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24章-1 魔の大陸-魔女への依頼
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「は?兄上を連れ戻す?」
いつもと違いドスの利いた声が部屋中に響いた。ここはラース公国の公都グリード。その中心にあるヴァンジェオ城の中にあるオーウィルディアの執務室だ。
シェリーの前には唖然とした顔をしているオーウィルディアがいる。
「シェリーちゃん。兄上は魔人になってしまったのよー。わかっているでしょ?」
そして、いつもどおりのオネェ言葉に戻ったオーウィルディアは再度確認のための言葉をシェリーに言う。オーウィルディアの目の前にいるシェリーの方が一番わかっているだろうと。
「ええ、わかっていますよ。しかし、今のラースに悪魔と対抗する力があるかと言えば、厳しいのではないのですか?あの勇者を当てにしますか?」
現実を突きつけるシェリーにオーウィルディアは大きくため息を吐き出す。オーウィルディア自身も言わずともわかりきていることだ。
あのナオフミは扱いづらいと。
その番であるビアンカがナオフミを諌めて行動を制御してくれればいいのだが、ラースの姫君であるビアンカにそのような事を求める方が愚かなのだろうと。
では、討伐戦当時はどうしていたか。ビアンカはシェリーがばあやと呼んでいたマルゴの事は信頼しており、その言葉を聞くことができた。
ナオフミの場合はライターリエーレ・ヴァーリシク····いや、ライターが強引に言うことを聞かせていた。現在ライターは王都メイルーンの南地区で、ナオフミの息子であるユウマの指導をしている。中年と言っていいライターに今更ナオフミに付くように言うのは酷というものだ。
「シェリーちゃんも色々大変なのでしょう?この国に構っている暇なんてないでしょ?」
オーウィルディアはシェリーにラースの事に口出しをするなと遠回しに言った。しかし、シェリーは引くことはなく。
「暇ではありませんよ。しかし、これがベストの未来と言われてしまいましたら、私も動かざる得ません」
「え!なにそれ!未来って何?魔人を大公に迎える事自体が最悪の未来なんだけどぉー」
オーウィルディアの声が部屋中に響き渡った。その大声に思わずシェリーは耳を塞ぐ。内心ここに獣人の彼らが居なくて良かったと思いながら。
そう、シェリーのツガイたちはオーウィルディアの執務室にはいない。
グレイはヴァンジェオ城のオーウィルディアの執務室に入った瞬間に大量の書類を渡され、公子としての仕事をしろと言われ、別の部屋の一室に隔離された。
あまりの量にスーウェンも手伝おうと付いていき、カイルは風竜ディスタがこの城に留まっているため、嫌がるディスタを連れて訓練場に行った。
その竜人同士の手合わせを見るために、オルクスとリオンはカイルに付いていっているため、この場にシェリーのツガイは誰も居ないのだ。
決してオーウィルディアがイライラしすぎて、魔眼の力が漏れ出ており、部屋に居ることができないわけではない。
「オーウィルディア様。考えても見てください。オーウィルディア様自身、部屋に閉じこもって書類と向き合うより、外に出て体を動かしている方が性にあっているのではないのですか?」
シェリーの言葉にオーウィルディアは苦虫を噛み潰したような顔をする。そんな事を指摘されなくとも己のことは己自身がよくわかっていると。
「魔人化する原因となった人物はもういません。ミゲルロディア大公閣下自身が手を下しました。そして、初源の魔人であるラフテリア様も同じく魔人化した原因である人物を手にかけています。それで、魔人として力を振るったのは4千年前のカウサ神教国を滅ぼしたときのみです」
シェリーはとある方向を見る。その方向はモルテ国のある方角だ。二人の魔人が愛した存在が王としている国だ。
「それ以降、2つの大陸を自由に行き来していますが、大きな問題は起こされていません」
「シェリーちゃん。そこが問題なんじゃない?大きな問題ってことはそれなりに問題を起こしているということでしょ?」
「まぁ。魔人ですから、魔力は他の人と比べて多いでしょう。そのようなことは些細なことでは?」
周りに影響を与えるほどの魔力を持つ事を些細なこととシェリーは言う。しかし、ミゲルロディアが魔人化した時、魔人ラフテリアが現れた時、人に与えた影響は多大なものだった。
「はぁ。もうお手上げよ。兄上を連れ戻すっていう時点で、次元が違うってかんじよ。シェリーちゃんが言っている意味はわかるわよ。結局、今現在大公の座にいるべきなのは兄上だってことぐらい理解できるわ。でもね、兄上が暴れたら魔の大陸に送ることでしか対策が打てないのよ。それがベストの未来?最悪よ!」
オーウィルディアは机をバンと叩き憤りを顕にする。
「エルフの王となるべく生まれた黒のエルフが視た未来視です。絶対ではありませんが、今までの経験上当たっています。その黒のエルフの言は炎王も注視するほどです」
シェリーはアリスの言葉は信じるに値すると言うが
「それって、わたしに確認すること?もう、決まっている言い方のような気がするわ?」
オーウィルディアはシェリーの言葉に自分の意見は必要なのかと疑問を呈した。
いつもと違いドスの利いた声が部屋中に響いた。ここはラース公国の公都グリード。その中心にあるヴァンジェオ城の中にあるオーウィルディアの執務室だ。
シェリーの前には唖然とした顔をしているオーウィルディアがいる。
「シェリーちゃん。兄上は魔人になってしまったのよー。わかっているでしょ?」
そして、いつもどおりのオネェ言葉に戻ったオーウィルディアは再度確認のための言葉をシェリーに言う。オーウィルディアの目の前にいるシェリーの方が一番わかっているだろうと。
「ええ、わかっていますよ。しかし、今のラースに悪魔と対抗する力があるかと言えば、厳しいのではないのですか?あの勇者を当てにしますか?」
現実を突きつけるシェリーにオーウィルディアは大きくため息を吐き出す。オーウィルディア自身も言わずともわかりきていることだ。
あのナオフミは扱いづらいと。
その番であるビアンカがナオフミを諌めて行動を制御してくれればいいのだが、ラースの姫君であるビアンカにそのような事を求める方が愚かなのだろうと。
では、討伐戦当時はどうしていたか。ビアンカはシェリーがばあやと呼んでいたマルゴの事は信頼しており、その言葉を聞くことができた。
ナオフミの場合はライターリエーレ・ヴァーリシク····いや、ライターが強引に言うことを聞かせていた。現在ライターは王都メイルーンの南地区で、ナオフミの息子であるユウマの指導をしている。中年と言っていいライターに今更ナオフミに付くように言うのは酷というものだ。
「シェリーちゃんも色々大変なのでしょう?この国に構っている暇なんてないでしょ?」
オーウィルディアはシェリーにラースの事に口出しをするなと遠回しに言った。しかし、シェリーは引くことはなく。
「暇ではありませんよ。しかし、これがベストの未来と言われてしまいましたら、私も動かざる得ません」
「え!なにそれ!未来って何?魔人を大公に迎える事自体が最悪の未来なんだけどぉー」
オーウィルディアの声が部屋中に響き渡った。その大声に思わずシェリーは耳を塞ぐ。内心ここに獣人の彼らが居なくて良かったと思いながら。
そう、シェリーのツガイたちはオーウィルディアの執務室にはいない。
グレイはヴァンジェオ城のオーウィルディアの執務室に入った瞬間に大量の書類を渡され、公子としての仕事をしろと言われ、別の部屋の一室に隔離された。
あまりの量にスーウェンも手伝おうと付いていき、カイルは風竜ディスタがこの城に留まっているため、嫌がるディスタを連れて訓練場に行った。
その竜人同士の手合わせを見るために、オルクスとリオンはカイルに付いていっているため、この場にシェリーのツガイは誰も居ないのだ。
決してオーウィルディアがイライラしすぎて、魔眼の力が漏れ出ており、部屋に居ることができないわけではない。
「オーウィルディア様。考えても見てください。オーウィルディア様自身、部屋に閉じこもって書類と向き合うより、外に出て体を動かしている方が性にあっているのではないのですか?」
シェリーの言葉にオーウィルディアは苦虫を噛み潰したような顔をする。そんな事を指摘されなくとも己のことは己自身がよくわかっていると。
「魔人化する原因となった人物はもういません。ミゲルロディア大公閣下自身が手を下しました。そして、初源の魔人であるラフテリア様も同じく魔人化した原因である人物を手にかけています。それで、魔人として力を振るったのは4千年前のカウサ神教国を滅ぼしたときのみです」
シェリーはとある方向を見る。その方向はモルテ国のある方角だ。二人の魔人が愛した存在が王としている国だ。
「それ以降、2つの大陸を自由に行き来していますが、大きな問題は起こされていません」
「シェリーちゃん。そこが問題なんじゃない?大きな問題ってことはそれなりに問題を起こしているということでしょ?」
「まぁ。魔人ですから、魔力は他の人と比べて多いでしょう。そのようなことは些細なことでは?」
周りに影響を与えるほどの魔力を持つ事を些細なこととシェリーは言う。しかし、ミゲルロディアが魔人化した時、魔人ラフテリアが現れた時、人に与えた影響は多大なものだった。
「はぁ。もうお手上げよ。兄上を連れ戻すっていう時点で、次元が違うってかんじよ。シェリーちゃんが言っている意味はわかるわよ。結局、今現在大公の座にいるべきなのは兄上だってことぐらい理解できるわ。でもね、兄上が暴れたら魔の大陸に送ることでしか対策が打てないのよ。それがベストの未来?最悪よ!」
オーウィルディアは机をバンと叩き憤りを顕にする。
「エルフの王となるべく生まれた黒のエルフが視た未来視です。絶対ではありませんが、今までの経験上当たっています。その黒のエルフの言は炎王も注視するほどです」
シェリーはアリスの言葉は信じるに値すると言うが
「それって、わたしに確認すること?もう、決まっている言い方のような気がするわ?」
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