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81 気合で治す
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ゼルトの隣を歩いて町を見てみるが、血の跡が生々しい、乾いていないところをみると数時間前のことだったんじゃないだろうか。
前方からソルが歩いて戻ってきた。
「どうやら、明け方にスノーベアーに襲われたらしい。まだ、町の人が出歩いていない時間だったから、2家族以外何も被害がなかったようだ。」
明け方か。寝ているところを襲われたということか。狙われてしまったら、抵抗もできなよな。
「その2家族は?」
「1人以外皆食べられたようだ。その1人も手がつけられない程の怪我で、どうしようもない状態だそうだ。」
運良く助かったが、生死の境をさまよっているのか。俺にできることはあるのだろうか。
「その一人は何処にいるんだ?」
「被害にあった家にいるらしい。」
は?
「え?診療所とかは、ないのか?」
「「診療所?」」
無いのかー!もしかして医者もいないとか言わないよな。
「聞いていいか。怪我や病気をしたときはどうしているんだ?」
「気合で治す。」
「じーっとしとけば治る。」
・・・ソル、お前は気合で治るかもしれんが、一般人には無理だろ。それとゼルト、蜥蜴人みたいに再生能力があるのは特殊な種族のみだ。
「お前たちの話じゃねー!一般的にどうなんだと聞いているんだ!以前教会に行って怪我を治してもらったという話を聞いたが、他に選択肢はないのかという話だ。」
「「ない。」」
マジか。これじゃ医者もいないのか。ん?それじゃ子供を産むとき医者はいないのか?
「取り敢えず、その被害のあった家に連れて行ってくれ。」
歩きながら、この国の出産事情を聞いてみると、産婆はいた。しかし、種族によって色々異なるので、出産時はその種族の集落に里帰りをして、その種族の産婆が対応するという。多産や卵産があるようだ。
それも産婆制度は天津が言い出したことらしい。鶴の一声と言うやつだ。それまで、産婆というものは存在しなかったと。
はぁ、天津。産婆制度を作るついでに医者も作ってくれればよかったのに・・・それだと、教会と事を構えることになるからダメだったと。エルフかまたエルフの邪魔がそこで入るのか。
被害にあった家の前に来た。町の入り口で見た石で作られた建物が壊されていた隣の倉庫の残骸だと思っていたところでソルが止まった。すまん。俺はてっきり倉庫だと思っていた。
中を見ると壁も屋根も無くなった吹きさらしになった部屋の中央に木の板の上に血まみれの少女が寝かされていた。肩から腰にかけて裂けているようで、一応止血というか血まみれになった布が巻かれているが、意味をなしていない。
少女の顔が痛みからか歪み、目は半開きになり、呼吸は浅く、残された時間は余りないことが伺い知れる。
「なぁ。これが普通のことなのか?家には誰もいないし、屋根も壁もないところで寝かされているのは普通のことなのか?」
これはあまりにも酷すぎる。
「普通というか、こういう小さな町ではそうせざる得ないというのが現状だ。」
せめて、人が居る温かい部屋に寝かすことはできなかったのか。俺は血まみれの少女に近づき、手をかざす。光の魔術で治るのか?いや無理だな。半分死の縁に足を突っ込んでいると言ってもいい状態だ。俺の中で検索する何が一番いいのか。『聖女の慈愛』・・・これは聖女様専用の魔術じゃないか、別のやつはないのか?
ああ、これか。
「『神の息吹の神授』」
春のまだ冷たい風が満ちていた空間に暖かな風が吹いてきた。その風が少女を包み込み吹き抜けて行った。
何かに満たされて空間はまた冷たい風が吹いて来たが、寝ている少女の顔は穏やかになっていた。・・・生きているよな。
少女の目が開く。魔術の効力は問題なかったようだ。
「英雄さま。」
ん?ソルのことか?俺はソルを振り返るが、ソルはなぜか苦笑いをしていた。
「ルギアさま。ありがとうございます。ルギアさまが私の痛みを取ってくださったのですね。」
・・・。
「俺はルギアじゃね!」
「ふぇ。」
あ、いつもと同じ感じで突っ込んでしまった。相手は先程まで、生死の境をさまよっていたんだった。
「ごめんなさい。」
「いや、俺が悪かった。怪我は治っているはずだから、あとは美味い物でも食って寝ろ。誰か頼れる人はいるか?」
少女は首を横に振る。ん?いないのか?親戚とかもいないのだろうか。
「なぁ。ソル、こういう場合はどうするんだ?年齢的に孤児院に入れる年でもなさそうだし。」
まだ、血があちらこちらにこびりついている少女をみるが、どう見ても16歳ぐらいになっていそうだ。
「普通はその種族の長に保護を求めるのだが、その長があれだからなぁ。」
「あれって誰だ?その長に保護は求められないのか?」
「誰だって・・・エン見てわからないのか?」
何がだ?少女を見るが、髪にも顔にも衣服にも血をかぶったように赤黒く染まっているしかわからないが?
「「はぁ。」」
二人してため息を吐くんじゃねー!
「どう見ても、その少女は豹獣人だろ。」
前方からソルが歩いて戻ってきた。
「どうやら、明け方にスノーベアーに襲われたらしい。まだ、町の人が出歩いていない時間だったから、2家族以外何も被害がなかったようだ。」
明け方か。寝ているところを襲われたということか。狙われてしまったら、抵抗もできなよな。
「その2家族は?」
「1人以外皆食べられたようだ。その1人も手がつけられない程の怪我で、どうしようもない状態だそうだ。」
運良く助かったが、生死の境をさまよっているのか。俺にできることはあるのだろうか。
「その一人は何処にいるんだ?」
「被害にあった家にいるらしい。」
は?
「え?診療所とかは、ないのか?」
「「診療所?」」
無いのかー!もしかして医者もいないとか言わないよな。
「聞いていいか。怪我や病気をしたときはどうしているんだ?」
「気合で治す。」
「じーっとしとけば治る。」
・・・ソル、お前は気合で治るかもしれんが、一般人には無理だろ。それとゼルト、蜥蜴人みたいに再生能力があるのは特殊な種族のみだ。
「お前たちの話じゃねー!一般的にどうなんだと聞いているんだ!以前教会に行って怪我を治してもらったという話を聞いたが、他に選択肢はないのかという話だ。」
「「ない。」」
マジか。これじゃ医者もいないのか。ん?それじゃ子供を産むとき医者はいないのか?
「取り敢えず、その被害のあった家に連れて行ってくれ。」
歩きながら、この国の出産事情を聞いてみると、産婆はいた。しかし、種族によって色々異なるので、出産時はその種族の集落に里帰りをして、その種族の産婆が対応するという。多産や卵産があるようだ。
それも産婆制度は天津が言い出したことらしい。鶴の一声と言うやつだ。それまで、産婆というものは存在しなかったと。
はぁ、天津。産婆制度を作るついでに医者も作ってくれればよかったのに・・・それだと、教会と事を構えることになるからダメだったと。エルフかまたエルフの邪魔がそこで入るのか。
被害にあった家の前に来た。町の入り口で見た石で作られた建物が壊されていた隣の倉庫の残骸だと思っていたところでソルが止まった。すまん。俺はてっきり倉庫だと思っていた。
中を見ると壁も屋根も無くなった吹きさらしになった部屋の中央に木の板の上に血まみれの少女が寝かされていた。肩から腰にかけて裂けているようで、一応止血というか血まみれになった布が巻かれているが、意味をなしていない。
少女の顔が痛みからか歪み、目は半開きになり、呼吸は浅く、残された時間は余りないことが伺い知れる。
「なぁ。これが普通のことなのか?家には誰もいないし、屋根も壁もないところで寝かされているのは普通のことなのか?」
これはあまりにも酷すぎる。
「普通というか、こういう小さな町ではそうせざる得ないというのが現状だ。」
せめて、人が居る温かい部屋に寝かすことはできなかったのか。俺は血まみれの少女に近づき、手をかざす。光の魔術で治るのか?いや無理だな。半分死の縁に足を突っ込んでいると言ってもいい状態だ。俺の中で検索する何が一番いいのか。『聖女の慈愛』・・・これは聖女様専用の魔術じゃないか、別のやつはないのか?
ああ、これか。
「『神の息吹の神授』」
春のまだ冷たい風が満ちていた空間に暖かな風が吹いてきた。その風が少女を包み込み吹き抜けて行った。
何かに満たされて空間はまた冷たい風が吹いて来たが、寝ている少女の顔は穏やかになっていた。・・・生きているよな。
少女の目が開く。魔術の効力は問題なかったようだ。
「英雄さま。」
ん?ソルのことか?俺はソルを振り返るが、ソルはなぜか苦笑いをしていた。
「ルギアさま。ありがとうございます。ルギアさまが私の痛みを取ってくださったのですね。」
・・・。
「俺はルギアじゃね!」
「ふぇ。」
あ、いつもと同じ感じで突っ込んでしまった。相手は先程まで、生死の境をさまよっていたんだった。
「ごめんなさい。」
「いや、俺が悪かった。怪我は治っているはずだから、あとは美味い物でも食って寝ろ。誰か頼れる人はいるか?」
少女は首を横に振る。ん?いないのか?親戚とかもいないのだろうか。
「なぁ。ソル、こういう場合はどうするんだ?年齢的に孤児院に入れる年でもなさそうだし。」
まだ、血があちらこちらにこびりついている少女をみるが、どう見ても16歳ぐらいになっていそうだ。
「普通はその種族の長に保護を求めるのだが、その長があれだからなぁ。」
「あれって誰だ?その長に保護は求められないのか?」
「誰だって・・・エン見てわからないのか?」
何がだ?少女を見るが、髪にも顔にも衣服にも血をかぶったように赤黒く染まっているしかわからないが?
「「はぁ。」」
二人してため息を吐くんじゃねー!
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