38 / 80
38話 離れていても
しおりを挟む
「…そうか、では上手くいきそうだな。
よくやった、ミラ。王を助けたなら、これはかなり早く聖女になれそうだな。」
ミラは先程の部屋に置かれていた、豪華な長いソファに座り、カーティスはその近くの1人掛けのソファに座ると、今日あったことについて話し合っていた。
「ありがとうございます。そうなればいいのですけれど… 」
「まぁ、聖女になれば今よりずっと忙しくなるだろうからな…
なれなければなれないで、それでもいいだろう。その時はまた別の方法を考えるから、無理はしなくていい」
「はい、お気遣いありがとうございます」
ミラは自分のことを思ってくれるカーティスの優しさが嬉しくて、つい微笑んでしまう。
そんなカーティスのためだからこそ、がんばって聖女にならないと、と内心意気込んだ。
しかし、カーティスはミラのことを思っているような口振りで、実は自分の気持ちを優先しているだけだった。
聖女になんてなって、これ以上忙しくなったら、毎日帰って来れなくなるんじゃないのか?
ミラからアイデアだけ出してもらって、他の魔女にやらせればいいだろう?そうすれば、ミラは魔界にいられる…
…そんなことを考えているとは、ミラは夢にも思わなかった。
「それにしても…何か違和感があると思ったら、その髪のせいか。人間界の貴族に受けそうな髪色に変えてやったが、いつも魔界に戻れば自然に元の姿に戻るから、どうも見慣れないな」
「似合いませんか?…なんだか恥ずかしいですね」
「いや、似合っている。どっちでもいいが、まぁ、俺はいつもの色の方がお前らしくていいかな。俺と同じだし?」
自分で言って自分で照れ、少し耳が赤くなった気がしたのでカーティスは慌てて話を変える。
「じゃあ、俺は帰るけど、お前が明日王との謁見が済んだら迎えに来てやる。ここにゲートを作って急に消えてもおかしいだろうしな。
そうだな……終わったらこれで知らせろ」
そう言うと、カーティスは自分の髪を結んでいた赤い紐を取り、両掌の中に包み込む。
艶のある黒髪がサラリと肩に溢れ落ちた姿は、色気が放たれて、見るのも憚られるような美しさだった。
ミラがカーティスの色気に当てられ、ドキドキして俯いていると、カーティスの手の中が赤く光ったのが見えた。
そしてその手を開くと、先程の紐が赤い宝石のブローチに変わっていたことにミラは驚いて、ポカンと少し口を開けてしまっていた。
「…口、開いてるぞ」
と言いながら、カーティスは軽くその口にキスすると、何でもない顔をして、ミラのワンピースの胸元にそのブローチをつけた。
はっとなって、ミラは口を押さえた。
「…嫌なのか?」
不安気にミラの顔を覗き込んだカーティスを見て、ミラは口を押さえたまま、首を思い切り横に振る。
「ははっ、首がとれるぞ?」
と言ってカーティスは笑ったが、内心嫌がられなくて良かったとホッとした。
「俺に何か話したければ、そのブローチを握って頭の中で俺を呼べ。俺の力を注いであるから、これを握っていればお前に能力がなくても念話ができる。
明日終わったら、これで俺を呼ぶといい。
いいな?」
「はっ、はい。ありがとうございます、カーティス様」
ミラは真っ赤になりながら答えた。
離れていても連絡が取れる手段ができて安心したカーティスは、今度こそ帰る決意をした。
「じゃあな」
と言って、カーティスは来た時と同じガラス扉から出ると、姿を消して見えなくなった。
姿を消したカーティスの耳は真っ赤に染まっていた。
よくやった、ミラ。王を助けたなら、これはかなり早く聖女になれそうだな。」
ミラは先程の部屋に置かれていた、豪華な長いソファに座り、カーティスはその近くの1人掛けのソファに座ると、今日あったことについて話し合っていた。
「ありがとうございます。そうなればいいのですけれど… 」
「まぁ、聖女になれば今よりずっと忙しくなるだろうからな…
なれなければなれないで、それでもいいだろう。その時はまた別の方法を考えるから、無理はしなくていい」
「はい、お気遣いありがとうございます」
ミラは自分のことを思ってくれるカーティスの優しさが嬉しくて、つい微笑んでしまう。
そんなカーティスのためだからこそ、がんばって聖女にならないと、と内心意気込んだ。
しかし、カーティスはミラのことを思っているような口振りで、実は自分の気持ちを優先しているだけだった。
聖女になんてなって、これ以上忙しくなったら、毎日帰って来れなくなるんじゃないのか?
ミラからアイデアだけ出してもらって、他の魔女にやらせればいいだろう?そうすれば、ミラは魔界にいられる…
…そんなことを考えているとは、ミラは夢にも思わなかった。
「それにしても…何か違和感があると思ったら、その髪のせいか。人間界の貴族に受けそうな髪色に変えてやったが、いつも魔界に戻れば自然に元の姿に戻るから、どうも見慣れないな」
「似合いませんか?…なんだか恥ずかしいですね」
「いや、似合っている。どっちでもいいが、まぁ、俺はいつもの色の方がお前らしくていいかな。俺と同じだし?」
自分で言って自分で照れ、少し耳が赤くなった気がしたのでカーティスは慌てて話を変える。
「じゃあ、俺は帰るけど、お前が明日王との謁見が済んだら迎えに来てやる。ここにゲートを作って急に消えてもおかしいだろうしな。
そうだな……終わったらこれで知らせろ」
そう言うと、カーティスは自分の髪を結んでいた赤い紐を取り、両掌の中に包み込む。
艶のある黒髪がサラリと肩に溢れ落ちた姿は、色気が放たれて、見るのも憚られるような美しさだった。
ミラがカーティスの色気に当てられ、ドキドキして俯いていると、カーティスの手の中が赤く光ったのが見えた。
そしてその手を開くと、先程の紐が赤い宝石のブローチに変わっていたことにミラは驚いて、ポカンと少し口を開けてしまっていた。
「…口、開いてるぞ」
と言いながら、カーティスは軽くその口にキスすると、何でもない顔をして、ミラのワンピースの胸元にそのブローチをつけた。
はっとなって、ミラは口を押さえた。
「…嫌なのか?」
不安気にミラの顔を覗き込んだカーティスを見て、ミラは口を押さえたまま、首を思い切り横に振る。
「ははっ、首がとれるぞ?」
と言ってカーティスは笑ったが、内心嫌がられなくて良かったとホッとした。
「俺に何か話したければ、そのブローチを握って頭の中で俺を呼べ。俺の力を注いであるから、これを握っていればお前に能力がなくても念話ができる。
明日終わったら、これで俺を呼ぶといい。
いいな?」
「はっ、はい。ありがとうございます、カーティス様」
ミラは真っ赤になりながら答えた。
離れていても連絡が取れる手段ができて安心したカーティスは、今度こそ帰る決意をした。
「じゃあな」
と言って、カーティスは来た時と同じガラス扉から出ると、姿を消して見えなくなった。
姿を消したカーティスの耳は真っ赤に染まっていた。
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる