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1話 魔女のおしごと
しおりを挟む人間にとって家畜とは、牛さんや豚さん、それに鶏さんなんかが有名なのでしょうか?
私たち魔界人も、それを食べることはできますが、一番美味しいのは、やっぱり人間の放っているエネルギー。
それも極上なのは、ネガティブな感情がしっかりこもった、マイナスエネルギーですね。
ですが、ネガティブなエネルギーを出してくれる動物は本当に限られています。
なぜなら、知能がないと、怖がったり、苦しんだり、悪いことを考えたり、何かを強く欲しがったりしないでしょう?
だから、私たち魔界人にとって、一番大事な家畜は人間なのです。
大切に怖がらせて、大切に苦しめて、大切に欲望を掻き立たせないといけません。
数が減ったら困りますから、死なないように、大切に、ネガティブな感情を育てて、
そのエネルギーをおいしく頂きます。
魔界人には色々います。
魔王様に始まって、魔獣や人型をした魔女、姿を持たないエネルギーだけの存在。
でも食べる物はみんな同じ、マイナスエネルギー。
ただ、うまく人間から集めるには、人型でないとやりにくいので、
家畜を育てて、食材を集めるお仕事は魔女にしかできません。
だから、魔女は魔界の中でとても重宝され、たくさんのお給料を頂いています。
かく言う私もその1人。…でした。
魔女として存在してから、もうどれくらいになるのか…
初めてお仕事をしに行った時、人間たちは
人間の体の何十倍も大きい獣に、石のオノで立ち向かって行くような、無謀なことをしていましたね。
あの頃は、それくらいでは人間たちは怖いとも感じなくて、なかなか仕事が捗りませんでした。
それに、まだまだ数も少なくて、とてもじゃないけど、魔界人のお腹を満たすことができなくて、大変でしたね。
今思えば、あの頃の魔界人は食糧難でした。
でも、色んな魔女たちと会議して、とりあえず人間を長生きさせて、たくさん子どもを産めるように、
飼料になりそうな植物や魚、肉などが簡単に手に入るよう、家畜の近くにそっと誕生させて、
私たちの大切な家畜たちはどんどん数を増やして行きました。
だけど、数は増えたものの、飼料が手に入ると、急に人間たちは穏やかになってしまい、
数は足りているのにエネルギーが得られないというとんでもない事態に陥りました。
だけど、私は思いついたのです。
この増えた家畜たちにいっぺんに恐怖を与えてはどうかと。
そうすれば、莫大なエネルギーになるはず。
だから、私は家畜の中で一番ムダに偉そうにしていた
何匹かの、『王』という名の家畜のそばへ占い師の格好をして近寄り、
「あっちの王があなたを狙ってたよ」
「そっちの王とあっちの王が一緒になって、あなたのところへ攻めてくるらしいよ」
なんて、けしかけてあげた。
それだけで、本当に他愛もない家畜は大きな争いを始め、
莫大な恐怖と苦しみ、欲望のエネルギーが生まれました。
魔界人は大喜びで、魔界を救った魔女だと私は一躍有名魔女となりました。
噂では『奇跡の魔女』とも言われていたそうです。
しかし、喜んでいたのも束の間で…
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