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48 凍りついた神殿
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「神殿?」
ジュウロウザが首を傾げて地図を見る。地図には何も記載はない。なぜなら、今では忘れられた神殿だからだ。
「冬の女神の神殿です。ここなら、神の加護があるので魔物が入ってきません」
「そういうことか、なら俺たちも出発しようか」
いつの間にか広げていた料理器具が片付けられており、あとはベルーイに乗ればいいだけになっていた。
おお、私が思考の海に没していた間にジュウロウザが片付けてくれていたようだ。
私はジュウロウザにお礼を言って、ベルーイに近寄る。しかし、私も騎獣にぐらい一人で乗れるようになりたい。
そして、ジュウロウザに抱えられベルーイに乗れば、『キュキュ』と見た目には合わない鳴き声を発したベルーイの青い炎で雪の壁を溶かして、雪の壁から外にでた。
吹いてきた冷たい風にブルリと思わず震える。あの雪の壁は意味があったんだね。
雪山を少し登ったところから、道を外れるように言い、雪の下の見えない山道沿いにベルーイを進めていく。
私は時々道なき道をジュウロウザに指示していく。なぜなら、途中で雪の下にある道が崖の様に無くなっており、地面は存在せず、雪が積もっているだけの場所があるからだ。何があってそのような事になっているかわからないが、地面が無いところを進むのは不安があるので、崖の縁を進んで行った。
魔物とは遭遇することもなく旧道を進んでいくこと2時間、目的の場所までたどり着いた。目的の場所と言っても一面雪しか無く、山側に雪の中から大きく突き出した岩があるだけだ。
「キトウさん。この辺りを進みたいのですけど」
私はこのシュエーレン連峰の雪深い中、この辺りで唯一岩が見えている横を指し示す。雪が降り積もり、他の場所と何も変わらないように見えるが私の真眼を使えばその先に洞窟のような空洞が見える。
「了解した」
そうジュウロウザが言葉を発すると同時に、『キュキュ』というベルーイの鳴き声が聞こえ、青い炎が視界を占めた。
雪が溶け出し奥へと続く岩肌が顕になった。そのまま炎を出しながら進んでいくベルーイ。凄い!
ゲームでは確か偶然に見つけたんだよね。例のアレだ。雪華藤を発見したあとジュウロウザがパティーから抜け戦力が低下してしまった後のことだ。スノーベアー3体に囲まれながら、瀕死状態で逃げ一択だったときに、雪の窪地に落ちて、たどり着いたところだった。上から落ちたことでHPが残り1pになったけれどね。
雪が完全に青い炎に溶かされ、暗闇がポッカリと口を開けて存在していた。鞄から魔道ランプを取り出し、光を灯す。しかし、前方は暗く確認できない。
そのランプの周りしか明るくない空間を進むベルーイの足取りに迷いはない。やはり、人とは見える範囲が違うのだろうか。
徐々に寒さが増してきた。保温機能がある衣服でも寒さが感じられるとは外気は相当寒いのだろう。
洞窟の先が明るくなってきた。出口が近いのだろう。カポカポと進むベルーイの鬣に白い氷がまとわり付いてきた。よく見ると私が来ている外套も明らかに雪ではない白い結晶が覆ってきている。もしかして、選択肢を間違えた?
しかし、ここまで来てしまった。魔物に命を脅かされるか。寒さに命を脅かされるかのどちらかだ。それなら、まだ私が対処しようのある寒さを取ったほうがいいだろう。
光が満ちた空間にやっと出た。奥には白く美しい神殿がキラキラと輝き存在していた。手前には緩やかな階段があり、支柱が立ち並んだ外見に大きな屋根が上からの光に照らされ、ダイヤモンドダストが舞う中、美麗と表現していいのか、荘厳と表現していいのか。ただ、美しかった。
上を見上げると建物の上にポッカリと光が入って来ている穴が大きく開いている。ゲームではあの穴から落ちたのだろう。しかし、少々高すぎないだろうか。よくそれで、生き残ったものだ。
近づいていくと、白い建物は雪で出来ていると思われる。この大きさを雪で作れるのだろうか。氷像?いや、透明感が感じられないからやはり雪像といっていいだろう。
階段の手前まで来て、ベルーイが立ち止まった。
「モナ殿。ここからどうするのだ?」
確かにここまで寒いと大丈夫かという意味も込められているのだろう。それはもちろん、神殿の中に入るしかないでしょ。
「中に入ります。神殿の中央に祭壇があると思いますので、一晩の宿をお願いして、【瑞雪の間】という部屋を探しましょう」
すると、ジュウロウザは私を抱えベルーイから下ろしてくれた。足元の雪は、雪というより氷と言っていいほど硬さがあった。これなら、私の足が埋もれることはないだろうと、右足を一歩踏み出すと、ズルリと右足が前に滑り、体が後ろに傾いた。ヤバイ!これはお尻を打つか、頭を打つ!
ジュウロウザが首を傾げて地図を見る。地図には何も記載はない。なぜなら、今では忘れられた神殿だからだ。
「冬の女神の神殿です。ここなら、神の加護があるので魔物が入ってきません」
「そういうことか、なら俺たちも出発しようか」
いつの間にか広げていた料理器具が片付けられており、あとはベルーイに乗ればいいだけになっていた。
おお、私が思考の海に没していた間にジュウロウザが片付けてくれていたようだ。
私はジュウロウザにお礼を言って、ベルーイに近寄る。しかし、私も騎獣にぐらい一人で乗れるようになりたい。
そして、ジュウロウザに抱えられベルーイに乗れば、『キュキュ』と見た目には合わない鳴き声を発したベルーイの青い炎で雪の壁を溶かして、雪の壁から外にでた。
吹いてきた冷たい風にブルリと思わず震える。あの雪の壁は意味があったんだね。
雪山を少し登ったところから、道を外れるように言い、雪の下の見えない山道沿いにベルーイを進めていく。
私は時々道なき道をジュウロウザに指示していく。なぜなら、途中で雪の下にある道が崖の様に無くなっており、地面は存在せず、雪が積もっているだけの場所があるからだ。何があってそのような事になっているかわからないが、地面が無いところを進むのは不安があるので、崖の縁を進んで行った。
魔物とは遭遇することもなく旧道を進んでいくこと2時間、目的の場所までたどり着いた。目的の場所と言っても一面雪しか無く、山側に雪の中から大きく突き出した岩があるだけだ。
「キトウさん。この辺りを進みたいのですけど」
私はこのシュエーレン連峰の雪深い中、この辺りで唯一岩が見えている横を指し示す。雪が降り積もり、他の場所と何も変わらないように見えるが私の真眼を使えばその先に洞窟のような空洞が見える。
「了解した」
そうジュウロウザが言葉を発すると同時に、『キュキュ』というベルーイの鳴き声が聞こえ、青い炎が視界を占めた。
雪が溶け出し奥へと続く岩肌が顕になった。そのまま炎を出しながら進んでいくベルーイ。凄い!
ゲームでは確か偶然に見つけたんだよね。例のアレだ。雪華藤を発見したあとジュウロウザがパティーから抜け戦力が低下してしまった後のことだ。スノーベアー3体に囲まれながら、瀕死状態で逃げ一択だったときに、雪の窪地に落ちて、たどり着いたところだった。上から落ちたことでHPが残り1pになったけれどね。
雪が完全に青い炎に溶かされ、暗闇がポッカリと口を開けて存在していた。鞄から魔道ランプを取り出し、光を灯す。しかし、前方は暗く確認できない。
そのランプの周りしか明るくない空間を進むベルーイの足取りに迷いはない。やはり、人とは見える範囲が違うのだろうか。
徐々に寒さが増してきた。保温機能がある衣服でも寒さが感じられるとは外気は相当寒いのだろう。
洞窟の先が明るくなってきた。出口が近いのだろう。カポカポと進むベルーイの鬣に白い氷がまとわり付いてきた。よく見ると私が来ている外套も明らかに雪ではない白い結晶が覆ってきている。もしかして、選択肢を間違えた?
しかし、ここまで来てしまった。魔物に命を脅かされるか。寒さに命を脅かされるかのどちらかだ。それなら、まだ私が対処しようのある寒さを取ったほうがいいだろう。
光が満ちた空間にやっと出た。奥には白く美しい神殿がキラキラと輝き存在していた。手前には緩やかな階段があり、支柱が立ち並んだ外見に大きな屋根が上からの光に照らされ、ダイヤモンドダストが舞う中、美麗と表現していいのか、荘厳と表現していいのか。ただ、美しかった。
上を見上げると建物の上にポッカリと光が入って来ている穴が大きく開いている。ゲームではあの穴から落ちたのだろう。しかし、少々高すぎないだろうか。よくそれで、生き残ったものだ。
近づいていくと、白い建物は雪で出来ていると思われる。この大きさを雪で作れるのだろうか。氷像?いや、透明感が感じられないからやはり雪像といっていいだろう。
階段の手前まで来て、ベルーイが立ち止まった。
「モナ殿。ここからどうするのだ?」
確かにここまで寒いと大丈夫かという意味も込められているのだろう。それはもちろん、神殿の中に入るしかないでしょ。
「中に入ります。神殿の中央に祭壇があると思いますので、一晩の宿をお願いして、【瑞雪の間】という部屋を探しましょう」
すると、ジュウロウザは私を抱えベルーイから下ろしてくれた。足元の雪は、雪というより氷と言っていいほど硬さがあった。これなら、私の足が埋もれることはないだろうと、右足を一歩踏み出すと、ズルリと右足が前に滑り、体が後ろに傾いた。ヤバイ!これはお尻を打つか、頭を打つ!
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