75 / 92
75話 隠されていたもの
しおりを挟む
——コンコン
「はい」
エレナの返事を聞いて、部屋に入ってきたのは、アークとフェリスだった。
「いらっしゃいませ、アーク様、フェリス殿下」
エレナはカーテシーをすると、公爵令嬢然として挨拶をした。
「この部屋も久しぶりだな」
アークはそう言いながらも、懐かしむというよりは、王宮で一緒に過ごした日々の方が逆に強く思い起こされて、寂し気に言った。
ソファの近くでは、ルーカスが立って礼をするのが見えた。
「お待ちしておりました」
先に部屋に入っていたルーカスが、そう言って2人をソファへ誘導すると、続いて自分たち姉弟もソファ へ腰掛けた。
「それで?話というのはなんだ?」
アークは開口一番にそう聞いた。
「ええ、それなんですが…」
と言いながら、ルーカスは、またあのカトリーナの日記をテーブルにドサッと置いた。
「どうしたんだい?ルーカス。これは前にも見せてもらったけど…」
不思議そうにフェリスが聞いた。
「はい、僕も全部読んだんですが、何か魔女のヒントがないか、暗号らしきものなどもないか、あれから何度も読み返していまして…
ちょっと…ここを見てください」
フェリスがその分厚い日記の硬そうな表紙を開いて、その表紙の裏側の角を指差した。
少しだけめくれている。
「これ、あとから糊付けされて、それがまた剥がれてきてるんですよ。
お金に不自由していたようでしたから、破れたら補修して大切に使っていたのかと思ったんですが…」
そう言うと、ルーカスはその表紙の裏側の、めくれかけているところから、
薄い皮を剥がすようにゆっくりと分厚い表紙の一層をめくっていった。
めくっていく中で、真ん中の方は糊付けされていないところがあった。
そこにはカトリーナが日記に書いている筆跡と同じ字で
『メイサ 毒は寿命1年分と交換』
と小さく書かれていた。
「これは!まさかっ⁉︎」
アークは目を瞠って驚き、毒という文字を見たエレナの足は震えていた。
しかし、フェリスの目は輝いた。
「ルーカス!でかした!これは魔女の名前だね、きっと!」
「確証はありませんが、姉上の話では毒殺されたこともあったということでしたから、そうかもしれないと思って、急いでお2人をお呼びした次第です」
「ありがとう!ルーカス!すごいよ、君は!」
「あ、ありがとうございます」
フェリスに褒められて、ルーカスは少し照れた。
「しかし、フェリス。喜んでいるところ悪いんだが、魔女の名前がわかっても探す手立てがない。何か方法がありそうなのか?」
「あっ、え、ええ、そうですよね…
その問題がありましたね…」
フェリスは大魔女に聞きに行こうと思って喜んでいたが、それは言えないのでお茶を濁した。
「…いや、ちょっと待てよ?
ルーカス、お前が初めてそれをめくった時、全部めくったことがあった形跡はあったか?」
「いえ、最後まで全部開いたのは僕が初めてだと思います。何度も剥がされたような跡はありませんでした」
「つまり、…カトリーナは魔女からまだ毒を得ていないんじゃないのか?
…毒殺を本当に実行するのだとすれば、魔女と交渉するのはこれから…
ということは、カトリーナはこの魔女にまた会うということか⁉︎
なら、あの女に吐かせれば魔女に会えるかもしれない!」
アークはテーブルに手をついて立ち上がった。
「はい」
エレナの返事を聞いて、部屋に入ってきたのは、アークとフェリスだった。
「いらっしゃいませ、アーク様、フェリス殿下」
エレナはカーテシーをすると、公爵令嬢然として挨拶をした。
「この部屋も久しぶりだな」
アークはそう言いながらも、懐かしむというよりは、王宮で一緒に過ごした日々の方が逆に強く思い起こされて、寂し気に言った。
ソファの近くでは、ルーカスが立って礼をするのが見えた。
「お待ちしておりました」
先に部屋に入っていたルーカスが、そう言って2人をソファへ誘導すると、続いて自分たち姉弟もソファ へ腰掛けた。
「それで?話というのはなんだ?」
アークは開口一番にそう聞いた。
「ええ、それなんですが…」
と言いながら、ルーカスは、またあのカトリーナの日記をテーブルにドサッと置いた。
「どうしたんだい?ルーカス。これは前にも見せてもらったけど…」
不思議そうにフェリスが聞いた。
「はい、僕も全部読んだんですが、何か魔女のヒントがないか、暗号らしきものなどもないか、あれから何度も読み返していまして…
ちょっと…ここを見てください」
フェリスがその分厚い日記の硬そうな表紙を開いて、その表紙の裏側の角を指差した。
少しだけめくれている。
「これ、あとから糊付けされて、それがまた剥がれてきてるんですよ。
お金に不自由していたようでしたから、破れたら補修して大切に使っていたのかと思ったんですが…」
そう言うと、ルーカスはその表紙の裏側の、めくれかけているところから、
薄い皮を剥がすようにゆっくりと分厚い表紙の一層をめくっていった。
めくっていく中で、真ん中の方は糊付けされていないところがあった。
そこにはカトリーナが日記に書いている筆跡と同じ字で
『メイサ 毒は寿命1年分と交換』
と小さく書かれていた。
「これは!まさかっ⁉︎」
アークは目を瞠って驚き、毒という文字を見たエレナの足は震えていた。
しかし、フェリスの目は輝いた。
「ルーカス!でかした!これは魔女の名前だね、きっと!」
「確証はありませんが、姉上の話では毒殺されたこともあったということでしたから、そうかもしれないと思って、急いでお2人をお呼びした次第です」
「ありがとう!ルーカス!すごいよ、君は!」
「あ、ありがとうございます」
フェリスに褒められて、ルーカスは少し照れた。
「しかし、フェリス。喜んでいるところ悪いんだが、魔女の名前がわかっても探す手立てがない。何か方法がありそうなのか?」
「あっ、え、ええ、そうですよね…
その問題がありましたね…」
フェリスは大魔女に聞きに行こうと思って喜んでいたが、それは言えないのでお茶を濁した。
「…いや、ちょっと待てよ?
ルーカス、お前が初めてそれをめくった時、全部めくったことがあった形跡はあったか?」
「いえ、最後まで全部開いたのは僕が初めてだと思います。何度も剥がされたような跡はありませんでした」
「つまり、…カトリーナは魔女からまだ毒を得ていないんじゃないのか?
…毒殺を本当に実行するのだとすれば、魔女と交渉するのはこれから…
ということは、カトリーナはこの魔女にまた会うということか⁉︎
なら、あの女に吐かせれば魔女に会えるかもしれない!」
アークはテーブルに手をついて立ち上がった。
0
お気に入りに追加
1,097
あなたにおすすめの小説
自滅王子はやり直しでも自滅するようです(完)
みかん畑
恋愛
侯爵令嬢リリナ・カフテルには、道具のようにリリナを利用しながら身体ばかり求めてくる婚約者がいた。
貞操を守りつつ常々別れたいと思っていたリリナだが、両親の反対もあり、婚約破棄のチャンスもなく卒業記念パーティの日を迎える。
しかし、運命の日、パーティの場で突然リリナへの不満をぶちまけた婚約者の王子は、あろうことか一方的な婚約破棄を告げてきた。
王子の予想に反してあっさりと婚約破棄を了承したリリナは、自分を庇ってくれた辺境伯と共に、新天地で領地の運営に関わっていく。
そうして辺境の開発が進み、リリナの名声が高まって幸福な暮らしが続いていた矢先、今度は別れたはずの王子がリリナを求めて実力行使に訴えてきた。
けれど、それは彼にとって破滅の序曲に過ぎず――
※8/11完結しました。
読んでくださった方に感謝。
ありがとうございます。
【完】ええ!?わたし当て馬じゃ無いんですか!?
112
恋愛
ショーデ侯爵家の令嬢ルイーズは、王太子殿下の婚約者候補として、王宮に上がった。
目的は王太子の婚約者となること──でなく、父からの命で、リンドゲール侯爵家のシャルロット嬢を婚約者となるように手助けする。
助けが功を奏してか、最終候補にシャルロットが選ばれるが、特に何もしていないルイーズも何故か選ばれる。
【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない
金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ!
小説家になろうにも書いてます。
婚約破棄された枯葉令嬢は、車椅子王子に溺愛される
夏海 十羽
恋愛
地味な伯爵令嬢のフィリアには美しい婚約者がいる。
第三王子のランドルフがフィリアの婚約者なのだが、ランドルフは髪と瞳が茶色のフィリアに不満を持っている。
婚約者同士の交流のために設けられたお茶会で、いつもランドルフはフィリアへの不満を罵詈雑言として浴びせている。
伯爵家が裕福だったので、王家から願われた婚約だっだのだが、フィリアの容姿が気に入らないランドルフは、隣に美しい公爵令嬢を侍らせながら言い放つのだった。
「フィリア・ポナー、貴様との汚らわしい婚約は真実の愛に敗れたのだ!今日ここで婚約を破棄する!」
ランドルフとの婚約期間中にすっかり自信を無くしてしまったフィリア。
しかし、すぐにランドルフの異母兄である第二王子と新たな婚約が結ばれる。
初めての顔合せに行くと、彼は車椅子に座っていた。
※完結まで予約投稿済みです
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
領主の妻になりました
青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」
司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。
===============================================
オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。
挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。
クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。
新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。
マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。
ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。
捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。
長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。
新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。
フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。
フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。
ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。
========================================
*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
*約10万字で最終話を含めて全29話です
*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
*誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです
陰謀は、婚約破棄のその後で
秋津冴
恋愛
王国における辺境の盾として国境を守る、グレイスター辺境伯アレクセイ。
いつも眠たそうにしている彼のことを、人は昼行灯とか怠け者とか田舎者と呼ぶ。
しかし、この王国は彼のおかげで平穏を保てるのだと中央の貴族たちは知らなかった。
いつものように、王都への定例報告に赴いたアレクセイ。
彼は、王宮の端でとんでもないことを耳にしてしまう。
それは、王太子ラスティオルによる、婚約破棄宣言。
相手は、この国が崇めている女神の聖女マルゴットだった。
一連の騒動を見届けたアレクセイは、このままでは聖女が謀殺されてしまうと予測する。
いつもの彼ならば関わりたくないとさっさと辺境に戻るのだが、今回は話しが違った。
聖女マルゴットは彼にとって一目惚れした相手だったのだ。
無能と蔑まれていた辺境伯が、聖女を助けるために陰謀を企てる――。
他の投稿サイトにも別名義で掲載しております。
この話は「本日は、絶好の婚約破棄日和です。」と「王太子妃教育を受けた私が、婚約破棄相手に復讐を果たすまで。」の二話の合間を描いた作品になります。
宜しくお願い致します。
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる