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8章 赤い呪いと青い呪い
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シェリーは夢を見ていた。夢だと理解している。なぜなら、目の前にいる少女はもう自分と同じぐらいに大きくなっているはずなのだ。長い黒髪を背中に流し、金色の目をキラキラと輝かせ、着物に似た赤い衣服で地面に座り込みシェリーの手元を見ている。
『そなたの手は凄いなぁ。こんなかわいい物が作れるなんて』
シェリーに話し掛ける少女の頭には白つめ草で作った花冠が黒髪にかかっており、白い小さな2本の角で支えている。そう、彼女は人族ではなく鬼族なのだ。
シェリーは出来上がった紙風船に息を吹き込み少女に手渡す。折り紙で作った小さな紙風船だ。
少女は紙風船を受け取り、手のひらを空に向けお手玉の様に打ち始めた。そんな、少女を呼ぶ声がする。少女は立ち上がり呼ばれた方へ駆けて行った。
『母上!父上!見てくだされ。わらわは花の妖精になったぞ。』
少女の両親だろう。微笑ましげに少女の話に耳を傾ける。シェリーにとっては眩しい光景だ。黒髪の少女に黒髪の両親。もし、シェリーが聖女の子供ではなく・・・そんなありもしないことを言っても仕方がないことだ。
『お?懐かしい折り鶴じゃないか。』
シェリーが少女にせがまれ作った折り紙の一つが持ち上げられた。顔を向ければ、少女と同じ黒髪に琥珀色の目で、少女似た感じだが、違うのは頭の横から伸びた2本の角の先が分かれているところだろうか。この、特徴を持つ人物は一人しかいない。龍族でありこの国の初代の王、炎王ただ一人だ。
シェリーは視る確かにその通りのようだ。
『はじめまして、炎王。私は佐々木と申します。』
『うえ?あ、ああ。俺はカミ『その名は名乗らなくて大丈夫です。』』
『もし、名乗れば世界に絡め取られますよ。』
『何故か、恐ろしい言葉に聞こえるな。人族の佐々木さんがこの国にどうして来たんだ?この国ではその髪は目立つだろ?』
そうなのだ、この炎国は黒を持つ種族が多く暮らしている。他の国では黒を持つ種族も生きにくい時代があり、この国に逃げて来たのだ。
『今はこのような色ですが、私は黒髪ですよ。黒を持つ人族は普通いませんから。』
『そうか。そうか。じゃ、俺の子になるか?ここで、暮らせばいい。』
そういう炎王の瞳の中には悲しみに満ちていた。きっと炎王も黒を持つことでいろいろあったのだろう。
『いいえ。わたしにはかわいい弟がいるので、弟の親と暮らして行きます。』
『弟の親?佐々木さんの親ではなく?』
『あの、勇者と聖女を親と思えと?』
『うぉ。寒気が・・・。召喚された勇者の子か。それで黒髪か。じゃ、どうしてこの国に来たんだ?』
『金髪のわたしが意味をなしているか調べるために。』
『全く意味がわからん。』
『私、銀紙に包まれた棒アイスが食べたいです。』
『意味がわからん上に催促された。』
そう言いながらも、何かを操作する動作をして、シェリーに銀紙で包まれた四角い棒アイスを渡してくれた。佐々木という女性が子供の頃、祖母の家で食べた懐かしい棒アイスだ。シェリーは食べながら答える。自分が今代の聖女であること、聖女として課せられた使命をやらなければならないこと、そして、自分のツガイが5人いること。
『うえ?5人?そ、それは大変だな。』
『勇者の番狂いは聞いていますか?』
『ああ、グローリアとラースが大変になった悪災。』
『先代の聖女のツガイは3人でした。それで、その状況。なら、わたしの場合は世界大戦級ですよね。』
『ああ。』
『ですので、ツガイだと分からないようにしてみました。本当に微笑ましい家族ですよね。』
シェリーの目には先程の少女の家族が幸せそうに笑っている光景が映っている。
『もしかして、アイツか?』
炎王が指した先には一人の鬼族の男性がいた。
『わたしには得られることがない。家族の姿ですね。』
シェリーは質問には答えず、その光景を視線から外し、先程の食べたアイスの銀紙にクリーンを掛け、真四角にしてから鶴を折り始めた。
『なぁ。ここに住んではどうだ?』
『わたしのすべきことは世界の浄化です。島国のここにいてはそれも難しいでしょう。』
折り鶴が出来上がり、ここも用が無くなったので、帰ろうすれば、体が持ち上がった。
『なぜ、人族の子供がここにいる?』
少女に似た男性に持ち上げられていた。
『そなた、花冠を作ってくれたお礼にお昼を一緒に食べよう。』
足元で先程の少女が声をかけてきた。
『わたしはそろそろ帰ります。』
『よいよい。皆で一緒に食べよう。佐々木さんが食べたい物を出してあげるよ。』
炎王が余計なことを言ってしまった。ここで、炎王にNOを言える人物なんていない。
『はぁ。ちらし寿司とあんみつ。』
『ははは。ちらし寿司はいいね。』
『人の子はササキサンと言うのか?』
シェリーを未だに抱えている男性から問われる。
『炎王にはそう名乗りましたが、こちらではシェリーです。』
『シェリーと言うのか、シェリー、一緒に暮らさないか?』
『は?』
男性が満面の笑みで尋ねてきた。魔道具の効力がきいていないのか?
_____________
来ていただきまして、ありがとうございます。
もし、別の連載中の『俺にとってこの異世界は理不尽すぎるのでは?』を読んでいる読者様がいらっしゃるのであれば、色々ネタバレして申し訳ありません(汗)
本当ならこの時点で、30話で終わっている予定でした。全然、終わらなかった・・・。
そして、次話にもネタバレがあり・・・。申し訳ございません。
『そなたの手は凄いなぁ。こんなかわいい物が作れるなんて』
シェリーに話し掛ける少女の頭には白つめ草で作った花冠が黒髪にかかっており、白い小さな2本の角で支えている。そう、彼女は人族ではなく鬼族なのだ。
シェリーは出来上がった紙風船に息を吹き込み少女に手渡す。折り紙で作った小さな紙風船だ。
少女は紙風船を受け取り、手のひらを空に向けお手玉の様に打ち始めた。そんな、少女を呼ぶ声がする。少女は立ち上がり呼ばれた方へ駆けて行った。
『母上!父上!見てくだされ。わらわは花の妖精になったぞ。』
少女の両親だろう。微笑ましげに少女の話に耳を傾ける。シェリーにとっては眩しい光景だ。黒髪の少女に黒髪の両親。もし、シェリーが聖女の子供ではなく・・・そんなありもしないことを言っても仕方がないことだ。
『お?懐かしい折り鶴じゃないか。』
シェリーが少女にせがまれ作った折り紙の一つが持ち上げられた。顔を向ければ、少女と同じ黒髪に琥珀色の目で、少女似た感じだが、違うのは頭の横から伸びた2本の角の先が分かれているところだろうか。この、特徴を持つ人物は一人しかいない。龍族でありこの国の初代の王、炎王ただ一人だ。
シェリーは視る確かにその通りのようだ。
『はじめまして、炎王。私は佐々木と申します。』
『うえ?あ、ああ。俺はカミ『その名は名乗らなくて大丈夫です。』』
『もし、名乗れば世界に絡め取られますよ。』
『何故か、恐ろしい言葉に聞こえるな。人族の佐々木さんがこの国にどうして来たんだ?この国ではその髪は目立つだろ?』
そうなのだ、この炎国は黒を持つ種族が多く暮らしている。他の国では黒を持つ種族も生きにくい時代があり、この国に逃げて来たのだ。
『今はこのような色ですが、私は黒髪ですよ。黒を持つ人族は普通いませんから。』
『そうか。そうか。じゃ、俺の子になるか?ここで、暮らせばいい。』
そういう炎王の瞳の中には悲しみに満ちていた。きっと炎王も黒を持つことでいろいろあったのだろう。
『いいえ。わたしにはかわいい弟がいるので、弟の親と暮らして行きます。』
『弟の親?佐々木さんの親ではなく?』
『あの、勇者と聖女を親と思えと?』
『うぉ。寒気が・・・。召喚された勇者の子か。それで黒髪か。じゃ、どうしてこの国に来たんだ?』
『金髪のわたしが意味をなしているか調べるために。』
『全く意味がわからん。』
『私、銀紙に包まれた棒アイスが食べたいです。』
『意味がわからん上に催促された。』
そう言いながらも、何かを操作する動作をして、シェリーに銀紙で包まれた四角い棒アイスを渡してくれた。佐々木という女性が子供の頃、祖母の家で食べた懐かしい棒アイスだ。シェリーは食べながら答える。自分が今代の聖女であること、聖女として課せられた使命をやらなければならないこと、そして、自分のツガイが5人いること。
『うえ?5人?そ、それは大変だな。』
『勇者の番狂いは聞いていますか?』
『ああ、グローリアとラースが大変になった悪災。』
『先代の聖女のツガイは3人でした。それで、その状況。なら、わたしの場合は世界大戦級ですよね。』
『ああ。』
『ですので、ツガイだと分からないようにしてみました。本当に微笑ましい家族ですよね。』
シェリーの目には先程の少女の家族が幸せそうに笑っている光景が映っている。
『もしかして、アイツか?』
炎王が指した先には一人の鬼族の男性がいた。
『わたしには得られることがない。家族の姿ですね。』
シェリーは質問には答えず、その光景を視線から外し、先程の食べたアイスの銀紙にクリーンを掛け、真四角にしてから鶴を折り始めた。
『なぁ。ここに住んではどうだ?』
『わたしのすべきことは世界の浄化です。島国のここにいてはそれも難しいでしょう。』
折り鶴が出来上がり、ここも用が無くなったので、帰ろうすれば、体が持ち上がった。
『なぜ、人族の子供がここにいる?』
少女に似た男性に持ち上げられていた。
『そなた、花冠を作ってくれたお礼にお昼を一緒に食べよう。』
足元で先程の少女が声をかけてきた。
『わたしはそろそろ帰ります。』
『よいよい。皆で一緒に食べよう。佐々木さんが食べたい物を出してあげるよ。』
炎王が余計なことを言ってしまった。ここで、炎王にNOを言える人物なんていない。
『はぁ。ちらし寿司とあんみつ。』
『ははは。ちらし寿司はいいね。』
『人の子はササキサンと言うのか?』
シェリーを未だに抱えている男性から問われる。
『炎王にはそう名乗りましたが、こちらではシェリーです。』
『シェリーと言うのか、シェリー、一緒に暮らさないか?』
『は?』
男性が満面の笑みで尋ねてきた。魔道具の効力がきいていないのか?
_____________
来ていただきまして、ありがとうございます。
もし、別の連載中の『俺にとってこの異世界は理不尽すぎるのでは?』を読んでいる読者様がいらっしゃるのであれば、色々ネタバレして申し訳ありません(汗)
本当ならこの時点で、30話で終わっている予定でした。全然、終わらなかった・・・。
そして、次話にもネタバレがあり・・・。申し訳ございません。
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