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8章 赤い呪いと青い呪い

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 シェリーは半泣きの状態で折り鶴を折っていた。炎王から送られた千代紙をシェリーのツガイ共に選んでもらい折っていた。
 4人が不思議そうにシェリーが折っている姿を見ている。一番最初に白地に青色の長四角が組合わさった『檜垣ひがき』を選んだスーウェンの守りのまじないを作り、次に白地に黄色の四角が交互に合わさった『市松』でオルクスに作り、白地に赤色の葉っぱの模様が合わさった『麻の葉』でグレイに作り、最後に紺地に白色の直線で六芒星を網目のように書かれた『籠目かごめ』でカイルに作った。後、王太子には波が重なるように合わさった『青海波せいがいは』で、守りのまじないを作った。

 千代紙を選ぶ時点でも四人はもめた。なぜなら、黒色の千代紙が一つも無いからだ。
 これは元々、ルークと折り紙で遊ぶ為に取り寄せた物なのだから、無い色は確かにある。そして、何故かルークは黒を好んで使っていたため、黒の千代紙は全く無いのだ。
 4人は黒色が無いことに苛立ちを表していたが、シェリーが「黒はルーちゃんが全部使ったからないです。」と言えば、納得してくれたらしい。

 その後は、4人がシェリーの手元をずっと見ているという感じで、シェリーはとても居心地が悪かった。
 4人に出来たものを渡せば満足してくれたようで、ピリピリした空気は霧散していた。
 折り紙は所詮は紙だ。水に濡れてヨレヨレになればいいとシェリーは思うのだった。

 しかし、思ったよりも時間が掛かってしまった。もう、昼近くになってしまった。軍部に行くのは早い方がよかったのだが、家から出られなかったので仕方がない。

「私は軍部に行くので、付いて来ないでください。」

 先程と同じ台詞を言ってシェリーは立ち上がったが

「シェリーが行くなら行く。」

 とグレイが言えば

「ご主人様を一人で行かせるわけにはいきませんよ。」

 とスーウェンが言い

「番を見失うといけないから一緒に行く。」

 とオルクス。最後にカイルが

「シェリー、一緒に行こうね。」

 4人とも付いて来るようだ。スーウェンとオルクスは言葉の端々にツガイがいなくなった事へのトラウマが垣間みえる。
 シェリーはため息を吐き席を離れた。軍部は第一層にあるため普通ならそれなりの洋装をしなければいけないのだが、シェリーは普段着のまま出掛けようとする。別によそ行きの服装が無いわけではない。ルークの用件で呼び出されたときは訪問用のドレスを着たのに、第一層に行くのに普段着のままだというのは少々問題があるように思えるが、シェリー自身はそれで構わないようだ。

 シェリーは家から大通りに出て歩いて、西第一層門を目指す。これも、普通の事ではない。貴族しか住んでいない第一層に、歩いて向かう人などいないのだ。
 第一層門は強固な扉で隔てられ、わざわざ扉を開閉してもらわなければ、通ることができない。歩いて門まで来たシェリーに門兵は怪訝な顔をしている。

「お久しぶりです。軍部に用があるので通してもらえますか?」

「自分は何も聞いていませんので開ける事は出来かねます。」

「ちっ。」

 シェリーは舌打ちをした。いつも軍部に用があるときは騎士団広報のサリーからの呼び出しが殆どなので、サリーが門兵に連絡をいれてくれているのだ。

「緊急案件で第2師団長にお伺いをしなければならないことがありますので通してもらえますか?」

「ダメです。」

「では、軍部から要請があっても私はこの国にはいないので聖女候補の件はそちらで解決してくださいと、第2師団長にお伝えください。」

「は?ちょっと、待ってくれ!副師団長ヤバイっす。俺じゃダメっす。対処出来ないっす。」

 門兵が大声で叫びながら門兵専用の出入口へ入って行った。少し待つと先程の門兵と青い髪の青狼獣人が出てきた。西第ニ層門に詰めている第6師団長の血族だと思われるが容姿は全く似ていない。しかし、シェリーはその人物を見た瞬間、顔に怒りを顕にし

「このクソ狐!よくもわたしの前に顔をだせるな!」

 と、イケメンの青狼獣人の顔を殴り付けた。狼獣人をクソ狐と言ったのはどういうことだろうか。
 しかし、シェリーに殴られ地面に横たわっていたのは長い金髪で顔はよくわからないが、頭からは先程よりも一回り大きな三角の耳に、一本だった尻尾は九本に増えていた。

「へ、陛下!!」

 先程の門兵がシェリーに殴られた人物を陛下と叫びながら起こしていた。
 そう、先程シェリーが殴った人物はこの国の王だったのだ。
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