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20章 趣味と実用性を兼ね備えたモノは奇怪な存在
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「『亡者招来』」
空中に陣が形成され、そこに光が集まって一つの塊の像を成していく。光が消え、そこに現れたのは黒髪に三角の耳がその間から生え、黒い瞳は召喚者のシェリーを睨んでいるように鋭く、口は不満そうに歪んでいる長身の男が現れた。
「ちっ。」
召喚された者はシェリーを見て舌打ちをした。
「不満そうですね。今日は私ではありませんよ。今日は後ろの方を相手してもらえますか?」
シェリーに後ろの者を相手にしろと言われ、更に不機嫌そうに眉をひそめ、男は後ろを振り返る。しかし、男にとって思ってもみない相手がいたようで、目を見張り口をあんぐりと開けた。
「クストか?」
その口から漏れるように名を紡いた。
名前を呼ばれたクストも理解が追いつかなようで、呆然と男を見ていた。
「爺様が若い。」
そう、召喚された男はクストが爺様と呼ぶほど歳はいっておらず、クストとそう変わらない見た目だった。
「一体どういうことだ。シェリー・カークス。何をしたんだ!」
目の前に存在してはいけない人物がいることにクストは混乱しながらも、何かと問題を起こすシェリーに言葉を放つ。
「世界の記憶から再現したので本人ではありませんよ。ただの記憶です。」
「嬢ちゃん。変なことを時々言うが、今回は流石にわからん。」
「わからなくてもいいのですよ。師団長さん。彼と手合わせしたくないですか?」
シェリーのその言葉にクストの目の色が変わった。
第6師団の訓練場に二人の狼獣人が向き合っていた。黒狼クロードと青狼クストだ。
そして、その周りには詰め所にいた第6師団の兵が遠巻きに数十人おり、その中間の距離にシェリーたちがいた。
「グレイさん。二人の戦いをよく見ておいてください。」
シェリーがグレイに声をかける。今日は途中から一段と機嫌が悪くなっていたシェリーから普通に声を掛けられてグレイは驚きシェリーを見る。
「え?」
「言ってもわからないようなので、その目で見てください。」
シェリーが言葉で説明をしてもわかってもらえなかったので、言葉でわからないようなら、見て分かれとシェリーは言っているのだ。
「あ・・・うん。」
シェリーの言葉はグレイを凹ますには十分の威力があった。
向かい合った二人の狼獣人が剣を取り出し構える。クストはいつも腰に佩いている剣を構えたが、クロードが空間から取り出し抜いた剣を見てシェリーは目を見張った。
「なにそれ、一度も私に使ってくれたことないじゃない。親方さんの魔刀。やっぱり手加減されていた。」
シェリーから言葉が溢れ出た。
『亡者の強襲 クラスS(人族、獣人族バージョン)』のスキルでランダム召喚される中、彼だけが、黒狼のみがシェリーに対して佐々木に対してまともに相手をしなかった。剣を合わすことはするが斬りかかることはない。魔術を使うが補助魔術のみで攻撃に使用することはなかった。
そして、クロードが手にしている剣はドワーフのファブロが作ったと思われる刀だった。それも魔力を宿している魔刀だ。
そのシェリーの言葉が聞こえたのか、クロードが呆れたように言う。
「あのな。女、子供に本気出すわけにはいかないだろ?それも1対5って、それってもう虐めじゃないか。」
「そうですか。あとで覚えておいてください。」
「いいや。忘れた。忘れた。クスト行くぞ。」
そう言ってクロードの姿がかき消えた。
「ちっ!」
その態度にシェリーは舌打ちをする。あちらの世界の認識とこの世界の認識の違いの表れだ。1対5は虐め・・・確かにそうだろう。だが、この世界では敵が一対一で存在するなんて思っていると痛い目を見るのは自分自身なのだ。
訓練場の地面には複数の刃が這ったかのような地割れが次々とできている。
地面だけではなく空中にも黒い稲光がとめどなく走っている。
土埃が舞っているのはわかるが、二人の姿を捉えることができない。これが4半刻ほど続いている。互いが互いの存在を確かめあっているように、剣を打ち合っている。クロードがクストに指導をしている様に、クストがクロードに教えを乞うているように。
シェリーはもういいのではと思ってきた。そろそろ、終わりにしよう。そろそろ、本気を出してもらおう。
「グレイさんよく見ていてください。」
そう、グレイに声をかけ、普通なら姿を捉えることができないクロードを目で追って魔眼に魔力を込める。
「『動くな。』」
シェリーの言葉と共に姿が現れ、地面に倒れ込むクロード。
「このクソラースが!」
シェリーの仕業と瞬時に判断したクロードがシェリーに文句を言いながら、全身に魔力を帯びていく。
そのクロードにクストの剣が迫ってくる。
黒い雷を纏い全身が一回り大きくなったように見えた。いや、実際に体積が増えている。
「グォォォォー!」
目に見えない鎖を引きちぎるかのように前に進もうとする黒き獣。黒き雷光を放ち、シェリーの魔眼から逃れ、クストの剣を避け、シェリーに向かって四つ足の黒き獣が駆けてくる。
黒き獣がその瞳に赤い光を宿し、牙をシェリーに突き立てようと、鋭い牙が並んだ口を大きく開ける。
カイルが前に出ようとするのをシェリーは制し、腰の亜空間収納の鞄からとあるものを差し出した。
空中に陣が形成され、そこに光が集まって一つの塊の像を成していく。光が消え、そこに現れたのは黒髪に三角の耳がその間から生え、黒い瞳は召喚者のシェリーを睨んでいるように鋭く、口は不満そうに歪んでいる長身の男が現れた。
「ちっ。」
召喚された者はシェリーを見て舌打ちをした。
「不満そうですね。今日は私ではありませんよ。今日は後ろの方を相手してもらえますか?」
シェリーに後ろの者を相手にしろと言われ、更に不機嫌そうに眉をひそめ、男は後ろを振り返る。しかし、男にとって思ってもみない相手がいたようで、目を見張り口をあんぐりと開けた。
「クストか?」
その口から漏れるように名を紡いた。
名前を呼ばれたクストも理解が追いつかなようで、呆然と男を見ていた。
「爺様が若い。」
そう、召喚された男はクストが爺様と呼ぶほど歳はいっておらず、クストとそう変わらない見た目だった。
「一体どういうことだ。シェリー・カークス。何をしたんだ!」
目の前に存在してはいけない人物がいることにクストは混乱しながらも、何かと問題を起こすシェリーに言葉を放つ。
「世界の記憶から再現したので本人ではありませんよ。ただの記憶です。」
「嬢ちゃん。変なことを時々言うが、今回は流石にわからん。」
「わからなくてもいいのですよ。師団長さん。彼と手合わせしたくないですか?」
シェリーのその言葉にクストの目の色が変わった。
第6師団の訓練場に二人の狼獣人が向き合っていた。黒狼クロードと青狼クストだ。
そして、その周りには詰め所にいた第6師団の兵が遠巻きに数十人おり、その中間の距離にシェリーたちがいた。
「グレイさん。二人の戦いをよく見ておいてください。」
シェリーがグレイに声をかける。今日は途中から一段と機嫌が悪くなっていたシェリーから普通に声を掛けられてグレイは驚きシェリーを見る。
「え?」
「言ってもわからないようなので、その目で見てください。」
シェリーが言葉で説明をしてもわかってもらえなかったので、言葉でわからないようなら、見て分かれとシェリーは言っているのだ。
「あ・・・うん。」
シェリーの言葉はグレイを凹ますには十分の威力があった。
向かい合った二人の狼獣人が剣を取り出し構える。クストはいつも腰に佩いている剣を構えたが、クロードが空間から取り出し抜いた剣を見てシェリーは目を見張った。
「なにそれ、一度も私に使ってくれたことないじゃない。親方さんの魔刀。やっぱり手加減されていた。」
シェリーから言葉が溢れ出た。
『亡者の強襲 クラスS(人族、獣人族バージョン)』のスキルでランダム召喚される中、彼だけが、黒狼のみがシェリーに対して佐々木に対してまともに相手をしなかった。剣を合わすことはするが斬りかかることはない。魔術を使うが補助魔術のみで攻撃に使用することはなかった。
そして、クロードが手にしている剣はドワーフのファブロが作ったと思われる刀だった。それも魔力を宿している魔刀だ。
そのシェリーの言葉が聞こえたのか、クロードが呆れたように言う。
「あのな。女、子供に本気出すわけにはいかないだろ?それも1対5って、それってもう虐めじゃないか。」
「そうですか。あとで覚えておいてください。」
「いいや。忘れた。忘れた。クスト行くぞ。」
そう言ってクロードの姿がかき消えた。
「ちっ!」
その態度にシェリーは舌打ちをする。あちらの世界の認識とこの世界の認識の違いの表れだ。1対5は虐め・・・確かにそうだろう。だが、この世界では敵が一対一で存在するなんて思っていると痛い目を見るのは自分自身なのだ。
訓練場の地面には複数の刃が這ったかのような地割れが次々とできている。
地面だけではなく空中にも黒い稲光がとめどなく走っている。
土埃が舞っているのはわかるが、二人の姿を捉えることができない。これが4半刻ほど続いている。互いが互いの存在を確かめあっているように、剣を打ち合っている。クロードがクストに指導をしている様に、クストがクロードに教えを乞うているように。
シェリーはもういいのではと思ってきた。そろそろ、終わりにしよう。そろそろ、本気を出してもらおう。
「グレイさんよく見ていてください。」
そう、グレイに声をかけ、普通なら姿を捉えることができないクロードを目で追って魔眼に魔力を込める。
「『動くな。』」
シェリーの言葉と共に姿が現れ、地面に倒れ込むクロード。
「このクソラースが!」
シェリーの仕業と瞬時に判断したクロードがシェリーに文句を言いながら、全身に魔力を帯びていく。
そのクロードにクストの剣が迫ってくる。
黒い雷を纏い全身が一回り大きくなったように見えた。いや、実際に体積が増えている。
「グォォォォー!」
目に見えない鎖を引きちぎるかのように前に進もうとする黒き獣。黒き雷光を放ち、シェリーの魔眼から逃れ、クストの剣を避け、シェリーに向かって四つ足の黒き獣が駆けてくる。
黒き獣がその瞳に赤い光を宿し、牙をシェリーに突き立てようと、鋭い牙が並んだ口を大きく開ける。
カイルが前に出ようとするのをシェリーは制し、腰の亜空間収納の鞄からとあるものを差し出した。
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