153 / 775
13章 死の国
145
しおりを挟む
シェリーは氷の刃を作り、手首から肘にかけてザクリと傷をつける。その行動に反応を示した者達がいたが、視線で牽制をし、魔力と血を混ぜ合わせ、床に落としていく。
その赤い血は生きているかの如く、床を這いシェリーとルナティーノを中心として、四方八方に伸びていった。
それを見た王は目を細め
「ほう。よく知っているな、今じゃ使われなくなった契約法だろう。」
「王には普通の契約では意味をなしませんから。」
そう、神の神力で命を吹き込まれたルナティーノには人が使うような契約では縛ることができないのだ。
「ククク。神を承認者として立てるのか。どの神が我らの契約に立ち会うのか楽しみだ。」
シェリーが行おうとしている契約は神を承認者として立ち合わせるものだ。この契約を破ると神との契約を破ることに等しく相当重い神罰が下ると言われている契約法だ。
シェリーとルナティーノを中心に陣が描かれ、その周りには、それを見守る者達で囲まれている。
「これより、契約を施行する。この契約に立ち会う神の降臨を願いただき・・・。」
シェリーが神の降臨を願う文言の途中で血で描かれた陣が光り出した。シェリーは一瞬何が起こったか分からなかったが、その姿を見て、怪訝な表情になった。
白い髪に白い肌そして、白い金属を流したかのような目をした神は1柱しかいない。
「いやー。これ使っちゃう?今どきこの契約を使う事ってなくなっちゃったからね。」
シェリー曰く、謎の生命体がこの場に降臨したのだ。
「何をしに来たのですか?」
自分で神を喚んでおいて、その言い草は無いだろうとは思うが、シェリーはてっきり、死の神か闇の神が化現してくると思っていたのだ。しかし、現実は白き神と言われる謎の生命体がここに存在している。
今まで、この契約を見守ろうとしていた吸血鬼の者達もシェリーの番もシーラン王国からの使者も皆一様に床に伏している。この場に立っているのは、ルナティーノとシェリーと白き神のみだけであった。
「酷いね。呼び出されたから来てあげたのに。」
「てっきりモルテ様かオスクリダー様が来てくださると思っていましたが?」
「え?面白そうだったから?二人とも来たがっていたけど、割り込んじゃった。」
面白そうの一点張りで、多分見守っていた死の神と闇の神の間に割り込んで行ったのだろう。
「変更を要求します。」
「えー。僕で良くない?君もそう思うよね。」
白き神はルナティーノに尋ねるが、そのルナティーノは目を見開き白き神を見ている。そして、
「あなたが白き神ですか?我らを見捨てた神ですか?」
そのルナティーノの言葉に白き神はニコリと笑い
「見捨てた?僕が選んだ聖女をいじめ抜いて?僕が選んだ聖女の番を殺しておいて?僕がこの世界の為に役目を与えた聖女を魔人にしておいて、そんなことを言うのかな?」
笑っているがとても歪んだ笑顔である。白き神の神力が辺りに充満する。あちらこちらでうめき声が聞こえてくるが、白き神はそのまま言葉を続ける。
「確かに君たちに言葉を与えたよ。聖女を迎えて、世界の浄化を手伝ってあげてって言ったけど、それがどうして、王族との婚姻に繋がるのかな?聖女の力を一部の者しか与えられない環境に閉じ込めたのかな?ねぇ。どうしてかな?」
ルナティーノは言葉を紡げず、白き神の足元に伏すしかなかった。
「なんで、僕が君たちを助けなければならなかったのか、こっちが教えて欲しいぐらいだよ。」
「申し訳ありませんでした。」
「今更だよね。まぁ。君たちもそれなりの報いは受けたようだし、それにアークの呪いは強烈だったみたいだし。モルテとオスクリダーが創った人形があそこまで狂うなんて面白かったよ。君はエリザベートとは違うのだからね。」
「はい。」
アークと言う言葉が謎の生命体から出てきた。あの国境で見た、わからないモノの浄化した石に表示された『アークの贄』だ。多分聞いても答えてはくれなさそうなので、さっさとお帰り願おう。
「言いたいことを言ったのなら帰ってくれませんか?」
「僕に言いたいことをはっきり言うのはシェリーぐらいだよ。それじゃ、契約を見守ってあげるよ。」
何がそれじゃ、なのだろう。しかし、先程まで、この空間を支配していた神力はいつもどおりになっていた。
「はぁ。私、シェリーミディア・カークスはルナティーノ・トールモルテに対し番を贈る対価として、マルス帝国から手を引くことを望む。」
ルナティーノは床に伏したまま契約の言葉を言う。
「私、ルナティーノ・トールモルテはシェリーミディア・カークスの言に従う。」
あれ?これだと違う意味に取られてしまう。シェリーは慌てて、ルナティーノに問いただそうとしたが
「この契約を我が名において施行する。」
謎の生命体が先に契約施行を発言してしまった。その言葉に反応するかのように、陣が光り契約の完了を示された。そして、謎の生命体の声がシェリーの耳を掠める。
『死の国の王まで配下にしてしまうなんて流石だね。』
やはり、そのように捉えられてしまっていた。
その赤い血は生きているかの如く、床を這いシェリーとルナティーノを中心として、四方八方に伸びていった。
それを見た王は目を細め
「ほう。よく知っているな、今じゃ使われなくなった契約法だろう。」
「王には普通の契約では意味をなしませんから。」
そう、神の神力で命を吹き込まれたルナティーノには人が使うような契約では縛ることができないのだ。
「ククク。神を承認者として立てるのか。どの神が我らの契約に立ち会うのか楽しみだ。」
シェリーが行おうとしている契約は神を承認者として立ち合わせるものだ。この契約を破ると神との契約を破ることに等しく相当重い神罰が下ると言われている契約法だ。
シェリーとルナティーノを中心に陣が描かれ、その周りには、それを見守る者達で囲まれている。
「これより、契約を施行する。この契約に立ち会う神の降臨を願いただき・・・。」
シェリーが神の降臨を願う文言の途中で血で描かれた陣が光り出した。シェリーは一瞬何が起こったか分からなかったが、その姿を見て、怪訝な表情になった。
白い髪に白い肌そして、白い金属を流したかのような目をした神は1柱しかいない。
「いやー。これ使っちゃう?今どきこの契約を使う事ってなくなっちゃったからね。」
シェリー曰く、謎の生命体がこの場に降臨したのだ。
「何をしに来たのですか?」
自分で神を喚んでおいて、その言い草は無いだろうとは思うが、シェリーはてっきり、死の神か闇の神が化現してくると思っていたのだ。しかし、現実は白き神と言われる謎の生命体がここに存在している。
今まで、この契約を見守ろうとしていた吸血鬼の者達もシェリーの番もシーラン王国からの使者も皆一様に床に伏している。この場に立っているのは、ルナティーノとシェリーと白き神のみだけであった。
「酷いね。呼び出されたから来てあげたのに。」
「てっきりモルテ様かオスクリダー様が来てくださると思っていましたが?」
「え?面白そうだったから?二人とも来たがっていたけど、割り込んじゃった。」
面白そうの一点張りで、多分見守っていた死の神と闇の神の間に割り込んで行ったのだろう。
「変更を要求します。」
「えー。僕で良くない?君もそう思うよね。」
白き神はルナティーノに尋ねるが、そのルナティーノは目を見開き白き神を見ている。そして、
「あなたが白き神ですか?我らを見捨てた神ですか?」
そのルナティーノの言葉に白き神はニコリと笑い
「見捨てた?僕が選んだ聖女をいじめ抜いて?僕が選んだ聖女の番を殺しておいて?僕がこの世界の為に役目を与えた聖女を魔人にしておいて、そんなことを言うのかな?」
笑っているがとても歪んだ笑顔である。白き神の神力が辺りに充満する。あちらこちらでうめき声が聞こえてくるが、白き神はそのまま言葉を続ける。
「確かに君たちに言葉を与えたよ。聖女を迎えて、世界の浄化を手伝ってあげてって言ったけど、それがどうして、王族との婚姻に繋がるのかな?聖女の力を一部の者しか与えられない環境に閉じ込めたのかな?ねぇ。どうしてかな?」
ルナティーノは言葉を紡げず、白き神の足元に伏すしかなかった。
「なんで、僕が君たちを助けなければならなかったのか、こっちが教えて欲しいぐらいだよ。」
「申し訳ありませんでした。」
「今更だよね。まぁ。君たちもそれなりの報いは受けたようだし、それにアークの呪いは強烈だったみたいだし。モルテとオスクリダーが創った人形があそこまで狂うなんて面白かったよ。君はエリザベートとは違うのだからね。」
「はい。」
アークと言う言葉が謎の生命体から出てきた。あの国境で見た、わからないモノの浄化した石に表示された『アークの贄』だ。多分聞いても答えてはくれなさそうなので、さっさとお帰り願おう。
「言いたいことを言ったのなら帰ってくれませんか?」
「僕に言いたいことをはっきり言うのはシェリーぐらいだよ。それじゃ、契約を見守ってあげるよ。」
何がそれじゃ、なのだろう。しかし、先程まで、この空間を支配していた神力はいつもどおりになっていた。
「はぁ。私、シェリーミディア・カークスはルナティーノ・トールモルテに対し番を贈る対価として、マルス帝国から手を引くことを望む。」
ルナティーノは床に伏したまま契約の言葉を言う。
「私、ルナティーノ・トールモルテはシェリーミディア・カークスの言に従う。」
あれ?これだと違う意味に取られてしまう。シェリーは慌てて、ルナティーノに問いただそうとしたが
「この契約を我が名において施行する。」
謎の生命体が先に契約施行を発言してしまった。その言葉に反応するかのように、陣が光り契約の完了を示された。そして、謎の生命体の声がシェリーの耳を掠める。
『死の国の王まで配下にしてしまうなんて流石だね。』
やはり、そのように捉えられてしまっていた。
10
お気に入りに追加
1,016
あなたにおすすめの小説
婚約者が最凶すぎて困っています
白雲八鈴
恋愛
今日は婚約者のところに連行されていました。そう、二か月は不在だと言っていましたのに、一ヶ月しか無かった私の平穏。
そして現在進行系で私は誘拐されています。嫌な予感しかしませんわ。
最凶すぎる第一皇子の婚約者と、その婚約者に振り回される子爵令嬢の私の話。
*幼少期の主人公の言葉はキツイところがあります。
*不快におもわれましたら、そのまま閉じてください。
*作者の目は節穴ですので、誤字脱字があります。
*カクヨム。小説家になろうにも投稿。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
聖女だけど、偽物にされたので隣国を栄えさせて見返します
陽炎氷柱
恋愛
同級生に生活をめちゃくちゃにされた聖川心白(ひじりかわこはく)は、よりによってその張本人と一緒に異世界召喚されてしまう。
「聖女はどちらだ」と尋ねてきた偉そうな人に、我先にと名乗り出した同級生は心白に偽物の烙印を押した。そればかりか同級生は異世界に身一つで心白を追放し、暗殺まで仕掛けてくる。
命からがら逃げた心白は宮廷魔導士と名乗る男に助けられるが、彼は心白こそが本物の聖女だと言う。へえ、じゃあ私は同級生のためにあんな目に遭わされたの?
そうして復讐を誓った心白は少しずつ力をつけていき…………なぜか隣国の王宮に居た。どうして。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラや攻略不可キャラからも、モテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍化決定
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる