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67話 ルーカスの見つけたもの

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エレナもマーガレットも無事無傷で、学園にはまた魔力暴走の事故だったと告げた。

カトリーナは自分の治癒魔法で傷を治して、寮に着替えに戻り、事なきを得ていた。

カトリーナの生徒への洗脳は、学園全体を無効の魔法が包み込んだことで、すっかり解けていた。

しかし、また同じことをカトリーナがしでかさないという保証はなかった。


王宮に戻ったアーク、エレナ、フェリスは、帰ってからもカトリーナについてどうするか話し合っていた。

罪を咎めようにも洗脳の魔法が証明できないことには罰することは難しい。

そもそも国で唯一の光魔法士なのだから、よっぽどのことがなければ、国の上層部になかったことにされ、捕縛はまず不可能だ。

ぐずぐずしている間にまたアークが狙われる可能性もあった。

3人はアークの執務室で考えあぐねていると、

———コンコンッコンコンッ

「誰だ?」

強いノックに3人は驚き、ひとまずアークが返事をした。

「僕です!ルーカスです!」

「ルーカス⁈、ああ、どうぞ、入ってくれ」

それを聞いてすぐにルーカスは部屋に飛び込んで来た。

「ルーカス!会いに来てくれたの⁈」

エレナは喜んだ顔をして迎えた。

「ふふっ、それはもちろんそうなんだけどね?」

と、可愛く微笑む。

しかし、すぐに真剣な顔をして、3人を見た。

「あの問題の女、カトリーナ=メイデンを調べていたんですが、…とんでもない事実が分かりましたので…お伝えに上がりました」

「何だそれは?」
「どういうことなの?」
「ルーカス、ありがとう、調べてくれてたんだね」

アーク、エレナ、フェリスの順に、三者三様の返事を返す。

「…じゃあ、そっちのソファで話を聞こうか」

とアークが言うと、4人は部屋に置かれたソファの方へ移動する。

エレナの隣にはもちろんアークが、しかしいつもならその隣りに座ろうとするルーカスは向かいにフェリスと並んで座った。

エレナは、反抗期かしら?と少し寂しく思ったが、それは切ない恋を終わらせようとするルーカスの努力だった。

「それで?何が分かったんだ?」

アークが聞くと、ルーカスは神妙な面持ちになって話始める。

「はい…それが、姉上から話を聞いた後、僕は学園に行けないので、変わりにカトリーナの実家を探っていました。

そしたら、とんでもないものを見つけてしまって…」

と言って、小脇に抱えていた本をテーブルにドサッと置いた。

分厚い本だった。

「それは何?」

エレナが小首を傾げる。

「これは…カトリーナが小さい頃から書き溜めた日記です」

「何⁈何が書いてあったんだ⁈」

アークが身を乗り出して聞いた。

「…全てです。これを読めば、なぜカトリーナがそんな性格なのか、なぜ光魔法を使えるのか、なぜ光魔法は治癒魔法なのに、洗脳魔法が使えるのか、そして、なぜアーク殿下やフェリス殿下、そして姉上を狙うのか…

全て記されています。

全部読むのは大変ですから、必要なところにだけメモを挟んでいますので、そこだけご覧ください」

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