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7章 教会の聖女候補と世界の聖女

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 意気消沈してしまった小隊長に村に来た経緯と村に入った時の状況を説明し、後は軍に調査をしてもらうことになった。間の過程は飛ばしているが、その事はシェリー達の口から上ることはないだろう。


 そして、日が暮れてから王都メイルーンのギルドに帰ってきた。

「と言うわけだったのです。」

「さっぱり分からん。」

 特殊依頼の受付に座っていたニールはシェリー達を朝に使用していた小会議室に案内し、話を聞いていた。話を進める程ニールの眉間のシワが深くなっていった。ここにいるのは、シェリーとカイルとスーウェンだけで、グレイはオルクスが冒険者登録をすると言い出したので、付き添い兼見張りのため付いていったのだ。
 因みにシェリーはスーウェンの膝の上に座っている。

「なぜ、そもそも村人が6人の全て男しかいなかったんだ。」

「さあ?それを調べるのが軍の仕事でしょう。冒険者家業ではありません。」

「カイルお前はどう思うんだ。村の様子を見たんだろ?」

「そうだね。争った形跡はあちらこちらに在ったから何かに襲われたかな。でも、6人の生きている村人以外人がいなかったから不思議だよね。」

「遺骸ってことだろ?最近、魔物の凶暴化が酷くなる一方だから、その辺りに何か住み着いているのか?」

「それを調べるのも軍に任せればいいです。」

「ああ、聖女候補の件どうするか。」

 ニールはため息を吐き、眉間を指でもみだした。

「教会に『ダメでした。』と言えば済む話では?」

「聖女候補を聖女として大々的にお披露目する場を設けたいらしい。」

「そんなもの、教会が聖女です。って言えばいいのでは?」

「実績だ。実績が欲しんだとよ。」

「それなら、聖女ビアンカみたいに公都に侵入してきたキメラを一瞬で蒸発させた、みたいなことをすれば一発じゃないですか。」

「それ、絶対聖魔術ではなく光魔術だよな。」

「普通の人からみれば、魔物が一瞬で消えたことには変わらないじゃないですか。奇跡の御業です。」

「詐欺だ、それは詐欺じゃないか。」

「教会が好きそうなことを提案してみたのですが?」

「くっ。」

 横を見ればカイルが吹き出していた。何やらツボにはまったらしく、横を向きながら肩が揺れていた。「ふふふ。」と後ろからも声が聞こえることから、スーウェンも笑っているみたいだ。

「カイルさんもスーウェンさんも教会らしいやり方だと言っていますので、それを提案されてはいかがです?ニールさん。」

「言ってはないだろ。そんなこと提案できるわけないだろ。腐っても教会だぞ。」

 くくく。ははは。ともう押さえきれなかった声が漏れ出ている二人を横目に

「大丈夫です。聖女ビアンカが成した奇跡の御業なんですから。そして、凶暴化した魔物1体が聖女の手によっていなくなるのです。ニールさんはその案件を教会側に持って行って、そうですね。討伐に第2師団の団長さんに付き合ってもらえればいいのではないのですか?あの御姉様方に大人気の白鳥人のキラキラ天使。絵的に聖女と天使として教会の売り倍増でいけます。」

「シェリー。それは面白いね。くくく。」

 カイルの笑いの含んだ声が答えた。

「それ、絶対に師団長が嫌がるヤツじゃないか。」

 ニールは椅子の背もたれに体を預け、天井を仰ぎ見る。

「嬢ちゃん、師団長が嫌がったら嬢ちゃんの名前出していいか?」

「ニールさん。乗り気になりました?」

「最近は魔物の討伐依頼が多くてな、聖女様に行ってもらう案件なんてあれぐらいしかなかったんだ。で、目の前の聖女様は村で何を仕出かしたんでしょうか?」

 シェリー無表情だった顔に不快感が表れる。

「誰が聖女のことをニールさんに言ったのですかね。」

「カイルが嬉しそうに話してくれたぞ。」

「ふーん。そうですか。今の村の状態は問題ないとだけ言っておきます。」

「聖女様は偽物の聖女様のことはそのままでいいのですかね。」

「ニールさん。その言葉使い気持ち悪いです。」

「はん。一応敬意を払ってみたんだが?で、どうなんだ?」

「さあ、教会が聖女様と認めれば聖女なら、一般人である、わたしがとやかく言うことではないですよね。」

「嬢ちゃんのどこが一般人なんだ?一般人は弟のために門兵を殴ったりはしない。問題を起こしておいて、連行されて行った先の第5師団を壊滅させたりしない。第一王子に喧嘩を売ったりはしない。」

「情報早いですね。第一王子はこの前のことなのですが。」

 はぁと思わずニールがため息を吐く。

「じゃ、聖女様は放置でいいんだな。」

「いいですよ。世界が決めた聖女ではなく、人が勝手に決めた聖女なので、わたしには関係がありません。」

「了解。教会にはそう提案しておくことにするか。」

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