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22話 魔王とダンス
しおりを挟む「あっ、すみませんっ」
「お前が踏んだくらい痛くも痒くもない。気にせず続けろ」
「は、はいっ」
今はダンスのレッスン中で、慣れないミラは何度もカーティスの足を踏んでいた。
「あっ、また、すみませんっ」
と言って、カーティスから少し離れると、
「あのっ、私少し一人で慣れるまで練習します。このままではカーティス様の足をペチャンコにしてしまいそうで…」
「はっ、なんだそれは。俺の足はそんな簡単には潰れん、さっさと来い」
そう言うと、グイッとミラを引き寄せてダンスを続けた。
「大体、いつもミィは腰が引けて少し離れようとするから、上手くいかないんだ。
ちゃんと俺にくっついて、身を任せろ。
そしたら、自然に上手く踊れる」
そう言うと、ドギマギするミラに気にせず、しっかり密着させてカーティスは軽やかにリードする。
ここ何日かレッスンを続けているうちにカーティスは気づいたことがあった。
ミラに触れていると、申し訳なさそうな困った感情はもちろん伝わってくるが、
あの、マイナスエネルギーの部屋で感じた不思議な感情がよく流れ込んでくるようになり、
それが何故かはわからないが、いつの間にかカーティスは温かい気持ちにさせられて、ずっとこうしていたいような気持ち良さを感じていた。
だから、ダンスで足を踏まれても本当になんてことはないから、離れないで欲しかった。
そんなわけでカーティスは、色々なレッスンの中でも、一番触れ合う機会の多いダンスの時間を特に多く設けていた。
しかし、ミラはミラで思うところがあった…
ダンスってなんでこんなに密着しないといけないんでしょうか⁉︎
ちょっと、いえ、かなり恥ずかしすぎませんか?
カーティス様の手が腰に回されて、もう片方の手は私の手と繋いで、それに、私はカーティス様の高い位置にある肩に手を添えて…
こんなにお互いの体に触れ合うことが恥ずかしいことだとは知りませんでした!
カーティス様からはいつも良い香りがして、そのままくっついてしまいたくなるような気持ちにはなるのですけれど…
でも!つまりは私の方の匂いもカーティス様にわかっているのでは⁈
…臭くないかしら?…大丈夫でしょうか?…
一応毎日お風呂には入らせて頂いていますが…
でも気になって、そばにいるのがコワイ!
それに、背が高いけれど、細身でスタイルがいいのに、触るとしっかり筋肉があって、肩幅や胸板があるのもわかってしまって…
そんなカーティス様に抱かれるようにして密着すると、すごく安心したような気持ちにもなるのですが、それにも増して!
とにかく何故かドキドキしすぎてダンスどころではなくて、焦ると余計にカーティス様の足を踏んづけてしまうし、もうこの練習は本当に困ります!
なのに、やたらたくさん練習時間があって…もう本当に人間ってどうしてこんなことするのかしら!
くっつきたいカーティスと、くっつきたい気はするけど恥ずかしすぎて困っているミラのダンスレッスンは、なかなか技能の上達まで進まず、まだまだ続くことになりそうだった。
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