32 / 121
32 秘密です
しおりを挟むうぉぉぉぉぉ!私はなんてことをしてしまったのだ!まさか、夢だと思っていた響也がジュウロウザだったとは!
私は今、布団を被ってうずくまっている。
別にジュウロウザと響也は似てはいない。共通点といえば黒髪ぐらいだ。なぜ、私は間違ってしまったのか。
「モナ殿。そろそろ起きて、食事に行かないか?」
「ぐっ」
ジュウロウザが朝食を食べに行こと声を掛けてくれた。わかっている。わかってはいる。私の羞恥心の問題だ。
「いつまでも王都にいるわけにはいかないぞ。三日後いや、もう二日後か。シオン殿が村に戻るとなれば、そろそろ、出発をしなければならない」
は!確かに私が移動するペースを考えるとそろそろ出発をしなければならない。
「うっ。うううう。わかっています」
布団から顔だけ出す。今のジュウロウザのLUKは500だ。あれだけ、腕を掴んでいても1より上がることはなかったのに、キス二回で1000まであがったのだ。あり得ない。
だが、二度とすることもない。恥ずかしすぎる。
「モナ殿はかわいいな」
くっそー。にこにこしながら私の頭を撫ぜてくるなんて、余裕だね。
ジュウロウザの手を払い除け、がばりと起き上がる。
「起きますよ!」
馬竜を連れて、買い物をしながら王都の外門に向かって歩く。はぁ、人が多いところは嫌だな。やはり、村が一番いい。それに私に旅は向いていないことがよくわかった。
あ、あの串焼き美味しそう。なんのお肉だろう。コッコの肉?取り敢えず買ってみる。うーん。焼鳥の塩かな?
あれは何?果物を絞ったジュース?オススメはオーメイのジュース?オレンジの味だけど色が紫。異様だ。でも、おいしい。
そうやって、買い食いをしながらお腹を満たし、王都の外に出た。
「モナ殿。買うものはもう無いのか?」
ジュウロウザ、馬竜に乗ってからそれを言うか?しかし、特に気になるものはなかった。私の拡張収納鞄は食材で満たされている。これ以上買うと腐らせてしまう。それはそれでもったいない。
時間停止機能ってつけられないのかなぁ。
「ありません」
私が、そう言うと馬竜がゆっくり動き出した。
帰りも順調に進んでいく。魔物に遭遇することもなく。カポカポと馬竜が進んでいく。長閑だね。本当に魔王と言うものがいるのだろうか。
「そういえば、モナ殿」
私の上から声が降ってきた。
「何?」
「なぜ、シオン殿たちが倒したドラゴンがドラゴンゾンビになることがわかるんだ?」
「は?」
私、そんな事言った?·····言った··かも。
疲れていたから、口から漏れてしまっていた。
「私、そんなこと言いました?」
取り敢えずとぼけてみる。
「言った」
くっ!ジュウロウザは言い切った。流石にこの世界がゲームの世界だなんて言うと頭のおかしい子、確定じゃない。
だから、ジュウロウザを見て、口元に人差し指を立てて言う。
「秘密です」
「秘密か?」
「はい、秘密です」
「それは残念だ」
ジュウロウザはそう言いながら、私の頭を撫でてきた。なんだか、朝からぐいぐいくるような気がする。
まぁ、それも村に帰るまでのこと。
2日後の昼にトリーアの町に着いた。何事もなく着いた。そこで、シオン伯父さんとマリエッタさんが待っていた。
「モナちゃーん!速攻に終わらせて来たわよー!」
町の外で叫ばないでほしい。『翠玉の剣』のシオン伯父さんにアルトさん、双子のバルさんとジャンさん。『金の弓』のマリエッタさんにユーリカさん、マリエッタさんの旦那さんのガストさんが揃っていた。
「モナちゃん。その馬竜いいですわ。馬竜なんて殆ど市場には出ない騎獣ですのに良く手に入りましたわね」
ユーリカさんがニコリと笑って言った。
「モナちゃんだからね」
そんな簡単な言葉で終わらすのはアルトさんだ。
「アルトさん、それはどういうことですか?」
「どうにもこうにも、そのまま」
アルトさんはへらりと笑う。大体いつもこんな感じだ。
「その馬竜なら、村まで1時間とかかるまい。では帰ろうか」
シオン伯父さんがそう言って、騎獣に乗って村の方に向かって進む。
え?もしかして、私を待っていてくれていた?
「モナちゃんの言っていたようにレッドドラゴンを灰にしてきたけど、それで良かったの」
マリエッタさんが隣で並走しながら聞いてきた。
「マリエッタさん。ありがとうございます。それで、大丈夫です」
はぁ。これで、ドラゴンゾンビになることはないだろう。
「いやー。今回はシオンが張り切っちゃって、速攻だったよ。いつもこれぐらいやる気を見せてくれたらいいのにー」
アルトさんがヘラヘラ笑いながら、そんな事を言ってきた。アルトさん、前方のシオン伯父さんから睨まれているよ。
「そうですわ。わたくしの出番が無いぐらいでしたのよ」
ユーリカさんはおっとりた喋り方をしているが、背中に背負っている武器が大槍なのだ。華奢な体でそんな大きな槍を振り回されるのかと、いつも疑問に思っているけど、一度フェリオさんと手合わせをしているところをみると、ブンブンと槍を振り回していた。華奢な美人が大槍を振り回す。ちょっと引いてしまった。
そんな他愛のない話をしながら村の方に進んで行くが、何故か私の心の奥がザワザワとざわめいている。村に近づくほどざわめきが大きくなっていった。
0
お気に入りに追加
170
あなたにおすすめの小説
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
妻と夫と元妻と
キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では?
わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。
数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。
しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。
そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。
まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。
なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。
そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて………
相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。
不治の誤字脱字病患者の作品です。
作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。
性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。
小説家になろうさんでも投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる