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1話 私が聖女?

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 心地よい風が頬を撫でる。目を開ければ青く澄んだ空が見える。目の端にはさわさわと揺れる花。
ラフテリアはここがどこかわからなかった。体を起こし周りを見渡す。
 村の外れだろうか、ここまで来た記憶がない。いつも一緒にいるロビンの姿もない。とても不安になってきた。そのとき、

「こんにちは」

 突然背後から声が掛かり、思わず飛び上がるように立ち上がった。

「ごめんね。驚いた?」

 そこにはとても美しい人がいた。髪が白く、肌も白い、目もなんだか白いのが少し気味が悪いがそれも相まって、全てが美しかった。

「君、幸せ?」

「はい。」

「幼馴染の彼のこと好き?」

「もちろん、私のつがいですから。」

「そうよかった。」

 いったい何の質問なんだろう。

「この世界はね、最初はよかったんだ。皆幸せで。でも、人という意思を持ち思考をする者たちは、今のままでは、幸せを感じなくなってしまったみたいでね。より高みを目指そうとしたんだ。本当に愚かだよね。」

 この人物はなんだろう。とても恐怖を覚える。

「そうすれば、不平、不満、悪意、憎悪、嫉妬なんて感情を持ち出すじゃないか。本当にバカだよね。あのままいればそんな感情持たなくてすんだのに。」

 顔は笑っている。しかし、悲しんでいる。

「君に特別な力を与えようと思うんだ。人の闇の心がたまった世界を浄化してほしんだ。君は今が幸せなんでしょ?番と共に暮らせればいいんでしょ。それ以上のこだわりはないんでしょ?そんな君にやってほしんだ。」

「わかりました。」

「そうよかった。君には聖女の称号と奇跡の力を与えるよ。」

 そう言って白い人物は消えていった。吹き抜ける風は暖かく、やさしかった。





 白い温かい光を感じ目を開ける。目にうつるのはいつも朝と同じシミが付いた天井。夢だった?変な夢だった。私が聖女だなんて笑えてくる。

「ラフテリア朝よー。起きてきなさいな。」

 下から母さんの声が聞こえる。
 
「はーい」

 いつもの代わり映えしない服に着替えるの。いつも着ているから黄ばんで汚れが目立つ。でも、これが好きでいつも着ているんだ。母さんが作ってくれて、幼馴染のロビンがかわいいと言ってくれた服なの。
 煤けた鏡の前に立つ。歪んだ表面に合わせ歪んだ私がうつっている。明るい茶色の髪に森の緑の目。 よくある色合い。
 容姿は美人かと言われれば10人中5人ぐらいはかわいいと言ってくれる容姿。つまり、普通ということ。でも、私はロビンがかわいいと言ってくれればそれでいいの。

 下の階に降り、母さんと父さんに声をかけた。

「おはよう。今日もいい天気だね。」

「おはよう。ラフテリア。」

「おはよう。ラフテリア、今日は豆の収穫を終わらせるから、早くご飯を食べてしまってよ。」

「はーい。」

 豆の収穫。ここの村は皆で協力して暮らしている。誰かの畑があるわけではなく、村のみんなの畑、森もみんなの森、川もみんなの川。だから、今日は豆の収穫をして村のみんなで分け合う。すべて村のみんなのもの。すべて分け合う。だからみんな幸せ。

 朝、外に出るとロビンが来てくれていた。

「リア。おはよう。」

「ロビン。おはよう。今日は何の仕事?私は豆の収穫だよ。」

「僕は薪拾いだよ。お昼は一緒に食べようね。」

 後ろ姿のロビンを見送る。毎朝、今日の仕事を教え合い、お昼を一緒食べることを約束して、仕事に向かうのは、少しでも一緒にいたいから。ロビンは私の幼馴染でつがい。来年16歳になるので一緒に暮らそうと約束をしていて、とても楽しみなの。

「ラフテリア、早くしなさい。」

「はーい」
 

 お昼は楽しみにしていたロビンとのご飯。

「ロビン。今日ね、おかしな夢を見たのよ。」

「僕もおかしな夢を見たんだ。」

「白い人の夢?」

「そう白い人の夢。」

 へんなの二人して同じ夢を見るなんて、つがいだからかな?

「私が聖女だって、世界を浄化するんだって」

「僕は聖剣。リアを守れるようにだって」

「おかしいね」

「おかしいね」

 私はロビンがいてくれたら幸せなの。
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