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10章 ササキとシェリー
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オルクスはカイルの勧めでシーラン王国の南にあるダンジョンに向かった。
「そこのダンジョンは30階層までだけどなかなか面白いから行ってみるといいよ。1日10階層ごとに攻略して行けば3日で終わらせられる。そうすれば、イーリスクロム陛下が言っていた5日は間に合うよ。」
そのカイルの言葉に乗ってオルクスはダイニングを飛び出して行き、それに続いてグレイとスーウェンも出ていった。
「カイルさん意地悪ですね。あそこのダンジョンは力技のゴリ押しで何とかなるところではないですよ。」
佐々木が言うようにそのダンジョンの名は『愚者の常闇』。愚か者はそのダンジョンからは抜け出せないという意味の名だ。
「グレイが付いて行ったから大丈夫だと思うよ。彼、神の加護を受けているよね。だから、4日ぐらいで攻略できるんじゃないかな?」
グレイの神の加護もちろんあの白い神のことではない。女神ナディアの加護『女神の寵愛』を授けられている。グレイの危機感知能力に特にその加護があらわれており、何かと回避されている。例えば、昨日のことでも、あのままエルフを警戒しエルフの側に居続けていたなら、あの謎の生命体からの神力を直接受け、いまごろ壊れていたかもしれない。
そんな、グレイが付いて行ったから大丈夫だとカイルは言うが、女神の加護でなんとかなるとは佐々木には思えない。
「まぁ。どうなろうと、私にもシェリーにも関係のないことです。5日の内にイーリスクロム陛下からの結果を受け、モルテ国に行くだけですから。」
佐々木は食器の後片付けが終わったため、自室に戻るが・・・。佐々木は後ろを振り向き
「カイルさんはいつまで付いて来るつもりですか?私は休みたいのですけど?」
「ずーっと。一緒にいたいから付いて行くよ。」
カイルに笑顔で言われるが、部屋の前で言われる言葉ではない。
「ここは私の部屋ですが?」
「知っているよ。」
佐々木は仕方がなく部屋のドアを開け、中に入る。何の為に結界を張っていたのかわからない。カイルはオリバーに言って中に入れる様になってしまい、昨日の朝にオルクスに壊されてしまったし、何一つ思い通りなっていないこの現状に頭を抱えたくなってくる。
スーツの上着をソファに投げ捨て、ベッドに潜り込む。
ギシリとベッドが鳴り、カイルが覗き込んできた。
「ねぇ、ササキさん。あの高位なる存在から何を言われたの?」
佐々木はカイルのその言葉に飛び起き、胸ぐらを掴む。
「さっきから、その言葉に私が苛立っている事をわかってて言っていますよね。嫌がらせですか?」
カイルは胸ぐらを掴まれているのにも関わらず、そのまま佐々木を抱きしめる。
「それも知っているよ。でも、オリバーさんが言っていたように、ササキさんの居場所はここだから、ササキさんの家族のルークもオリバーさんもそして俺もここにいるから、ここが帰って来るところだということを忘れないで。」
オリバーが確かにそのような事を言っていた。私の居場所・・・。私の居場所があの世界に無いぐらいは分かっていた。しかし、あのように見せつけられてしまえば、嫌でも理解してしまう。
死んだ人間がいつまで過去に囚われ続けているのだと。お前の家族はお前など必要としていなのだと。悲しい、悔しい、私が歩めなかった未来の姿に別の女性がいることが恨めしい。
カイル side
ササキは泣きながら寝てしまった。次に目覚めたときにはいつものシェリーに戻っていることだろう。
しかし、シェリーは規格外のスキル能力を持っていると思っていたが、それすら抑制された力に過ぎなかったなんて己の番はなんて愛おしいのだろうか。
竜人族の番が他種族の場合に一番気をつけなければならないのが、他種族の脆さだ。竜人族の番の話で有名な逸話がある。人族の娘を番として見つけた瞬間、喜びのあまり力の限り抱きしめ、骨を砕き内蔵を潰し、血と骨と肉塊になった番を見て狂ってしまった竜人族の話だ。
破壊者だと言ったササキに感じた力は結界越しでも凄まじものであった。あの大剣を持ったエルフは己と同じぐらいのレベルの者だと思ったがそのエルフの使う大剣をいとも簡単に往なしているササキの姿をみて、歓喜に打ち震えた。己を聖女の番としてあてがった、あの高位なる存在に感謝をしたぐらいだ。
あの高位なる存在。ササキに何を言ったのか。何を見せたのかわからないが、あの慟哭のような叫び声が今も心に突き刺さる。何モノにも淡々と話すシェリーが、強い意志で己を見るササキが叫び続けたのだ。よっぽどの事があったのだろう。先程も聞いてみたが答えてはもらえなかった。
家族として過ごすオリバーでさえ聞きだせなかった事を己如きでは聞き出せるとは思っていなかったが。
しかし、シェリーが己の腕の中にいるというのに、あの高位なる存在はササキを彼女のいた世界に連れて行ったと、いとも簡単に連れて行かれたとササキは言っていた。側にいればいいと思っていたが、本当にいつか彼女が元の世界を選んでしまったら、連れて行かれてしまうのではないのだろうか。
「そこのダンジョンは30階層までだけどなかなか面白いから行ってみるといいよ。1日10階層ごとに攻略して行けば3日で終わらせられる。そうすれば、イーリスクロム陛下が言っていた5日は間に合うよ。」
そのカイルの言葉に乗ってオルクスはダイニングを飛び出して行き、それに続いてグレイとスーウェンも出ていった。
「カイルさん意地悪ですね。あそこのダンジョンは力技のゴリ押しで何とかなるところではないですよ。」
佐々木が言うようにそのダンジョンの名は『愚者の常闇』。愚か者はそのダンジョンからは抜け出せないという意味の名だ。
「グレイが付いて行ったから大丈夫だと思うよ。彼、神の加護を受けているよね。だから、4日ぐらいで攻略できるんじゃないかな?」
グレイの神の加護もちろんあの白い神のことではない。女神ナディアの加護『女神の寵愛』を授けられている。グレイの危機感知能力に特にその加護があらわれており、何かと回避されている。例えば、昨日のことでも、あのままエルフを警戒しエルフの側に居続けていたなら、あの謎の生命体からの神力を直接受け、いまごろ壊れていたかもしれない。
そんな、グレイが付いて行ったから大丈夫だとカイルは言うが、女神の加護でなんとかなるとは佐々木には思えない。
「まぁ。どうなろうと、私にもシェリーにも関係のないことです。5日の内にイーリスクロム陛下からの結果を受け、モルテ国に行くだけですから。」
佐々木は食器の後片付けが終わったため、自室に戻るが・・・。佐々木は後ろを振り向き
「カイルさんはいつまで付いて来るつもりですか?私は休みたいのですけど?」
「ずーっと。一緒にいたいから付いて行くよ。」
カイルに笑顔で言われるが、部屋の前で言われる言葉ではない。
「ここは私の部屋ですが?」
「知っているよ。」
佐々木は仕方がなく部屋のドアを開け、中に入る。何の為に結界を張っていたのかわからない。カイルはオリバーに言って中に入れる様になってしまい、昨日の朝にオルクスに壊されてしまったし、何一つ思い通りなっていないこの現状に頭を抱えたくなってくる。
スーツの上着をソファに投げ捨て、ベッドに潜り込む。
ギシリとベッドが鳴り、カイルが覗き込んできた。
「ねぇ、ササキさん。あの高位なる存在から何を言われたの?」
佐々木はカイルのその言葉に飛び起き、胸ぐらを掴む。
「さっきから、その言葉に私が苛立っている事をわかってて言っていますよね。嫌がらせですか?」
カイルは胸ぐらを掴まれているのにも関わらず、そのまま佐々木を抱きしめる。
「それも知っているよ。でも、オリバーさんが言っていたように、ササキさんの居場所はここだから、ササキさんの家族のルークもオリバーさんもそして俺もここにいるから、ここが帰って来るところだということを忘れないで。」
オリバーが確かにそのような事を言っていた。私の居場所・・・。私の居場所があの世界に無いぐらいは分かっていた。しかし、あのように見せつけられてしまえば、嫌でも理解してしまう。
死んだ人間がいつまで過去に囚われ続けているのだと。お前の家族はお前など必要としていなのだと。悲しい、悔しい、私が歩めなかった未来の姿に別の女性がいることが恨めしい。
カイル side
ササキは泣きながら寝てしまった。次に目覚めたときにはいつものシェリーに戻っていることだろう。
しかし、シェリーは規格外のスキル能力を持っていると思っていたが、それすら抑制された力に過ぎなかったなんて己の番はなんて愛おしいのだろうか。
竜人族の番が他種族の場合に一番気をつけなければならないのが、他種族の脆さだ。竜人族の番の話で有名な逸話がある。人族の娘を番として見つけた瞬間、喜びのあまり力の限り抱きしめ、骨を砕き内蔵を潰し、血と骨と肉塊になった番を見て狂ってしまった竜人族の話だ。
破壊者だと言ったササキに感じた力は結界越しでも凄まじものであった。あの大剣を持ったエルフは己と同じぐらいのレベルの者だと思ったがそのエルフの使う大剣をいとも簡単に往なしているササキの姿をみて、歓喜に打ち震えた。己を聖女の番としてあてがった、あの高位なる存在に感謝をしたぐらいだ。
あの高位なる存在。ササキに何を言ったのか。何を見せたのかわからないが、あの慟哭のような叫び声が今も心に突き刺さる。何モノにも淡々と話すシェリーが、強い意志で己を見るササキが叫び続けたのだ。よっぽどの事があったのだろう。先程も聞いてみたが答えてはもらえなかった。
家族として過ごすオリバーでさえ聞きだせなかった事を己如きでは聞き出せるとは思っていなかったが。
しかし、シェリーが己の腕の中にいるというのに、あの高位なる存在はササキを彼女のいた世界に連れて行ったと、いとも簡単に連れて行かれたとササキは言っていた。側にいればいいと思っていたが、本当にいつか彼女が元の世界を選んでしまったら、連れて行かれてしまうのではないのだろうか。
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