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22章 獣人たちの騒がしい大祭
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人々が熱狂する歓声が耳の奥で響いている中央で立っている2人の人物は、奇しくも同じことを思っていた。
『調子に乗りすぎた』
と。
「あなた達は何を遊んでいるのですか?そんな事すれば剣が保たないぐらいわかりませんか?」
結界を通って来たスーウェンが呆然とした二人に呆れた視線を向けていた。
「リオン、魔剣でも無いのに魔力を剣に込めるなど馬鹿のすることです。オルクスも同じ様に真似をするなんて、ご主人様は呆れて出ていってしまいましたよ」
スーウェンのその言葉に二人はシェリーがいた所に視線を向けるが、番の気配はそこにはなく、会場の外にあるようだ。
「やばい!置いていかれる」
オルクスは焦ったように出口に向かおうとし、リオンも慌ててオルクスの後を追う。スーウェンは焦っても結界に阻まれて出られないのにと思いながら後ろから付いていくのだった。
シェリーは今、フェクトス総統と向かい合っていた。会場の外に出たところで、フェクトス総統の遣いという人から呼び止められ、中央地区にあるフェクトス総統の仕事場に連れて来られてしまった。
目の前には珈琲が出され、焼き菓子も置かれている。
未だにシェリーは黒いフードを深く被っており、両隣にはカイルとグレイが座っていた。
「何か好みの物があるなら言ってください。何がいいですか?マドレーヌもありますし、チョコレートもありますよ」
ガタイのいい虎獣人がゴロゴロと喉を鳴らしながら、シェリーにお菓子を勧めている人物が、この国をまとめ上げているフェクトス総統閣下である。
シェリーの両隣からイライラという雰囲気が感じ取れる。やはり、ただの外套ごときでは、神の祝福を阻害できるはずもなかったのだ。
「お菓子はここにあるクッキーで構いません。それで、ここに呼ばれたご用件は何でしょうか?」
シェリーがここに呼ばれた用件を尋ねるが、フェクトス総統は『ああ』と言って立ち上がり、何かを取ってきてシェリーの前に出した。
「甘い物が駄目なら煎餅もありますよ」
と言って、丸い形の焼き煎餅が出てきた。これでは話が全く進まない。本当にこの祝福は弊害でしかない。
シェリーが苛立ちを感じていると、廊下をバタバタと走る音が聞こえてきたと思えば、バンと部屋の扉が開けたれた。
「フェクトス閣下!シェリーを勝手に連れて行くな!」
オルクスが文句を言いながら、入ってきた。
「どうしたのですオルクス。先ほどの試合を見ましたが、この2ヶ月で見違えるほど強くなりましたね。驚きましたよ」
フェクトス総統はシェリーから目線を外して、オルクスにニコニコと笑みを向けた。何度か会ったことのあるフェクトス総統の姿に戻ったような気がする。はぁ。とシェリーは思わずため息を出す。
「俺の質問の答えになってない!」
「ああ、そうですね。少し、確認したいことがあったのですよ」
フェクトス総統は再びシェリーに視線を向けるが、先程のシェリーに向ける視線と全く違っており、統治者の顔をしたフェクトス総統がシェリーの目の前にいた。
「次元の悪魔の出現についてお聞きしてもいいですか?」
「ダンジョンマスターから聞きましたか?」
シェリーの所に来る前後にユールクスはフェクトス総統の所に寄ったのだろう。
「ええ、ユールクス様から叱られてしまいましてね。現状を貴女から聞きたいと思ったのですよ」
現状の確認をされてもシェリーは全てを知っているわけではない。聖女として啓示を受ければその場に向かうが、悪魔の出現に対し必ずしも啓示があるとは限らない。
「現状と申しましても、私は私の知ることしか知りませんよ。」
「かまいません」
「そうですか。ラース公国で二度出現を認めています。一度目は頭部のない武力特化型の一体のみでした。そして、二度目は武力特化型と機動力特化の魔眼型。今回は怒気の誘発の魔眼だったようです」
シェリーの横でギリと音が聞こえた。しかし、シェリーは聞こえないふりをする。
「低級の悪魔が3体と聞きましたが、どうやって倒したのです?ああ、これは興味本位なだけです」
「どうやってですか?一体はカイルさんの一撃で、機動力特化の魔眼型は炎王にお願いしました。それも直ぐに片がついたようで、多分斬り伏せられたように見えました。3体目はディスタさんが倒したので詳しくは知りません」
「もしかして、ディスタと言うのは風竜ディスタですか?」
「竜人でしたが、どう呼ばれているかは知りません」
シェリーの返答にフェクトス総統は頭を抱えている。
「竜人と龍人だなんて参考にもならない」
その口からうわ言の様に愚痴がこぼれ落ちた。いきなりの次元の悪魔からの襲撃に対してどう対応したのか知りたかったのかもしれないが、この大陸に殆ど存在しない竜人が二人と種族自体が殆ど存在しない龍人が悪魔を倒したとしたら、それは参考にもならないだろう。
_______________
補足
アルテリカの火の結界の解除方法は、とある物を用いれば簡単に解除できる物となっております。ただ、それは一部の者にしか知らされていません。ですから、今回も試合が終われば直ぐに解除する予定ではありました。
『調子に乗りすぎた』
と。
「あなた達は何を遊んでいるのですか?そんな事すれば剣が保たないぐらいわかりませんか?」
結界を通って来たスーウェンが呆然とした二人に呆れた視線を向けていた。
「リオン、魔剣でも無いのに魔力を剣に込めるなど馬鹿のすることです。オルクスも同じ様に真似をするなんて、ご主人様は呆れて出ていってしまいましたよ」
スーウェンのその言葉に二人はシェリーがいた所に視線を向けるが、番の気配はそこにはなく、会場の外にあるようだ。
「やばい!置いていかれる」
オルクスは焦ったように出口に向かおうとし、リオンも慌ててオルクスの後を追う。スーウェンは焦っても結界に阻まれて出られないのにと思いながら後ろから付いていくのだった。
シェリーは今、フェクトス総統と向かい合っていた。会場の外に出たところで、フェクトス総統の遣いという人から呼び止められ、中央地区にあるフェクトス総統の仕事場に連れて来られてしまった。
目の前には珈琲が出され、焼き菓子も置かれている。
未だにシェリーは黒いフードを深く被っており、両隣にはカイルとグレイが座っていた。
「何か好みの物があるなら言ってください。何がいいですか?マドレーヌもありますし、チョコレートもありますよ」
ガタイのいい虎獣人がゴロゴロと喉を鳴らしながら、シェリーにお菓子を勧めている人物が、この国をまとめ上げているフェクトス総統閣下である。
シェリーの両隣からイライラという雰囲気が感じ取れる。やはり、ただの外套ごときでは、神の祝福を阻害できるはずもなかったのだ。
「お菓子はここにあるクッキーで構いません。それで、ここに呼ばれたご用件は何でしょうか?」
シェリーがここに呼ばれた用件を尋ねるが、フェクトス総統は『ああ』と言って立ち上がり、何かを取ってきてシェリーの前に出した。
「甘い物が駄目なら煎餅もありますよ」
と言って、丸い形の焼き煎餅が出てきた。これでは話が全く進まない。本当にこの祝福は弊害でしかない。
シェリーが苛立ちを感じていると、廊下をバタバタと走る音が聞こえてきたと思えば、バンと部屋の扉が開けたれた。
「フェクトス閣下!シェリーを勝手に連れて行くな!」
オルクスが文句を言いながら、入ってきた。
「どうしたのですオルクス。先ほどの試合を見ましたが、この2ヶ月で見違えるほど強くなりましたね。驚きましたよ」
フェクトス総統はシェリーから目線を外して、オルクスにニコニコと笑みを向けた。何度か会ったことのあるフェクトス総統の姿に戻ったような気がする。はぁ。とシェリーは思わずため息を出す。
「俺の質問の答えになってない!」
「ああ、そうですね。少し、確認したいことがあったのですよ」
フェクトス総統は再びシェリーに視線を向けるが、先程のシェリーに向ける視線と全く違っており、統治者の顔をしたフェクトス総統がシェリーの目の前にいた。
「次元の悪魔の出現についてお聞きしてもいいですか?」
「ダンジョンマスターから聞きましたか?」
シェリーの所に来る前後にユールクスはフェクトス総統の所に寄ったのだろう。
「ええ、ユールクス様から叱られてしまいましてね。現状を貴女から聞きたいと思ったのですよ」
現状の確認をされてもシェリーは全てを知っているわけではない。聖女として啓示を受ければその場に向かうが、悪魔の出現に対し必ずしも啓示があるとは限らない。
「現状と申しましても、私は私の知ることしか知りませんよ。」
「かまいません」
「そうですか。ラース公国で二度出現を認めています。一度目は頭部のない武力特化型の一体のみでした。そして、二度目は武力特化型と機動力特化の魔眼型。今回は怒気の誘発の魔眼だったようです」
シェリーの横でギリと音が聞こえた。しかし、シェリーは聞こえないふりをする。
「低級の悪魔が3体と聞きましたが、どうやって倒したのです?ああ、これは興味本位なだけです」
「どうやってですか?一体はカイルさんの一撃で、機動力特化の魔眼型は炎王にお願いしました。それも直ぐに片がついたようで、多分斬り伏せられたように見えました。3体目はディスタさんが倒したので詳しくは知りません」
「もしかして、ディスタと言うのは風竜ディスタですか?」
「竜人でしたが、どう呼ばれているかは知りません」
シェリーの返答にフェクトス総統は頭を抱えている。
「竜人と龍人だなんて参考にもならない」
その口からうわ言の様に愚痴がこぼれ落ちた。いきなりの次元の悪魔からの襲撃に対してどう対応したのか知りたかったのかもしれないが、この大陸に殆ど存在しない竜人が二人と種族自体が殆ど存在しない龍人が悪魔を倒したとしたら、それは参考にもならないだろう。
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補足
アルテリカの火の結界の解除方法は、とある物を用いれば簡単に解除できる物となっております。ただ、それは一部の者にしか知らされていません。ですから、今回も試合が終われば直ぐに解除する予定ではありました。
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