236 / 775
20章 趣味と実用性を兼ね備えたモノは奇怪な存在
225
しおりを挟む
数日間、シェリーはニールに押し付けられた依頼をこなしていた。ラース公国へ行きたくないが女神ナディアから来いと言われてしまったので行かなければならない。だが、行きたくない。
そろそろギルドに完了の報告とまた遠出をするとニールに言わなければならない。そんな事をキッチンで料理をしながらモヤモヤと考えていると『ッギャーー』っとグレイの悲鳴が聞こえてきた。
何事かとダイニングを覗くと首が床から生えている。その首はぐるりと辺りを見渡し、シェリーを見つけると
「ササッち!原案が出来た!」
と言ってきた。黒髪黒目の女性でダンジョンマスターをしている陽子だった。
「陽子さん。普通に出てきてください。」
シェリーがそう指摘すると「よっこいせ」と年寄り臭い掛け声と共に床から這い出てくる陽子。
「およ?初めましてがいるね?」
陽子はダイニングテーブルの席についていたリオンを目にして言葉を掛ける。しかし、床から出てきた陽子を見てリオンは思考停止しているようだ。
「何で床から出てくるんだ!心臓に悪いだろ!」
さっき悲鳴を上げていたグレイが陽子に文句を言っている。しかし、陽子は腰に手を当ててグレイを指差しながら
「私のダンジョンをまともに攻略できない狼くんが何を言っているのかな?それでドルロール遺跡のダンジョンに潜ろうだなんて笑っちゃうよね。」
と言っているがジーンズのズボンに毛が3本生えたオバケのキャラクターのTシャツを着た人物に偉そうに言われても、オバケのキャラクターに目がいってしまう。
「お前のダンジョンがおかし過ぎるんだ!」
グレイがそう言っている後ろで、椅子に座っているスーウェンとオルクスが頷いている。
「いやいや。ドルロール遺跡のダンジョンより断然マシだよね?ササッち。」
陽子はシェリーに同意を求めてきた。愚者の常闇とドルロール遺跡のどちらのダンジョンがマシかと聞かれても、そもそもダンジョンの目的が違うのだから比較のしようがない。だから、正直に答えた。
「どの基準で比較すればいいのかわかりません。」
「なんで?絶対マシだよ!私のダンジョンで死ぬことないよ!」
「その代わり進めなければ出ることができませんね。」
「致死的罠もないよ。」
「その代わりギミックを解除しないと進めませんね。」
「ぬぅ。私、魔眼の魔物を使うほど、頭おかしくない。」
「ああ、それは言えてますが、それがドルロール遺跡の存在意義ですから。」
「うぅぅぅ。これ計画書ぅ。」
シェリーの言葉に完全に打ちのめされてしまった陽子はシェリーに数枚の紙を手渡し、ダイニングテーブルの椅子に座り、いじける様にテーブル上に伸びてしまった。
「で、コイツは何者だ?」
リオンが陽子を見ながら聞いてきたが、シェリーは食事を作っている途中だったので、陽子から渡された計画書と言われた紙の束を横に置いて、キッチンに戻って行った。文句を言っていたグレイあたりが説明するだろう。
「ヨーコさんは何の計画書を持ってきたの?」
相変わらず狭いから入るなと言っているのに、お手伝いと言い張ってキッチンに入ってきているカイルから聞かれた。
「多分、新しいダンジョンの計画書でしょう。」
「え?なんでダンジョンを作るのにダンジョンマスターのヨーコさんがシェリーの意見を聞くの?」
最もな疑問である。ダンジョンマスターは自分のダンジョンを好きなように作る事ができるので他人の意見を聞く必要はないのだ。
シェリーはスープの具材を寸胴と言っていい鍋に入れながら答える。
「ダンジョンマスターは他人と関わる事はないですから、理由をつけて遊びに来ているだけです。それにここで何かあっても陽子さんを害する事はできませんから」
「ここがダンジョンだから?」
確かにこの家の一部はダンジョンだ。そのためダンジョンマスターを害する事ができないと。しかし、そのカイルの言葉にシェリーは否定の言葉を重ねる。
「いいえ。マスターが一人でここに来ることをダンジョンの方々が否定的でしたので、陽子さん専用の防衛機能を設置しています。」
ダンジョンマスターとして陽子がどれ程の力を持っているか分からないが、レベル100超えのシェリーとレベル200超えのオリバーが居るのだ。陽子は大丈夫だと言っても他の者たちからすれば、不安な事なのだろう。
そんな話をしているとダイニングの方が騒がしくなってきた。またしても『うぉー!』っとグレイが声をあげている。『やはり敵じゃないか!』なんてリオンの声も聞こえてきた。
しかし、シェリーは我関せずと唐揚げを揚げている。
「シェリー。何かあったようだけど?」
スープをかき混ぜながらカイルが聞いてきた。
「楽しそうに騒いでいるので、いいのでは?」
いや、楽しそうではなく隣のダイニングから緊張感が漂って来ていた。
そろそろギルドに完了の報告とまた遠出をするとニールに言わなければならない。そんな事をキッチンで料理をしながらモヤモヤと考えていると『ッギャーー』っとグレイの悲鳴が聞こえてきた。
何事かとダイニングを覗くと首が床から生えている。その首はぐるりと辺りを見渡し、シェリーを見つけると
「ササッち!原案が出来た!」
と言ってきた。黒髪黒目の女性でダンジョンマスターをしている陽子だった。
「陽子さん。普通に出てきてください。」
シェリーがそう指摘すると「よっこいせ」と年寄り臭い掛け声と共に床から這い出てくる陽子。
「およ?初めましてがいるね?」
陽子はダイニングテーブルの席についていたリオンを目にして言葉を掛ける。しかし、床から出てきた陽子を見てリオンは思考停止しているようだ。
「何で床から出てくるんだ!心臓に悪いだろ!」
さっき悲鳴を上げていたグレイが陽子に文句を言っている。しかし、陽子は腰に手を当ててグレイを指差しながら
「私のダンジョンをまともに攻略できない狼くんが何を言っているのかな?それでドルロール遺跡のダンジョンに潜ろうだなんて笑っちゃうよね。」
と言っているがジーンズのズボンに毛が3本生えたオバケのキャラクターのTシャツを着た人物に偉そうに言われても、オバケのキャラクターに目がいってしまう。
「お前のダンジョンがおかし過ぎるんだ!」
グレイがそう言っている後ろで、椅子に座っているスーウェンとオルクスが頷いている。
「いやいや。ドルロール遺跡のダンジョンより断然マシだよね?ササッち。」
陽子はシェリーに同意を求めてきた。愚者の常闇とドルロール遺跡のどちらのダンジョンがマシかと聞かれても、そもそもダンジョンの目的が違うのだから比較のしようがない。だから、正直に答えた。
「どの基準で比較すればいいのかわかりません。」
「なんで?絶対マシだよ!私のダンジョンで死ぬことないよ!」
「その代わり進めなければ出ることができませんね。」
「致死的罠もないよ。」
「その代わりギミックを解除しないと進めませんね。」
「ぬぅ。私、魔眼の魔物を使うほど、頭おかしくない。」
「ああ、それは言えてますが、それがドルロール遺跡の存在意義ですから。」
「うぅぅぅ。これ計画書ぅ。」
シェリーの言葉に完全に打ちのめされてしまった陽子はシェリーに数枚の紙を手渡し、ダイニングテーブルの椅子に座り、いじける様にテーブル上に伸びてしまった。
「で、コイツは何者だ?」
リオンが陽子を見ながら聞いてきたが、シェリーは食事を作っている途中だったので、陽子から渡された計画書と言われた紙の束を横に置いて、キッチンに戻って行った。文句を言っていたグレイあたりが説明するだろう。
「ヨーコさんは何の計画書を持ってきたの?」
相変わらず狭いから入るなと言っているのに、お手伝いと言い張ってキッチンに入ってきているカイルから聞かれた。
「多分、新しいダンジョンの計画書でしょう。」
「え?なんでダンジョンを作るのにダンジョンマスターのヨーコさんがシェリーの意見を聞くの?」
最もな疑問である。ダンジョンマスターは自分のダンジョンを好きなように作る事ができるので他人の意見を聞く必要はないのだ。
シェリーはスープの具材を寸胴と言っていい鍋に入れながら答える。
「ダンジョンマスターは他人と関わる事はないですから、理由をつけて遊びに来ているだけです。それにここで何かあっても陽子さんを害する事はできませんから」
「ここがダンジョンだから?」
確かにこの家の一部はダンジョンだ。そのためダンジョンマスターを害する事ができないと。しかし、そのカイルの言葉にシェリーは否定の言葉を重ねる。
「いいえ。マスターが一人でここに来ることをダンジョンの方々が否定的でしたので、陽子さん専用の防衛機能を設置しています。」
ダンジョンマスターとして陽子がどれ程の力を持っているか分からないが、レベル100超えのシェリーとレベル200超えのオリバーが居るのだ。陽子は大丈夫だと言っても他の者たちからすれば、不安な事なのだろう。
そんな話をしているとダイニングの方が騒がしくなってきた。またしても『うぉー!』っとグレイが声をあげている。『やはり敵じゃないか!』なんてリオンの声も聞こえてきた。
しかし、シェリーは我関せずと唐揚げを揚げている。
「シェリー。何かあったようだけど?」
スープをかき混ぜながらカイルが聞いてきた。
「楽しそうに騒いでいるので、いいのでは?」
いや、楽しそうではなく隣のダイニングから緊張感が漂って来ていた。
0
お気に入りに追加
1,016
あなたにおすすめの小説
婚約者が最凶すぎて困っています
白雲八鈴
恋愛
今日は婚約者のところに連行されていました。そう、二か月は不在だと言っていましたのに、一ヶ月しか無かった私の平穏。
そして現在進行系で私は誘拐されています。嫌な予感しかしませんわ。
最凶すぎる第一皇子の婚約者と、その婚約者に振り回される子爵令嬢の私の話。
*幼少期の主人公の言葉はキツイところがあります。
*不快におもわれましたら、そのまま閉じてください。
*作者の目は節穴ですので、誤字脱字があります。
*カクヨム。小説家になろうにも投稿。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
【完結】少年の懺悔、少女の願い
干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。
そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい――
なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。
後悔しても、もう遅いのだ。
※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。
※長編のスピンオフですが、単体で読めます。
聖女だけど、偽物にされたので隣国を栄えさせて見返します
陽炎氷柱
恋愛
同級生に生活をめちゃくちゃにされた聖川心白(ひじりかわこはく)は、よりによってその張本人と一緒に異世界召喚されてしまう。
「聖女はどちらだ」と尋ねてきた偉そうな人に、我先にと名乗り出した同級生は心白に偽物の烙印を押した。そればかりか同級生は異世界に身一つで心白を追放し、暗殺まで仕掛けてくる。
命からがら逃げた心白は宮廷魔導士と名乗る男に助けられるが、彼は心白こそが本物の聖女だと言う。へえ、じゃあ私は同級生のためにあんな目に遭わされたの?
そうして復讐を誓った心白は少しずつ力をつけていき…………なぜか隣国の王宮に居た。どうして。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラや攻略不可キャラからも、モテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる