【完結】魔女のおしごと

かまり

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38話 離れていても

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「…そうか、では上手くいきそうだな。
よくやった、ミラ。王を助けたなら、これはかなり早く聖女になれそうだな。」

ミラは先程の部屋に置かれていた、豪華な長いソファに座り、カーティスはその近くの1人掛けのソファに座ると、今日あったことについて話し合っていた。

「ありがとうございます。そうなればいいのですけれど… 」

「まぁ、聖女になれば今よりずっと忙しくなるだろうからな…
なれなければなれないで、それでもいいだろう。その時はまた別の方法を考えるから、無理はしなくていい」

「はい、お気遣いありがとうございます」

ミラは自分のことを思ってくれるカーティスの優しさが嬉しくて、つい微笑んでしまう。
そんなカーティスのためだからこそ、がんばって聖女にならないと、と内心意気込んだ。

しかし、カーティスはミラのことを思っているような口振りで、実は自分の気持ちを優先しているだけだった。

聖女になんてなって、これ以上忙しくなったら、毎日帰って来れなくなるんじゃないのか?

ミラからアイデアだけ出してもらって、他の魔女にやらせればいいだろう?そうすれば、ミラは魔界にいられる…

…そんなことを考えているとは、ミラは夢にも思わなかった。

「それにしても…何か違和感があると思ったら、その髪のせいか。人間界の貴族に受けそうな髪色に変えてやったが、いつも魔界に戻れば自然に元の姿に戻るから、どうも見慣れないな」

「似合いませんか?…なんだか恥ずかしいですね」

「いや、似合っている。どっちでもいいが、まぁ、俺はいつもの色の方がお前らしくていいかな。俺と同じだし?」

自分で言って自分で照れ、少し耳が赤くなった気がしたのでカーティスは慌てて話を変える。

「じゃあ、俺は帰るけど、お前が明日王との謁見が済んだら迎えに来てやる。ここにゲートを作って急に消えてもおかしいだろうしな。

そうだな……終わったらこれで知らせろ」

そう言うと、カーティスは自分の髪を結んでいた赤い紐を取り、両掌の中に包み込む。

艶のある黒髪がサラリと肩に溢れ落ちた姿は、色気が放たれて、見るのも憚られるような美しさだった。

ミラがカーティスの色気に当てられ、ドキドキして俯いていると、カーティスの手の中が赤く光ったのが見えた。

そしてその手を開くと、先程の紐が赤い宝石のブローチに変わっていたことにミラは驚いて、ポカンと少し口を開けてしまっていた。

「…口、開いてるぞ」

と言いながら、カーティスは軽くその口にキスすると、何でもない顔をして、ミラのワンピースの胸元にそのブローチをつけた。

はっとなって、ミラは口を押さえた。

「…嫌なのか?」

不安気にミラの顔を覗き込んだカーティスを見て、ミラは口を押さえたまま、首を思い切り横に振る。

「ははっ、首がとれるぞ?」

と言ってカーティスは笑ったが、内心嫌がられなくて良かったとホッとした。

「俺に何か話したければ、そのブローチを握って頭の中で俺を呼べ。俺の力を注いであるから、これを握っていればお前に能力がなくても念話ができる。

明日終わったら、これで俺を呼ぶといい。

いいな?」

「はっ、はい。ありがとうございます、カーティス様」

ミラは真っ赤になりながら答えた。

離れていても連絡が取れる手段ができて安心したカーティスは、今度こそ帰る決意をした。

「じゃあな」

と言って、カーティスは来た時と同じガラス扉から出ると、姿を消して見えなくなった。

姿を消したカーティスの耳は真っ赤に染まっていた。
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