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6章 王都メイルーン
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結界が壊れた。相当強固に作ってもらったはずなのに。シェリーは目の前の人物より、結界が壊れてしまったことの方が重要だった。
「オリバー、オリバー、結界が壊れた。」
そう言いながら、オリバーの研究室に走って行くシェリー。
「俺の番はどこだ。」
といいなが屋敷の中を走る、侵入者。
「あの結界って壊れたんだね。」
というカイルに対して頷くグレイとスーウェンがいた。
屋敷の奥にある地下へと続く階段をシェリーは得体の知れない生物を蹴り倒しながら進んでいき、階段突き当たりのドアを開け中に入る。その部屋の中にはなんとも言えないモノが散乱しているが、それには構わず、長椅子で寝ているオリバーを見つけ揺さぶり起こす。
「一体なんだね。人が寝ているのに起こすなんて。」
「け、結界が壊された。」
シェリーは涙目でオリバーに訴える。
「早く直して、もう嫌だ。」
シェリーはパニック状態に陥っていた。ツガイが三人もいる時点でキャパオーバーなのに、四人目が押し掛けてきて、シェリーの心の支えであった結界を壊してしまったのだ。
「おお、これはキレイに壊されたね。誰がやったのかな。」
「脳筋猫。」
「ああ、豹獣人族の彼か流石だね。」
「早く直してよー。」
シェリーは子供が駄々をこねるように泣いていた。いや。子供のままのシェリーが泣いていた。
オリバーは自分の子であるルークがこのように泣いているのを見ることはよくあったのだが、幼い頃から大人と言っていいほど、しっかりとしたシェリーがこのように泣くのを初めて見た。オリバーは少し考え、シェリーを子供を抱き上げるように片腕に乗せ
「おいたが過ぎたようだね。少し反省してもらおうか。」
そう言いながら、泣いているシェリーと共に部屋を出た。
そして、リビングの床の上で簀巻き状態の侵入者が転がっていた。黄色に黒が斑に混じった髪に丸みをおびた耳が出ており、黄色い目がギラギラを目の前の人物を睨みつけている。少しくたびれているが、ギラン共和国の傭兵が着ている軍服から延びた太い独特の柄が入って尻尾がバシバシと床を打ち受けていた。
「人の屋敷に勝手に入ってきて、反省の色はないのかい?」
睨み付けられているのは、屋敷中を侵入者然で荒らし回っていた彼の人物を捕らえ、リビングまで引きずってきたオリバーだ。ソファーに座るオリバーの膝の上でシェリーは未だにオリバーに抱きつき泣いていた。
そして、番の三人はそんなシェリーを見てオロオロしている。
「俺の番を探していただけだ。」
「番の為なら人の家に侵入してもよいと?まあ、反省の色が見られないから、このまま、共和国の総統閣下の部屋まで君を送ってあげるよ。」
「ちょっと待ってくれ、俺の番が」
「こうやって、世界の楔から放たれた者の視線からみるとなんて愚かな行動だと、改めて思うよ。まるで、過去の自分を見せつけられているかのようだ。」
「何が愚かなんだ。」
「シェリーの言うとおりだ、番とは最早、呪いと言っていいのではないのか。」
4人の視線がオリバーに刺さる。
「おお。怖。言っておくけど、俺は殺しても死なないからな。俺が死を迎える時はシェリーと一緒だ。だから、俺を殺したければ、君たちの番であるシェリーを殺すことだね。」
4人の殺気がオリバーに向かう、その煽りもシェリーも受けてしまい、ビクリと体が動いてしまった。
「どういうことだ。」
カイルのオリバーに対する殺意を乗せた低い声が響く。
「簡単な話だ。殺された俺は聖女様にこの世に連れ戻されたが、聖人であった俺は聖女様に従属し、扱き使われているっていうことだ。」
「扱き使っていないし。」
それに対してはシェリーがボソリと反論する。
「聖女。俺の番は聖女なのか?」
「そうそう、聖女だから五人の番がいるんだと。それが嫌だから、結界を張って見つからない様にしていたのに、君が結界を壊したせいでその聖女様がパニックになってしまってね。もう、これは番嫌いが悪化してるなぁ。」
「番が5人。どういうことだ、番は唯一、俺の対のはずだ。」
「俺の番だった聖女は3人の番がいた。そして、聖女の番だった一人に俺は殺され番の楔から放たれた。君に選択肢を2つ示そう。このまま俺におとなしくギラン共和国まで転移させられるか、ここで死んで聖女様に生き返してもらい、番の楔から解き放たれるか。どちらがよい?」
オリバーの魔力がうねるように、この場を支配する。聖女ビアンカの番として選ばれることだけはあり、その力は勇者に匹敵する。
「・・・ギラン共和国へ一旦帰ることにして出直してくる。」
「いいのかい?番というものから解放されると煩いことが一気に解消するよ。」
「番がいなくなるのだけはダメだ。」
「そうかい。残念だね。じゃ、さようなら。」
オリバーの魔力が侵入者に向かっていき、そこにいた人物は、その場から消えた。
「オリバー、オリバー、結界が壊れた。」
そう言いながら、オリバーの研究室に走って行くシェリー。
「俺の番はどこだ。」
といいなが屋敷の中を走る、侵入者。
「あの結界って壊れたんだね。」
というカイルに対して頷くグレイとスーウェンがいた。
屋敷の奥にある地下へと続く階段をシェリーは得体の知れない生物を蹴り倒しながら進んでいき、階段突き当たりのドアを開け中に入る。その部屋の中にはなんとも言えないモノが散乱しているが、それには構わず、長椅子で寝ているオリバーを見つけ揺さぶり起こす。
「一体なんだね。人が寝ているのに起こすなんて。」
「け、結界が壊された。」
シェリーは涙目でオリバーに訴える。
「早く直して、もう嫌だ。」
シェリーはパニック状態に陥っていた。ツガイが三人もいる時点でキャパオーバーなのに、四人目が押し掛けてきて、シェリーの心の支えであった結界を壊してしまったのだ。
「おお、これはキレイに壊されたね。誰がやったのかな。」
「脳筋猫。」
「ああ、豹獣人族の彼か流石だね。」
「早く直してよー。」
シェリーは子供が駄々をこねるように泣いていた。いや。子供のままのシェリーが泣いていた。
オリバーは自分の子であるルークがこのように泣いているのを見ることはよくあったのだが、幼い頃から大人と言っていいほど、しっかりとしたシェリーがこのように泣くのを初めて見た。オリバーは少し考え、シェリーを子供を抱き上げるように片腕に乗せ
「おいたが過ぎたようだね。少し反省してもらおうか。」
そう言いながら、泣いているシェリーと共に部屋を出た。
そして、リビングの床の上で簀巻き状態の侵入者が転がっていた。黄色に黒が斑に混じった髪に丸みをおびた耳が出ており、黄色い目がギラギラを目の前の人物を睨みつけている。少しくたびれているが、ギラン共和国の傭兵が着ている軍服から延びた太い独特の柄が入って尻尾がバシバシと床を打ち受けていた。
「人の屋敷に勝手に入ってきて、反省の色はないのかい?」
睨み付けられているのは、屋敷中を侵入者然で荒らし回っていた彼の人物を捕らえ、リビングまで引きずってきたオリバーだ。ソファーに座るオリバーの膝の上でシェリーは未だにオリバーに抱きつき泣いていた。
そして、番の三人はそんなシェリーを見てオロオロしている。
「俺の番を探していただけだ。」
「番の為なら人の家に侵入してもよいと?まあ、反省の色が見られないから、このまま、共和国の総統閣下の部屋まで君を送ってあげるよ。」
「ちょっと待ってくれ、俺の番が」
「こうやって、世界の楔から放たれた者の視線からみるとなんて愚かな行動だと、改めて思うよ。まるで、過去の自分を見せつけられているかのようだ。」
「何が愚かなんだ。」
「シェリーの言うとおりだ、番とは最早、呪いと言っていいのではないのか。」
4人の視線がオリバーに刺さる。
「おお。怖。言っておくけど、俺は殺しても死なないからな。俺が死を迎える時はシェリーと一緒だ。だから、俺を殺したければ、君たちの番であるシェリーを殺すことだね。」
4人の殺気がオリバーに向かう、その煽りもシェリーも受けてしまい、ビクリと体が動いてしまった。
「どういうことだ。」
カイルのオリバーに対する殺意を乗せた低い声が響く。
「簡単な話だ。殺された俺は聖女様にこの世に連れ戻されたが、聖人であった俺は聖女様に従属し、扱き使われているっていうことだ。」
「扱き使っていないし。」
それに対してはシェリーがボソリと反論する。
「聖女。俺の番は聖女なのか?」
「そうそう、聖女だから五人の番がいるんだと。それが嫌だから、結界を張って見つからない様にしていたのに、君が結界を壊したせいでその聖女様がパニックになってしまってね。もう、これは番嫌いが悪化してるなぁ。」
「番が5人。どういうことだ、番は唯一、俺の対のはずだ。」
「俺の番だった聖女は3人の番がいた。そして、聖女の番だった一人に俺は殺され番の楔から放たれた。君に選択肢を2つ示そう。このまま俺におとなしくギラン共和国まで転移させられるか、ここで死んで聖女様に生き返してもらい、番の楔から解き放たれるか。どちらがよい?」
オリバーの魔力がうねるように、この場を支配する。聖女ビアンカの番として選ばれることだけはあり、その力は勇者に匹敵する。
「・・・ギラン共和国へ一旦帰ることにして出直してくる。」
「いいのかい?番というものから解放されると煩いことが一気に解消するよ。」
「番がいなくなるのだけはダメだ。」
「そうかい。残念だね。じゃ、さようなら。」
オリバーの魔力が侵入者に向かっていき、そこにいた人物は、その場から消えた。
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