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13章 死の国
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シェリーが目を開けると、目の前にカイルの顔が・・・。4人とも寝ていたシェリーの周りにいるようだ。
「何ですか?もう時間ですか?」
シェリーのいつも通りの言葉に4人はホッとため息を吐く。
「ご主人様に何者かが接触したようでしたから、急いで起こしたのです。時間的にはそれ程経っていません。」
スーウェンの魔術か何かに反応したのだろう。シェリーを抱き寄せているカイルが心配そうにシェリーの頬を撫でる。
「何があったのかな?」
「モルテ様に喚ばれただけなので問題ありません。ああ、スーウェンさんアイラ嬢から血を少々貰って来てください。傷は綺麗に治してください。」
シェリーは半分眠りながら、先程モルテに言われた血液の確保をスーウェンに頼む。
「モルテ様?一体どういうことですか?」
いきなりアイラの血を取るように言われたスーウェンは戸惑いをみせた。
「必要なので・・・。」
そう言ってシェリーは再び眠りについた。
カイルside
「え?用件を言っただけ?」
グレイが寝ているシェリーを見ながら言う。どうやら、今回はあの白き高位なる存在ではなく、この国の住人達が崇めている死の神からの接触があったようだ。
「モルテ様ってこの国の王ということですか?」
確かに、その名前だけでは王の名と勘違いしそうだ。外交を担っているレガートスという男もモルテが死の神の名だとは言っていない。
「モルテ様という方はこの国が崇める神の1柱らしい。その神がシェリーに何かを頼んだみたいだね。」
しかし、何者かがシェリーに接触した場合、シェリーを起こせばいいと思っていたが、声を掛けても体を揺すっても起きないなんて、やはり神に逆らうことは出来ないのだろうか。
終いには、シェリーの口を使って話し出したのだ。
『そこまで心配をせずとも良い。聖女に頼み事をしているだけだ。カカカ。』
シェリーの声ではなく、深く闇を纏ったような重い声の持ち主だった。あれが死の神の声だとしたら納得はできるが、いとも簡単に番に接触されるなんて腹立たしいことだ。
「カイル。シェリーが風邪を引いたら困るから、落ち着いてくれないか?」
また、グレイに注意をされた。はぁ。番のことになると魔力の制御がおろそかになるのは、なんとかしなければならないな。
シェリーside
シェリーは黒髪にラース公国で正装に当たる赤いドレス姿で、レガートスの迎えを待っていた。なぜ、赤いドレスか。カウサ神教国であったモルテ国に対する牽制だ。
カウサ神教国に対して唯一屈服しなかったのがラース公国であり、幾度も神の名のもとに侵攻してきたカウサ神教国の神兵を退けて続けたのもラース公国のみであった。
ラースの魔眼を持ったシェリーが赤いドレスで正装することで、相手に敬意を示すと共に威嚇の意味も込められているのだ。
ブライからレガートスの迎えが来たと言われ、宿の外に出ると、アイラ嬢が詰め込まれている黒い馬車と並ぶようにレガートスが用意した黒い馬車が宿の前に停められていた。シェリーの姿を見たレガートスは目を細めニヤリと笑った。無言のまま馬車の扉が開けられ、中に入るように促される。
シェリーは奥側の席に座り、その隣に正装をしたカイルが座った。グレイ、オルクス、スーウェンは各自の騎獣で向かう事を前もって決めていたので、同乗はしない。シェリーの向かい側の席にレガートスが座り、馬車が動き出す。
「その色のドレスは魔女エリザベートを思い出します。王を訪ねによくこられていましたが、かの魔女も亡くなってから随分と年月が流れました。」
レガートスがシェリーの姿を見て、魔女エリザベートの名を出した。魔女も好んで赤いドレスを着ていたようだ。
「そうですか。赤は女神の色ですから。」
「ええ。憎らしい程辛酸を舐めさせられ、一向に屈服ぜず、だた一人の魔眼持ちに大敗を喫した、ラースの女神の色ですね。これはわざとですか?」
レガートスは吐き捨てるように言う。
「ええ。そちらの対応次第で、こちらもそれなりの用意があると言うことです。」
それに対してシェリーはいつもと変わらず淡々と答える。すべてはあなた達次第だと。
「くくく。我らと対等に交渉でもしようと言うのですか?ただの人族が?」
「その為に手土産を持って来たと言っていいでしょう。」
レガートスは笑う。とても楽しそうに笑う。
「ははは。貴女が何を提示してくるか楽しみにしておきますよ。本当にこんなにもおかしな事を我らに言いだすのは魔女以来ですよ。」
そのレガートスの言葉と共に馬車も停止した。どうやら、城に着いたようだ。馬車の扉が外から開き、先にレガートスが降り、次いでカイルが外に出る。最後にシェリーがカイルに手を取られながら地面に降り立った。
「何ですか?もう時間ですか?」
シェリーのいつも通りの言葉に4人はホッとため息を吐く。
「ご主人様に何者かが接触したようでしたから、急いで起こしたのです。時間的にはそれ程経っていません。」
スーウェンの魔術か何かに反応したのだろう。シェリーを抱き寄せているカイルが心配そうにシェリーの頬を撫でる。
「何があったのかな?」
「モルテ様に喚ばれただけなので問題ありません。ああ、スーウェンさんアイラ嬢から血を少々貰って来てください。傷は綺麗に治してください。」
シェリーは半分眠りながら、先程モルテに言われた血液の確保をスーウェンに頼む。
「モルテ様?一体どういうことですか?」
いきなりアイラの血を取るように言われたスーウェンは戸惑いをみせた。
「必要なので・・・。」
そう言ってシェリーは再び眠りについた。
カイルside
「え?用件を言っただけ?」
グレイが寝ているシェリーを見ながら言う。どうやら、今回はあの白き高位なる存在ではなく、この国の住人達が崇めている死の神からの接触があったようだ。
「モルテ様ってこの国の王ということですか?」
確かに、その名前だけでは王の名と勘違いしそうだ。外交を担っているレガートスという男もモルテが死の神の名だとは言っていない。
「モルテ様という方はこの国が崇める神の1柱らしい。その神がシェリーに何かを頼んだみたいだね。」
しかし、何者かがシェリーに接触した場合、シェリーを起こせばいいと思っていたが、声を掛けても体を揺すっても起きないなんて、やはり神に逆らうことは出来ないのだろうか。
終いには、シェリーの口を使って話し出したのだ。
『そこまで心配をせずとも良い。聖女に頼み事をしているだけだ。カカカ。』
シェリーの声ではなく、深く闇を纏ったような重い声の持ち主だった。あれが死の神の声だとしたら納得はできるが、いとも簡単に番に接触されるなんて腹立たしいことだ。
「カイル。シェリーが風邪を引いたら困るから、落ち着いてくれないか?」
また、グレイに注意をされた。はぁ。番のことになると魔力の制御がおろそかになるのは、なんとかしなければならないな。
シェリーside
シェリーは黒髪にラース公国で正装に当たる赤いドレス姿で、レガートスの迎えを待っていた。なぜ、赤いドレスか。カウサ神教国であったモルテ国に対する牽制だ。
カウサ神教国に対して唯一屈服しなかったのがラース公国であり、幾度も神の名のもとに侵攻してきたカウサ神教国の神兵を退けて続けたのもラース公国のみであった。
ラースの魔眼を持ったシェリーが赤いドレスで正装することで、相手に敬意を示すと共に威嚇の意味も込められているのだ。
ブライからレガートスの迎えが来たと言われ、宿の外に出ると、アイラ嬢が詰め込まれている黒い馬車と並ぶようにレガートスが用意した黒い馬車が宿の前に停められていた。シェリーの姿を見たレガートスは目を細めニヤリと笑った。無言のまま馬車の扉が開けられ、中に入るように促される。
シェリーは奥側の席に座り、その隣に正装をしたカイルが座った。グレイ、オルクス、スーウェンは各自の騎獣で向かう事を前もって決めていたので、同乗はしない。シェリーの向かい側の席にレガートスが座り、馬車が動き出す。
「その色のドレスは魔女エリザベートを思い出します。王を訪ねによくこられていましたが、かの魔女も亡くなってから随分と年月が流れました。」
レガートスがシェリーの姿を見て、魔女エリザベートの名を出した。魔女も好んで赤いドレスを着ていたようだ。
「そうですか。赤は女神の色ですから。」
「ええ。憎らしい程辛酸を舐めさせられ、一向に屈服ぜず、だた一人の魔眼持ちに大敗を喫した、ラースの女神の色ですね。これはわざとですか?」
レガートスは吐き捨てるように言う。
「ええ。そちらの対応次第で、こちらもそれなりの用意があると言うことです。」
それに対してシェリーはいつもと変わらず淡々と答える。すべてはあなた達次第だと。
「くくく。我らと対等に交渉でもしようと言うのですか?ただの人族が?」
「その為に手土産を持って来たと言っていいでしょう。」
レガートスは笑う。とても楽しそうに笑う。
「ははは。貴女が何を提示してくるか楽しみにしておきますよ。本当にこんなにもおかしな事を我らに言いだすのは魔女以来ですよ。」
そのレガートスの言葉と共に馬車も停止した。どうやら、城に着いたようだ。馬車の扉が外から開き、先にレガートスが降り、次いでカイルが外に出る。最後にシェリーがカイルに手を取られながら地面に降り立った。
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