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120 愛しています
しおりを挟む「好きですよ」
「ソフィーのことは?」
「好き」
「ルードのことは?」
「好き」
「サリ殿のことは?」
「ばぁちゃん、大好き」
「····」
何故に無言。今の質問はいったい何の意味があったのか?
私が首を捻っていると、部屋の扉がいきなりガチャっと開いてメリーローズが顔を出した。
「お主ら!まどろっこしいのじゃ!ここは妾が!」
と叫んで、誰かに後ろに引っ張られたのか、姿が見えなくなり、扉が閉まった。
何でメリーローズがここにいるのだろう。
「なんでメリーローズがいるの?」
「いや、話の続きをしてくれ」
このなんとも言えない雰囲気で、さっきの話の続きだって?メリーローズがここに何故いるのかは後でいい。まずはジュウロウザが何を聞きたかったということだ。
あの時に私が好きだと言った事を聞いていなかったとは思えない。
シンセイからは多分私があの場で好きだとジュウロウザに言った事を注意されたのだと思うから、シンセイに聞こえていたということは、ジュウロウザに聞こえていなかったことはないだろう。
ジュウロウザを仰ぎ見て、考える。うん、好きだという想いに変わりはない。では、何がダメだったのだろう。
······よし!わかった。
「ジュウロウザ、好きですよ。ジュウロウザに頭を撫ぜられると心が温かくなるから好き。私が迷惑をかけても、こうして気遣ってくれるのは嬉しいと思うし、だから、これからも私の側に居て欲しい」
私はジュウロウザの左手をとって両手で包む。いつも私を支えてくれる大きな手だ。
そして、ジュウロウザに向かって微笑む。
「モナはジュウロウザを愛しています」
一世一代の告白だ!私の思いの丈をぶつけたのだから、これで文句はないだろう!
······
何故に返事が無い。扉の向こうが騒がしい。特にメリーローズ!
何が『直撃ズキューン』だ。意味がわからない。
ジュウロウザは無言のまま私の頭を撫でて、立ち上がったあと、扉の方におもむき開ける。すると、数人が雪崩のように部屋に崩れて入ってきた。
っていうか、シンセイ以外のメリーローズ、ルアンダ、シュリーヌ····ルナまでもいる!なんでいるの?意味がわからないのだけど?
「出ていけ」
ジュウロウザが一言発すると蜘蛛の子を散らすように、4人が出ていった。確かにここは離れだから部屋の数は多めにあるけど、もしかして彼女たちはここに泊まっている?
顔を赤くさせたジュウロウザが戻ってきた。そして、私を抱きしめる。
「本当は村に戻ってから言うつもりだったのだが」
ああ、あの時言いそうになった死亡フラグね。
「モナ。愛している。だから、俺と夫婦になってくれないか?」
おふっ!まさに死亡フラグ!あの時口を塞いで正解だった。
ジュウロウザはそう言って、私の髪に何かをつけた。なんだろう?
ふふふ、ジュウロウザから贈り物だなんて、嬉しいな。
「はい、嬉しいです」
あ、おかしな返答をしてしまった。こういう場合はYesだけでいいんだよね。心の声が混じってしまった。
そのあと、一通りの説明をして、常闇の君が女神の欠片の夫である創造神であることをわかってもらえた。あと、エルドラードの愚策に忠告をしていたとも付け加えた。
常闇の君は常識がありそうなのに、なぜエルドラードはあんな感じになってしまったのか。あれではエルドラードの一部で創られたリアンも歪むよね。
そして、私はジュウロウザに手を恋人つなぎに握られ、部屋から居間の方に移動した。そう、ジュウロウザとは手を握る事ができたのだ!
カウチソファに座る私の目の前には大人の姿のメリーローズ。剣士の動きやすそうな姿から布地の旅人の服装になったルアンダ。際どい踊り子の服装から、布地の多めの踊り子の服装になったシュリーヌ。聖女見習いの服装のままのルナ。4人がこの場にいた。
「姫。またしても不甲斐ない老兵をゆるしてくだされ」
その4人の前にはシンセイが床に跪いていた。不甲斐なくないから。シンセイは頑張ってくれたよ。
「シンセイさんはちゃんと守ってくれましたよ。だから、不甲斐なくありません」
「ぷーぷー」
と、ノアールもそうだと言わんばかりに私の膝の上で鳴いている。
「で、なんでここに4人がいるわけ?」
私の質問に一番に答えたのが、ルナだった。
「あんたにお礼が言いたかったのよ。それとお金があまりないのよ!」
お礼が言いたかったと言うには偉そうだな。
「あんたのおかげで目が覚めたわ。元々のわたしの目的を忘れるところだった。わたしはリアンを利用して聖女になることが目的だったのに、いつの間にかルルドに行くことが目的になってしまっていたわ」
「ご両親のことはいいの?」
「良くないけど、今の私じゃ行けないって事がよくわかったから、お父さんとお母さんは必ず生きているって信じることにしたの」
そう言って、ルナは立ち上がった。
「私は絶対に聖女になってセイト様の側に立ってみせるんだからね」
そう言って、ルナはここを出ていった。私に聖女になる宣言をしたかっただけのようだ。でも、セイトって誰?
「私とルアンダでありますが」
今度はシュリーヌが話しだした。
「二人で歌い手と踊り子として世界中を旅してみようと思っているのであります」
ああ、だから二人はそんな格好になったのか。うん。その格好の方がいいと思う。
そして、二人は立ち上がって私に頭を下げてきた。
「この度は私達を助けていただきましてありがとうございました。助けていただいたこの生命は自分のなすべきことを成したいと思っているのであります」
そう言って二人も背を向けてここを去って行った。去り際に『私達の力が必要となればお呼び下さい』と言葉を残して。
ここに残ったのはメリーローズだけだ。私はメリーローズに視線を向ける。すると、メリーローズが立ち上がり、『これを見るのじゃ!』そう言って、ゴスロリのレース増々のドレスの裾を持ち上げ、生足を見せつける。
あー。メリーローズの左足には金色の花びらが散っていた。
「妾も守護者となったからのぅ」
いや、これ以上守護者はいらないでしょ。お帰りをお願いします。
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