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2章 闇と勇者と聖女

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 幻想的な光景だ。金色に輝く女性の周りには小さな光の塊がゆるりと空へ向かって行く。ただこの美しい光景を目にできたのは、結界の内にいるカイルだけだった。

 シェリーは浄化ではなく昇華を行った。シェリー自身は浄化という行為自体、好きではなかった。
 黒いモヤは人々の心の欠片だ。その心を真っ白に何も無かった状態に還すのはいささか不満でもあった。
 なので昇華という選択をした。固体から気体への変化ではなく、心の強い思い、憎しみ、悲しみ、苦しみを高尚な対象への心に還すことにしたのだ。
 あの、謎の生命体も人々の心を知ればいいのだ。
 しかし、対象が塊で存在するのなら術を組むのは簡単なことだが、広範囲の街全体となると、今までの聖女が使用してきた浄化の方が術の発動効率がいい。ジレンマだ。今は両方を用途に合わせて使用しているのが現実だ。

 すべてのひかりが空へと還り、ひかり輝く空が夕闇の空へと戻った。

「カイルさんさっさとここを離れますよ。騒がれるのは嫌なんで。」

「そうだね。大通りの結界の外には人が集まっているみたいだから、そこの路地から抜けようか。」

 そう言って、シェリーの後ろの狭い道を指す。シェリーは踵を返して走り出す。それにカイルも続く。

「結界の端にたどり着くまで結界は維持します。」

 二人は1キロメル先の結界の端まで進み、結界を解く。
 少し様子を見るがこちらに来るものはいないようだ。そのまま細い路地を進み、大通りに出る。素知らぬ顔でそのまま北の門から出ていった。


 辺りは暗くなり、都市から10キロメル北に進んだところで騎獣を降り、今日はここで休むことにする。
  野営の設置はいつも通り、結界を張って、テント置いて終了である。
 中に入るとシェリーはソファーに倒れ込んだ。流石に最後の次元の悪魔との戦いは予測不可能の事だったので、体力的にも精神的にも疲れたのだ。

 今回の悪魔は頭がない分、雑魚の部類だ。飛びもしないし、知恵があるわけではない。ただ武力のみで構成された存在。
 もう少し、自分だけでいけると思っていた。現実は足止めのみ、他の創ったスキル使用していないが、あまり差は無いように思える。シェリー自身も凶悪ではないかと思う程のスキルを創ったがやはり、この世界と違うもので外郭を構成された悪魔では威力が半減してしまうようだ。あの謎の生命体のいうツガイの力が必要なのか。

「ままならない。」


「シェリー、疲れてしまった?保管庫に作り置きしてあった食事を温めたけど食べる?」

「保管庫はわたし以外開けれない様になっていたはずですが?」

「オリバーさんに言って開けられるようにしてもらったよ。」

「いつの間に」

 保管庫は冒険者の依頼で何日か家を開けなければならないとき、シェリーがいなくても栄養バランスのとれた食事をルークに食べてもらうために、オリバーに無理難題を言って作ってもらった物だ。
 箱形の外見に一枚扉、タブレットのような画面が付いている。何がどれだけ入っているか子供でも分かるように画像表示できるのだ。
 勝手に持ち出しても他人が開閉不可能の機能と時間停止機能も着けさせた。
 時間停止機能がついているが、シェリーはルークには美味しいご飯を食べて欲しいため、温かいまま保管庫に入れるより、一旦冷まして、味を染み込ませた方が美味しいものは冷えたままいれているのだ。だから温めるという工程が発生してくる。

「こっちに持って来たから、食べさせてあげるよ。」

 横を見ればローテーブルに食事が並んでいる。スープにポテトサラダ、唐揚げ、手羽先の甘辛煮、しぐれ煮・・・ごはんが欲しくなるメニューだ。

「自分で食べます。」

 保管庫からおひつごはんを取り出し、茶碗と箸も一緒に持って行く。

「それ、この前食べた変わった穀物だね。俺にも入れて。」

「炎国では普通に食べられています。」

「わざわざ海を渡って炎国に行こうと思わないよ。あそこは自分達の種族しか認めていないし。」

「セイルーン竜王国もわざわざ海を渡って行きたいとは思いませんよ。炎国の方がまだ商船の行き来が可能な距離です。」

「シェリーとはセイルーン竜王国で一緒に暮らしたいな。」

「啓示があれば行きますが、そこまで命かけて行きたいとは思いません。ルーちゃんの幸せを影から支えるのがわたしの使命ですから。」

「相変わらすルークへの愛が重たいね。嫉妬するよ。」

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
来ていただきましてありがとうございます。
お気に入り評価していただきました読者様
感謝を申し上げます。


本日、『乙女ゲームの世界じゃないの?』を公開しました。


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