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44話 これからのこと
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ガラガラガラガラ……
アレスとミラは教会へ戻るための馬車の中にいた。
さすが王族の馬車だけあって、ふわふわのクッションの効いた座席はとても座り心地が良かった。
「ねぇ、ミリア?」
前の座席に座るアレスが口を開いた。
「はい、なんでしょうか?アレス様」
ミラは無機質に答える。
「もう婚約者になるんだし、アレスって呼んで?」
アレスは恋人のようになりたくて、お願いしてみた。
「その方がよろしいのですか?」
ミラはどっちでもいいので、一応確認した。
「それはそうだよ、そう呼んでくれたら嬉しい」
ニコッとアレスは微笑んだ。
「わかりました、ではこれからはアレスとお呼び致します」
「それからさ、その他人行儀な敬語もやめて?普通に対等に話して欲しい」
「わかりま…あっ、…難しいですね?私、敬語以外をあまり使ったことがないものですから、許して頂けませんか?」
「…そっか、そうなんだね。ごめん、無理言って。敬語が僕に対してだからじゃないならいいんだ。それが君らしさならそれでいい。そのままの君が知りたかっただけなんだ。
じゃあさ?君のこと何にも知らないから、少し聞いてもいいかな?」
「ええ、どうぞ」
「ミリアは、今いくつなの?」
…もう何万歳になるだろうか…本当の年齢など言えるはずもないし、正確には自分でさえわからない。
王子は確か18歳だと言っていた。結婚の年齢などを考えれば、同じ歳にしておくのが無難だろうとミラは思う。
「今年18になります…」
「じゃあ僕と同じだね。よかった、あんまり可愛いから、もっと年下で結婚できない歳だったらどうしようかと思ったよ。」
「問題なくてよかったです」
「じゃあ家族はいるの?できればご挨拶させてほしいんだけど」
「…いえ、いません。物心ついた頃には1人でした。どうしてそうなったのか、親が生きているのか死んでいるのかもわかりません。私には最初からこの薬を作る力がありましたから、それを売って1人で生きてきました」
半分本当で半分は嘘だ。
「……ごめん、聞いてはいけなかったな」
「いいえ、大丈夫です。途中から1人になったわけではないので、何とも思っていません。私の周りは教会に集まってくださるたくさんの方がいらっしゃいますから」
心配した顔をするので、もっともらしいことを言ってみた。
「…そうか。だから君はあそこにいたのか…」
勝手に勘違いを深めてくれた。
「その居場所から君を王宮へ移すのは、少し気が引けるな」
「…婚約中は別々に暮らすものなのではないのですか?」
「ああ、まぁ普通はそうなんだけど…
僕と君はお互い何も知らないから、もっとお互いを知りたいし、でも、君のいる教会と王宮は遠いから、王子としての役割を果たしながらだと、なかなか会いに来れなくなる。
だから、ミリアには王宮に一緒に住んで貰いたいと思ってるんだ。
それに、聖女と公表するということになれば、護衛も設備の整った邸も必要だから、僕のことを抜きにしても、王宮に来て貰うことになるんだ。本当に申し訳ない」
王子のためだけなら断わろうかと思ったが、聖女のためと言われれば仕方ない。
カーティス様に王宮の部屋にゲートを移して貰わないと!
と、ミラは心で強く思った。
アレスとミラは教会へ戻るための馬車の中にいた。
さすが王族の馬車だけあって、ふわふわのクッションの効いた座席はとても座り心地が良かった。
「ねぇ、ミリア?」
前の座席に座るアレスが口を開いた。
「はい、なんでしょうか?アレス様」
ミラは無機質に答える。
「もう婚約者になるんだし、アレスって呼んで?」
アレスは恋人のようになりたくて、お願いしてみた。
「その方がよろしいのですか?」
ミラはどっちでもいいので、一応確認した。
「それはそうだよ、そう呼んでくれたら嬉しい」
ニコッとアレスは微笑んだ。
「わかりました、ではこれからはアレスとお呼び致します」
「それからさ、その他人行儀な敬語もやめて?普通に対等に話して欲しい」
「わかりま…あっ、…難しいですね?私、敬語以外をあまり使ったことがないものですから、許して頂けませんか?」
「…そっか、そうなんだね。ごめん、無理言って。敬語が僕に対してだからじゃないならいいんだ。それが君らしさならそれでいい。そのままの君が知りたかっただけなんだ。
じゃあさ?君のこと何にも知らないから、少し聞いてもいいかな?」
「ええ、どうぞ」
「ミリアは、今いくつなの?」
…もう何万歳になるだろうか…本当の年齢など言えるはずもないし、正確には自分でさえわからない。
王子は確か18歳だと言っていた。結婚の年齢などを考えれば、同じ歳にしておくのが無難だろうとミラは思う。
「今年18になります…」
「じゃあ僕と同じだね。よかった、あんまり可愛いから、もっと年下で結婚できない歳だったらどうしようかと思ったよ。」
「問題なくてよかったです」
「じゃあ家族はいるの?できればご挨拶させてほしいんだけど」
「…いえ、いません。物心ついた頃には1人でした。どうしてそうなったのか、親が生きているのか死んでいるのかもわかりません。私には最初からこの薬を作る力がありましたから、それを売って1人で生きてきました」
半分本当で半分は嘘だ。
「……ごめん、聞いてはいけなかったな」
「いいえ、大丈夫です。途中から1人になったわけではないので、何とも思っていません。私の周りは教会に集まってくださるたくさんの方がいらっしゃいますから」
心配した顔をするので、もっともらしいことを言ってみた。
「…そうか。だから君はあそこにいたのか…」
勝手に勘違いを深めてくれた。
「その居場所から君を王宮へ移すのは、少し気が引けるな」
「…婚約中は別々に暮らすものなのではないのですか?」
「ああ、まぁ普通はそうなんだけど…
僕と君はお互い何も知らないから、もっとお互いを知りたいし、でも、君のいる教会と王宮は遠いから、王子としての役割を果たしながらだと、なかなか会いに来れなくなる。
だから、ミリアには王宮に一緒に住んで貰いたいと思ってるんだ。
それに、聖女と公表するということになれば、護衛も設備の整った邸も必要だから、僕のことを抜きにしても、王宮に来て貰うことになるんだ。本当に申し訳ない」
王子のためだけなら断わろうかと思ったが、聖女のためと言われれば仕方ない。
カーティス様に王宮の部屋にゲートを移して貰わないと!
と、ミラは心で強く思った。
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