわりはないよね?そんな君にやってほしい」
何もかもが白い存在は、少女にそう言った。少女の幸せは番と共にいることだろうと。それ以上の望みはないのだろうと。
(*【聖女は魔に転じて世界を狂わす】より一部抜粋)
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「ここだよ」
人の姿となったロビンが、指をさして示したものは、小さな家々が点在し、町というより村と表現した方がいいような集落だった。
「この町に新しく来た子がいる。統治に優れていたから、この町の管理を任せているんだ」
やはり、この集落を町と言っているようだ。しかし、ラフテリアが魔人となって4千年は経つが、その間にどれほどの者たちが魔人化したかはわからない。数から言えば、それほど多くはないのだろう。
そして、この集落の管理をミゲルロディアに任せている。確かに適材適所だ。
「うー。もう、着いちゃった。もっとロビンと一緒に歩きたい!もっと一緒にいろんなところにお出かけしたい!」
ロビンの隣では、ラフテリアがこの姿のロビンと一緒にもっといたいと駄々をこね始めていた。
「リア。わがままを言っては駄目だよ。シェリーちゃんには聖女のお役目があるからね。僕達はここまでだよ」
そんな、ラフテリアをロビンが諭す。しかし、ラフテリアはイヤイヤと首を横に振っている。
ロビンは困ったという顔をしながら、シェリーを見る。どうにかならないだろうかという目だ。
シェリーの術で今のロビンの姿があるのだから、シェリー次第と言いたいところだが、ここに来て、ロビンの維持に使っている魔力量の消費が激しくなってきたのをシェリーは感じていた。
そう、天津の時と同じだ。死者はこの世には普通は存在しない。これ以上は駄目だと言われているのだ。
「ラフテリア様」
シェリーはロビンにすがりついているラフテリアに声を掛ける。
「白き神様がこれ以上は駄目だと言われています。私の術もこれ以上は維持ができません。ラフテリア様自身が神様にお願いをされてはいかがでしょうか?」
仮にも聖女であったものだ。あの白き神との接触があったのなら、交渉はできるのではないのかと、シェリーはラフテリアに言ってみる。
「わたしは白い神様に嫌われちゃっているの。約束を破ったから、もうお姿も見られないし、お声もかけてもらえない。わたしはロビンを人にはできないの」
いや、それは無いとシェリーは思った。あのシェリー曰く謎の生命体だ。
己の選んだ聖女とその守護者という役目を与えた番を、人の欲の為に良いように扱ったことに対して不満を顕にしたのだ。
ラフテリアの事を嫌っているわけではないだろう。
「ラフテリア様から願いを言われた事はありますか?」
だから、シェリーは尋ねる。ラフテリアの方から声をかけたことがあるのかと。
「わたしが神様お願いを?約束を守れなかったわたしが、お願いを言うなんてできない」
やはり、ラフテリアの方から願いを口にする事はなかったようだ。
「一度、お願いを口にされるといいですよ」
「お願いを言ってもいいのかな?」
その時、シェリーの術が突然解除された。もちろん、シェリーが解いたわけではない。外部から干渉を受けたのだ。思わずシェリーは舌打ちをする。
ラフテリアはすがっていた存在が無くなり、バランスを崩して地面に膝を着いた。その腕の中には首だけになったロビンがいた。
その姿を見たラフテリアは天に向けて声を上げる。言葉にならない慟哭の様な叫び声だ。
4千年前の己の番を失った記憶が甦ったのかもしれない。
「神様!神様!わたし、神様との約束を守れなかったけど、お願いを言ってもいい?ロビンを人にして欲しいの!その為ならどんな事でもするから!」
その姿は大切な人を失った、ただの少女のようだ。聖女でも無く。魔人でも無く。ただの人族の少女。
『いいよ』
そんな声が耳を掠めた。その声を聞いたシェリーは眉を潜め、ため息を吐く。
ラフテリアはというと立ち上がり、天を仰ぎ見て呟く。
「ありがとう···ござい··ます」
しかし、シェリーは内心嫌な予感がしていた。あの謎の生命体だ。素直にロビンを人に戻すとは思えなかった。
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