【完結】魔女のおしごと

11話 珍しい存在

魔女はとてもおどおどしていた。

その様子には奇跡のカケラもない、

ただの自信のない魔女だった。


こんな辺鄙な魔界村に住んだのは、

ここなら住める環境だったからかと思ったが、

ほとんど外にも出ないと言った。


それは魔王が代替わりし、

俺になっていることすら知らなかったことで、

本当だとわかった。


魔界を統べる俺のことを、

情報に聡い魔女の中で知らない奴など、いない。


そこまで隠れなければいけないほどに、

追い詰められているのは何故だ？


魔女は俺が魔王だと知ると、驚いて尻餅をついた。


フードが少しずれて顔が見える…


もっと大魔女風の年老いた女性姿かと思ったが…


カーティスの予想は完全に覆された。

『奇跡の魔女』は思いの外、若く可愛いらしい女性姿で、紫色の目は怯えていた。


カーティスは、感情を持つ者に触れると、

その相手の感情が流れ込んでくる能力があるので、

あまり誰にも触れたくないのだが、

あまりに魔女が怯えているので、手を引いてやった。


魔女は悪意は何もなく、ただ怯えていた。


初めて魔王を見るものはひれ伏したり、擦り寄ろうとしたり、

逆に気持ち悪いほど憧れてきたり、

とにかく自分のチカラを求めてくる。

カーティスにとっては、

そんな嫌悪感しかない感情を抱く者がほとんどだった。

それに、マイナスエネルギーではあっても、

魔界人同士のエネルギーは食糧にはならない。

ただこっちまで嫌な気分になるだけだ。

だから、触れるのを避けていた。


しかし、この魔女はただ怯えている。

自分を必要とせずに…  


自分のチカラを利用しようとしない者を見るのは初めてで、

カーティスは、妙な気分だったが、

少し気持ちが軽くなるような気もした。