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24章-1 魔の大陸-魔女への依頼
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シェリーの前にはニコニコと笑っているカイルがいる。そして、シェリーはスーウェンの膝の上に座らされていた。
この状況は何かと言われれば、シェリーに剣を与えて貰えなかった二人からの要望で、裏庭で3人でお茶をしているのだった。
他のグレイとオルクスとリオンはと言うと、スーウェンが張った結界の中で、黒狼クロードと手合わせをしていた。しかし、双剣を手にしたグレイも雷電を扱うことができるようになったオルクスも天津の技を使えるようになったリオンもすでに地に伏していた。
「三人を相手にして息も乱さずにいるクロードは流石と言っていいのでしょうか」
膝の上にいるシェリーの手を握っているスーウェンが言った。
「やっぱり実戦経験があるのと無いのとでは違うよね」
経験値の差ではないかと、シェリーの口元にクッキーを差し出しているカイルが言った。
「カイルさん、胸がいっぱいなのですが?」
そんな二人に挟まれたシェリーはクッキーはいらないと言葉にする。
「じゃ、お茶にする?」
今度はティーカップを差し出すカイル。そんなカイルにシェリーは腐った魚のような目を向ける。
「おい!結界を解くか、俺を戻せ!」
三人が再起不能になった事で、すべきことは終わったとばかりに結界の内側から声が掛けられた。
「スーウェンさん結界を解いてください。カイルさんはそのクッキーをクロードさんに渡してください」
シェリーは横にのけられているクッキーを指し示す。これは今回のお礼だ。クロードに報酬は何がいいと聞いたところ『カントリー○アム』と言われたので、以前炎王からの取引で得たお菓子をシェリーはクロードの報酬として出したのだ。
「思ったより保たなかったね」
シェリーとの時間を邪魔された事で、若干カイルの機嫌が悪くなった。クロードも炎王と同じ感じがするため、なるべくシェリーに近づけたくないのだ。
結界を解かれたクロードは苛立った雰囲気を醸しながら近づいてきた。そして、ぞんざいに椅子を引き、ドカリと腰を下ろす。
「おい!あの不出来な奴らはなんだ?」
あの3人の事だろう。シェリーは腐った魚の目のままクロードを見て答える。
「ですから、クロードさんに頼んだのですよ。変革者であるクロードさんに」
「俺に死んだような目を向けるな!気味が悪い」
そう言いながらクロードは己が要望したカントリー○アムを口にする。その時ふっと頬が緩んだ。きっと何か思い出の食べ物なのだろう。
「変革者?ああ、称号のことか。いや、関係ないだろ?っていうか、あいつらだ!不出来すぎるぞ。餓鬼に切れ味のいい包丁だけを与えて、全く使いこなせていない」
ファブロの危険極まりない剣を扱いきれていない事を言っているのだろうが、先日手に入れたばかりなのでそれは難しいのではないのだろうか。
「その辺りは同じ匠の刀を持っているクロードさんが鍛えてあげてください」
「いや、刀のこともそうだが、技も荒すぎる。それも使いこなせていない。あの豹獣人はまだ矯正することは可能だ。だが、あの鬼人の技は駄目だ。どうみても制御も何もあったものじゃない。力の暴力だ」
天津の『龍の咆哮』の事を言っているのだろう。それは天津に任せるべきか。いや、天津も制御をしている風ではなかった。力の全てをその拳に込めて打ち放つ。それが『龍の咆哮』だ。
しかし、シェリーが魔力圧縮をしても制御はできる。だから、問題はリオンが己の魔力を扱いきれていない事にあるのではないのかとシェリーは結論づけた。
シェリーは後ろに振り向き見上げる。
「スーウェンさん、リオンさんに魔力の扱い方を教えてあげてもらえません?」
そうシェリーから言われたスーウェンは『うっ』っと声を漏らして横を向いてしまった。エルフの特徴的な長い耳まで真っ赤になっていた。
「何処に照れる要素があるんだ?そんな死んだ目で頼み事をされて」
呆れるようなクロードの声が耳に入ってきた。シェリーはその目のままクロードの方に向く。
「だからコエーって」
そのクロードは口をもごもごさせている。
「さっきからシェリーの事、悪く言ってるのが腹立つんだけど?」
シェリーとのお茶を邪魔され、己の番を貶す言葉を放つ目の前の黒狼を射殺さんばかりに視線を向けているカイルがユラリと立ち上がる。
「べ、別にあんたの事を悪く言ってないだろ?」
そう、言いながら椅子を引き、クロードは逃げ腰だ。
「そう言う事を言っているわけじゃない」
カイルはクロードの首根っこをガシリと掴み、引きずって庭の中央まで歩いて行く。
クロードは引きずられながら『獣人が竜人に敵うはずないだろ!』と叫んでいる。
「あーあ、クロワンコくん。竜の兄ちゃんを怒らせてしまったんだ」
いつの間にか陽子がクロードが座っていた椅子に現れ、お菓子を貪っていた。陽子の仕事は終わったのだろうか。
この状況は何かと言われれば、シェリーに剣を与えて貰えなかった二人からの要望で、裏庭で3人でお茶をしているのだった。
他のグレイとオルクスとリオンはと言うと、スーウェンが張った結界の中で、黒狼クロードと手合わせをしていた。しかし、双剣を手にしたグレイも雷電を扱うことができるようになったオルクスも天津の技を使えるようになったリオンもすでに地に伏していた。
「三人を相手にして息も乱さずにいるクロードは流石と言っていいのでしょうか」
膝の上にいるシェリーの手を握っているスーウェンが言った。
「やっぱり実戦経験があるのと無いのとでは違うよね」
経験値の差ではないかと、シェリーの口元にクッキーを差し出しているカイルが言った。
「カイルさん、胸がいっぱいなのですが?」
そんな二人に挟まれたシェリーはクッキーはいらないと言葉にする。
「じゃ、お茶にする?」
今度はティーカップを差し出すカイル。そんなカイルにシェリーは腐った魚のような目を向ける。
「おい!結界を解くか、俺を戻せ!」
三人が再起不能になった事で、すべきことは終わったとばかりに結界の内側から声が掛けられた。
「スーウェンさん結界を解いてください。カイルさんはそのクッキーをクロードさんに渡してください」
シェリーは横にのけられているクッキーを指し示す。これは今回のお礼だ。クロードに報酬は何がいいと聞いたところ『カントリー○アム』と言われたので、以前炎王からの取引で得たお菓子をシェリーはクロードの報酬として出したのだ。
「思ったより保たなかったね」
シェリーとの時間を邪魔された事で、若干カイルの機嫌が悪くなった。クロードも炎王と同じ感じがするため、なるべくシェリーに近づけたくないのだ。
結界を解かれたクロードは苛立った雰囲気を醸しながら近づいてきた。そして、ぞんざいに椅子を引き、ドカリと腰を下ろす。
「おい!あの不出来な奴らはなんだ?」
あの3人の事だろう。シェリーは腐った魚の目のままクロードを見て答える。
「ですから、クロードさんに頼んだのですよ。変革者であるクロードさんに」
「俺に死んだような目を向けるな!気味が悪い」
そう言いながらクロードは己が要望したカントリー○アムを口にする。その時ふっと頬が緩んだ。きっと何か思い出の食べ物なのだろう。
「変革者?ああ、称号のことか。いや、関係ないだろ?っていうか、あいつらだ!不出来すぎるぞ。餓鬼に切れ味のいい包丁だけを与えて、全く使いこなせていない」
ファブロの危険極まりない剣を扱いきれていない事を言っているのだろうが、先日手に入れたばかりなのでそれは難しいのではないのだろうか。
「その辺りは同じ匠の刀を持っているクロードさんが鍛えてあげてください」
「いや、刀のこともそうだが、技も荒すぎる。それも使いこなせていない。あの豹獣人はまだ矯正することは可能だ。だが、あの鬼人の技は駄目だ。どうみても制御も何もあったものじゃない。力の暴力だ」
天津の『龍の咆哮』の事を言っているのだろう。それは天津に任せるべきか。いや、天津も制御をしている風ではなかった。力の全てをその拳に込めて打ち放つ。それが『龍の咆哮』だ。
しかし、シェリーが魔力圧縮をしても制御はできる。だから、問題はリオンが己の魔力を扱いきれていない事にあるのではないのかとシェリーは結論づけた。
シェリーは後ろに振り向き見上げる。
「スーウェンさん、リオンさんに魔力の扱い方を教えてあげてもらえません?」
そうシェリーから言われたスーウェンは『うっ』っと声を漏らして横を向いてしまった。エルフの特徴的な長い耳まで真っ赤になっていた。
「何処に照れる要素があるんだ?そんな死んだ目で頼み事をされて」
呆れるようなクロードの声が耳に入ってきた。シェリーはその目のままクロードの方に向く。
「だからコエーって」
そのクロードは口をもごもごさせている。
「さっきからシェリーの事、悪く言ってるのが腹立つんだけど?」
シェリーとのお茶を邪魔され、己の番を貶す言葉を放つ目の前の黒狼を射殺さんばかりに視線を向けているカイルがユラリと立ち上がる。
「べ、別にあんたの事を悪く言ってないだろ?」
そう、言いながら椅子を引き、クロードは逃げ腰だ。
「そう言う事を言っているわけじゃない」
カイルはクロードの首根っこをガシリと掴み、引きずって庭の中央まで歩いて行く。
クロードは引きずられながら『獣人が竜人に敵うはずないだろ!』と叫んでいる。
「あーあ、クロワンコくん。竜の兄ちゃんを怒らせてしまったんだ」
いつの間にか陽子がクロードが座っていた椅子に現れ、お菓子を貪っていた。陽子の仕事は終わったのだろうか。
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