241 / 780
20章 趣味と実用性を兼ね備えたモノは奇怪な存在
230
しおりを挟む
陽子の言葉にグレイは黙り込んでしまった。確かにその時よりレベルが上がったが、以前剣を交えた聖剣ロビンに勝てるかと言われれば勝つことはできないと言えるだろう。
「なんの話だ?」
唯一、その時居なかったリオンから疑問を呈された陽子は未だに壁際に待機させていた数体の鎧の一体に声をかける。
「ロビン君こっちに来て」
すると首がない鎧が一体、陽子の側までガシャガシャと音を立てながらやってきた。
「これ聖剣ロビンのステータスを付与した鎧。魔力まで再現されていないけど、剣術は本人以上だよ。鬼くんが刺されたヤツだよね。」
「幾度かここに来てその名を聞くが何者だ?聖剣という者が存在した歴史は無かったはずだが?」
その言葉に陽子は首を傾げる。その存在を目にしたことのある陽子にしたら歴史では存在しないことになっていることが不思議なようだ。
「あれぇ?聖剣が存在しない?それっておかしくない?あんな強烈に印象が残る存在が?じゃ、あの歪んだ聖女様も?」
「歴史の改竄です。」
チェックをし終わったのか、シェリーが顔を上げて陽子に真っ赤になった紙の束を差し出してきた。
「おお、真っ赤だ。歴史の改竄かぁ。まぁ、私が言いたいのは、この鎧にすら勝てないのにドルロール遺跡のダンジョンに行くなんて陽子さんは許しません!」
陽子がロビン君と呼んだ鎧をコンと叩いて言った。
「それってあの暴君レイアルティス王のステータスをもった鎧もあるのか?」
オルクスが陽子に聞いてきた。そう、以前にオルクスが言っていた。暴君レイアルティス王ともう一度戦わせろと。
「ないよ。これさ、動力に魔石を使ってるから、魔力の再現ができないって言われたんだよね。だから、魔導師のレイアルティス王とかエリザベートのステータスの鎧はないんだよね。」
「ないのか。」
オルクスはとても残念そうに言うが陽子は壁際に待機させている別の鎧を指して
「あれならいいんじゃないかな?プラエフェクト将軍のステータスだよ。魔剣グラーシアも再現して欲しいと頼んでみたけど、趣味じゃないと断られてしまったんだよね。」
陽子の指した鎧を見たオルクスは顔を嬉しそうに歪めた。
「あれか。あれに足を持っていかれたんだよな。食後の運動にあれと戦わせてくれ。」
「いいよ。そのために、元のところに帰さずに待機させていたんだよね。」
陽子はニコリと笑った。そして、彼らにとって欲しい言葉も追加した。
「特別にこれらの鎧を行動不能にすれば、経験値をあげちゃうよ。なんたってここはダンジョンだからね。」
そして、シェリーは裏庭に連れてこられてしまっていた。シェリーはどうでもいい事だったので、行く必要はないと言ったのだが、陽子に引っ張って来られた。治療する要員は必要だと言われ・・・陽子も彼らが不死身の鎧に勝てるとは思っていないようだ。
一対一の形式で行うようなのだが、カイルはシェリーの隣にいる。陽子曰く、カイルが戦うと鎧自体を破壊されそうなので、後でオリバーのお小言が降ってきそうだから駄目だと判断したらしい。
「はい。はじめー。」
陽子が鎧に命令したことを開始するように言葉を放った。それと同時に金属と金属がぶつかる音が響く。
「狼くんとロビンとじゃ、やっぱり力の差は歴然だね。」
陽子がシェリーに話し掛けるもシェリーはこの場が時間の無駄だとすら思っている。
「えー。無視なの?ササッち。無視!」
「時間の無駄。」
「そう言わないよ。ほら、頑張っているじゃない。エルフの兄ちゃんはササッちが言っていたことを実行して失敗しているけど」
スーウェンは地面に穴を空けて落とすまでは良かったが、直ぐに鎧が跳躍して穴から飛び出してきた。
「普通の穴を空けるだけじゃ駄目なのはわかりますよね。」
「わからないんじゃないから、こうなっているんだよ。」
飛び出してきた鎧に攻撃され、スーウェンは魔術も紡ぐ暇も与えられず防戦一方のようだ。
「はぁ。地面を泥状化して沈めてから水分を抜くとか思わないのですか?あの筋肉うさぎの先祖のステータスですよ。」
「やっぱ魔導師は近接戦は不利だねぇ。一番にエルフの兄ちゃんが脱落だね。」
陽子がスーウェンに攻撃していた鎧に止まるように命令して、スーウェンを回収して鎧がこちらにやってきた。
死にかけた人物に更に戦うように強要した陽子も陽子だが、それを止めようとしなかったシェリーもシェリーだ。
シェリーはスーウェンの傷を治し、陽子に家の中に連れて行くように言う。
「やっぱ連戦はきつかったかなぁ。」
残りの3人の戦いを見ていた陽子がポソリと呟いた。
「でも、冒険者をしていると、こういう事はよくあるよね。一晩中、山の中を駆けることもあったしね。」
「私は結界を張って休みます。」
シェリーはカイルの言葉を否定したが、そもそもシェリーの結界のように強力な結界を張れる人物は皆無と言っていいだろう。
「なんの話だ?」
唯一、その時居なかったリオンから疑問を呈された陽子は未だに壁際に待機させていた数体の鎧の一体に声をかける。
「ロビン君こっちに来て」
すると首がない鎧が一体、陽子の側までガシャガシャと音を立てながらやってきた。
「これ聖剣ロビンのステータスを付与した鎧。魔力まで再現されていないけど、剣術は本人以上だよ。鬼くんが刺されたヤツだよね。」
「幾度かここに来てその名を聞くが何者だ?聖剣という者が存在した歴史は無かったはずだが?」
その言葉に陽子は首を傾げる。その存在を目にしたことのある陽子にしたら歴史では存在しないことになっていることが不思議なようだ。
「あれぇ?聖剣が存在しない?それっておかしくない?あんな強烈に印象が残る存在が?じゃ、あの歪んだ聖女様も?」
「歴史の改竄です。」
チェックをし終わったのか、シェリーが顔を上げて陽子に真っ赤になった紙の束を差し出してきた。
「おお、真っ赤だ。歴史の改竄かぁ。まぁ、私が言いたいのは、この鎧にすら勝てないのにドルロール遺跡のダンジョンに行くなんて陽子さんは許しません!」
陽子がロビン君と呼んだ鎧をコンと叩いて言った。
「それってあの暴君レイアルティス王のステータスをもった鎧もあるのか?」
オルクスが陽子に聞いてきた。そう、以前にオルクスが言っていた。暴君レイアルティス王ともう一度戦わせろと。
「ないよ。これさ、動力に魔石を使ってるから、魔力の再現ができないって言われたんだよね。だから、魔導師のレイアルティス王とかエリザベートのステータスの鎧はないんだよね。」
「ないのか。」
オルクスはとても残念そうに言うが陽子は壁際に待機させている別の鎧を指して
「あれならいいんじゃないかな?プラエフェクト将軍のステータスだよ。魔剣グラーシアも再現して欲しいと頼んでみたけど、趣味じゃないと断られてしまったんだよね。」
陽子の指した鎧を見たオルクスは顔を嬉しそうに歪めた。
「あれか。あれに足を持っていかれたんだよな。食後の運動にあれと戦わせてくれ。」
「いいよ。そのために、元のところに帰さずに待機させていたんだよね。」
陽子はニコリと笑った。そして、彼らにとって欲しい言葉も追加した。
「特別にこれらの鎧を行動不能にすれば、経験値をあげちゃうよ。なんたってここはダンジョンだからね。」
そして、シェリーは裏庭に連れてこられてしまっていた。シェリーはどうでもいい事だったので、行く必要はないと言ったのだが、陽子に引っ張って来られた。治療する要員は必要だと言われ・・・陽子も彼らが不死身の鎧に勝てるとは思っていないようだ。
一対一の形式で行うようなのだが、カイルはシェリーの隣にいる。陽子曰く、カイルが戦うと鎧自体を破壊されそうなので、後でオリバーのお小言が降ってきそうだから駄目だと判断したらしい。
「はい。はじめー。」
陽子が鎧に命令したことを開始するように言葉を放った。それと同時に金属と金属がぶつかる音が響く。
「狼くんとロビンとじゃ、やっぱり力の差は歴然だね。」
陽子がシェリーに話し掛けるもシェリーはこの場が時間の無駄だとすら思っている。
「えー。無視なの?ササッち。無視!」
「時間の無駄。」
「そう言わないよ。ほら、頑張っているじゃない。エルフの兄ちゃんはササッちが言っていたことを実行して失敗しているけど」
スーウェンは地面に穴を空けて落とすまでは良かったが、直ぐに鎧が跳躍して穴から飛び出してきた。
「普通の穴を空けるだけじゃ駄目なのはわかりますよね。」
「わからないんじゃないから、こうなっているんだよ。」
飛び出してきた鎧に攻撃され、スーウェンは魔術も紡ぐ暇も与えられず防戦一方のようだ。
「はぁ。地面を泥状化して沈めてから水分を抜くとか思わないのですか?あの筋肉うさぎの先祖のステータスですよ。」
「やっぱ魔導師は近接戦は不利だねぇ。一番にエルフの兄ちゃんが脱落だね。」
陽子がスーウェンに攻撃していた鎧に止まるように命令して、スーウェンを回収して鎧がこちらにやってきた。
死にかけた人物に更に戦うように強要した陽子も陽子だが、それを止めようとしなかったシェリーもシェリーだ。
シェリーはスーウェンの傷を治し、陽子に家の中に連れて行くように言う。
「やっぱ連戦はきつかったかなぁ。」
残りの3人の戦いを見ていた陽子がポソリと呟いた。
「でも、冒険者をしていると、こういう事はよくあるよね。一晩中、山の中を駆けることもあったしね。」
「私は結界を張って休みます。」
シェリーはカイルの言葉を否定したが、そもそもシェリーの結界のように強力な結界を張れる人物は皆無と言っていいだろう。
10
お気に入りに追加
1,014
あなたにおすすめの小説
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします
天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。
側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。
それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる