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42話 新たな噂
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それからしばらくは、ちらほらとエレナが気づかない程度の噂はまだ燻りはしていたが、さほど大きな問題にはなっていなかった。
しかし、そこから1ヶ月ほど経った時、噂は急に大きくなり、さらには別の噂まで増えていた。
そして、その頃にはもう普通にしていてもエレナの耳に入ってくるほど、噂話は遠慮なくされるようになっていた。
「エレナ?今日私先生に呼ばれてるから、お料理クラブ行けないのよ。ごめんね。フェリスと楽しんできてね?」
放課後、すまなさそうに言うマーガレットに
「そうなの?残念だけど仕方ないわね。じゃあまた明日」
エレナは微笑んでマーガレットに言うと、
「うん、また明日ね!」
と言いながら、マーガレットは教室を後にした。
「ねぇ、…でしょ?」
「うんうん、…で、……なんだって」
今日もまた放課後の教室の片隅で、女生徒たちがアークとカトリーナの噂話に花を咲かせているのを見て、エレナは、またか、と小さく溜息を吐いた。
しかし、その女生徒たちの群れに、フェリスがすっと歩いて近づいた。
「ねえ、君たち、楽しそうだね?何の話してるの?僕も混ぜてよ?」
と、柔らかい口調のはずなのに、凍てつくような目をして、教室の隅で話している女生徒たちを、真上から腕を組んで見下ろした。
「きゃっ、あの、なんでもありませんっ」
と、驚いた女生徒たちは、慌てて蜘蛛の子を散らすように去って行った。
「はぁ…たくっ。兄上がいないとすぐこれだ」
とフェリスは溜息を吐きながら
「エレナ、クラブに行こうか?」
とエレナを見て優しく微笑んだ。
「…フェリス。ごめんなさい。ありがとう」
優しくされて堪らなくなったエレナの目には、ずっと我慢してきた涙が溜まり始め、今にもこぼれ落ちそうになっていた。
「エレナ、…こっちへおいで」
と、手を引いてフェリスは誰もいない廊下に連れ出し、涙がこぼれてしまったエレナの頭を撫でた。
「エレナ、気にしなくていいよ?あんな噂。君が魔法を消す魔女でカトリーナが聖女だなんて。何考えてるんだ、あの女ども!」
フェリスは忌々しそうに顔を歪めた。
「…いいのよ。そんな顔しないで?綺麗な顔が台無しよ?」
エレナはそう言って、泣きながら微笑んだ。
「それに…魔女ではないけど、私が魔法を消してしまうのは本当のことだし…カトリーナさんが聖女なのも本当のことよ…
…こうなることは所長にも言われていたし、最初から分かっていたことだから。
私…やっぱり研究所でお世話になった方がいいのかもしれない。
こんなによくない噂が立ってしまってはアーク様にとんでもないご迷惑だわ…」
涙を頬に伝わせながらエレナは全て諦めたように、静かに言った。
しかし、そこから1ヶ月ほど経った時、噂は急に大きくなり、さらには別の噂まで増えていた。
そして、その頃にはもう普通にしていてもエレナの耳に入ってくるほど、噂話は遠慮なくされるようになっていた。
「エレナ?今日私先生に呼ばれてるから、お料理クラブ行けないのよ。ごめんね。フェリスと楽しんできてね?」
放課後、すまなさそうに言うマーガレットに
「そうなの?残念だけど仕方ないわね。じゃあまた明日」
エレナは微笑んでマーガレットに言うと、
「うん、また明日ね!」
と言いながら、マーガレットは教室を後にした。
「ねぇ、…でしょ?」
「うんうん、…で、……なんだって」
今日もまた放課後の教室の片隅で、女生徒たちがアークとカトリーナの噂話に花を咲かせているのを見て、エレナは、またか、と小さく溜息を吐いた。
しかし、その女生徒たちの群れに、フェリスがすっと歩いて近づいた。
「ねえ、君たち、楽しそうだね?何の話してるの?僕も混ぜてよ?」
と、柔らかい口調のはずなのに、凍てつくような目をして、教室の隅で話している女生徒たちを、真上から腕を組んで見下ろした。
「きゃっ、あの、なんでもありませんっ」
と、驚いた女生徒たちは、慌てて蜘蛛の子を散らすように去って行った。
「はぁ…たくっ。兄上がいないとすぐこれだ」
とフェリスは溜息を吐きながら
「エレナ、クラブに行こうか?」
とエレナを見て優しく微笑んだ。
「…フェリス。ごめんなさい。ありがとう」
優しくされて堪らなくなったエレナの目には、ずっと我慢してきた涙が溜まり始め、今にもこぼれ落ちそうになっていた。
「エレナ、…こっちへおいで」
と、手を引いてフェリスは誰もいない廊下に連れ出し、涙がこぼれてしまったエレナの頭を撫でた。
「エレナ、気にしなくていいよ?あんな噂。君が魔法を消す魔女でカトリーナが聖女だなんて。何考えてるんだ、あの女ども!」
フェリスは忌々しそうに顔を歪めた。
「…いいのよ。そんな顔しないで?綺麗な顔が台無しよ?」
エレナはそう言って、泣きながら微笑んだ。
「それに…魔女ではないけど、私が魔法を消してしまうのは本当のことだし…カトリーナさんが聖女なのも本当のことよ…
…こうなることは所長にも言われていたし、最初から分かっていたことだから。
私…やっぱり研究所でお世話になった方がいいのかもしれない。
こんなによくない噂が立ってしまってはアーク様にとんでもないご迷惑だわ…」
涙を頬に伝わせながらエレナは全て諦めたように、静かに言った。
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