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32 秘密です

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 うぉぉぉぉぉ!私はなんてことをしてしまったのだ!まさか、夢だと思っていた響也がジュウロウザだったとは!

 私は今、布団を被ってうずくまっている。

 別にジュウロウザと響也は似てはいない。共通点といえば黒髪ぐらいだ。なぜ、私は間違ってしまったのか。

「モナ殿。そろそろ起きて、食事に行かないか?」

「ぐっ」

 ジュウロウザが朝食を食べに行こと声を掛けてくれた。わかっている。わかってはいる。私の羞恥心の問題だ。

「いつまでも王都にいるわけにはいかないぞ。三日後いや、もう二日後か。シオン殿が村に戻るとなれば、そろそろ、出発をしなければならない」

 は!確かに私が移動するペースを考えるとそろそろ出発をしなければならない。

「うっ。うううう。わかっています」

 布団から顔だけ出す。今のジュウロウザのLUKは500だ。あれだけ、腕を掴んでいても1より上がることはなかったのに、キス二回で1000まであがったのだ。あり得ない。
 だが、二度とすることもない。恥ずかしすぎる。

「モナ殿はかわいいな」

 くっそー。にこにこしながら私の頭を撫ぜてくるなんて、余裕だね。
 ジュウロウザの手を払い除け、がばりと起き上がる。

「起きますよ!」


 馬竜を連れて、買い物をしながら王都の外門に向かって歩く。はぁ、人が多いところは嫌だな。やはり、村が一番いい。それに私に旅は向いていないことがよくわかった。

 あ、あの串焼き美味しそう。なんのお肉だろう。コッコの肉?取り敢えず買ってみる。うーん。焼鳥の塩かな?
 あれは何?果物を絞ったジュース?オススメはオーメイのジュース?オレンジの味だけど色が紫。異様だ。でも、おいしい。

 そうやって、買い食いをしながらお腹を満たし、王都の外に出た。

「モナ殿。買うものはもう無いのか?」

 ジュウロウザ、馬竜に乗ってからそれを言うか?しかし、特に気になるものはなかった。私の拡張収納鞄は食材で満たされている。これ以上買うと腐らせてしまう。それはそれでもったいない。
 時間停止機能ってつけられないのかなぁ。

「ありません」

 私が、そう言うと馬竜がゆっくり動き出した。

 帰りも順調に進んでいく。魔物に遭遇することもなく。カポカポと馬竜が進んでいく。長閑だね。本当に魔王と言うものがいるのだろうか。

「そういえば、モナ殿」

 私の上から声が降ってきた。

「何?」

「なぜ、シオン殿たちが倒したドラゴンがドラゴンゾンビになることがわかるんだ?」

「は?」

 私、そんな事言った?·····言った··かも。
 疲れていたから、口から漏れてしまっていた。

「私、そんなこと言いました?」

 取り敢えずとぼけてみる。

「言った」

 くっ!ジュウロウザは言い切った。流石にこの世界がゲームの世界だなんて言うと頭のおかしい子、確定じゃない。
 だから、ジュウロウザを見て、口元に人差し指を立てて言う。

「秘密です」

「秘密か?」

「はい、秘密です」

「それは残念だ」

 ジュウロウザはそう言いながら、私の頭を撫でてきた。なんだか、朝からぐいぐいくるような気がする。

 まぁ、それも村に帰るまでのこと。



 2日後の昼にトリーアの町に着いた。何事もなく着いた。そこで、シオン伯父さんとマリエッタさんが待っていた。

「モナちゃーん!速攻に終わらせて来たわよー!」

 町の外で叫ばないでほしい。『翠玉の剣』のシオン伯父さんにアルトさん、双子のバルさんとジャンさん。『金の弓』のマリエッタさんにユーリカさん、マリエッタさんの旦那さんのガストさんが揃っていた。

「モナちゃん。その馬竜いいですわ。馬竜なんて殆ど市場には出ない騎獣ですのに良く手に入りましたわね」

 ユーリカさんがニコリと笑って言った。

「モナちゃんだからね」

 そんな簡単な言葉で終わらすのはアルトさんだ。

「アルトさん、それはどういうことですか?」

「どうにもこうにも、そのまま」

 アルトさんはへらりと笑う。大体いつもこんな感じだ。

「その馬竜なら、村まで1時間とかかるまい。では帰ろうか」

 シオン伯父さんがそう言って、騎獣に乗って村の方に向かって進む。

 え?もしかして、私を待っていてくれていた?

「モナちゃんの言っていたようにレッドドラゴンを灰にしてきたけど、それで良かったの」

 マリエッタさんが隣で並走しながら聞いてきた。

「マリエッタさん。ありがとうございます。それで、大丈夫です」

 はぁ。これで、ドラゴンゾンビになることはないだろう。

「いやー。今回はシオンが張り切っちゃって、速攻だったよ。いつもこれぐらいやる気を見せてくれたらいいのにー」

 アルトさんがヘラヘラ笑いながら、そんな事を言ってきた。アルトさん、前方のシオン伯父さんから睨まれているよ。

「そうですわ。わたくしの出番が無いぐらいでしたのよ」

 ユーリカさんはおっとりた喋り方をしているが、背中に背負っている武器が大槍なのだ。華奢な体でそんな大きな槍を振り回されるのかと、いつも疑問に思っているけど、一度フェリオさんと手合わせをしているところをみると、ブンブンと槍を振り回していた。華奢な美人が大槍を振り回す。ちょっと引いてしまった。

 そんな他愛のない話をしながら村の方に進んで行くが、何故か私の心の奥がザワザワとざわめいている。村に近づくほどざわめきが大きくなっていった。

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