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拷問1日目 〜昼休憩〜

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「朝の拷問を完遂致しました。」
「うむ。」

客室。
リーモンは床に跪きながら、ソファに腰掛ける魔王に報告する。

「此度はまだ初日なのであまり負担をかけさせず、尚且つ彼奴は反抗心が強いためそれを挫かせることに重きを置いた拷問を施しました。」
「……うむ。」

魔王はそれだけ呟いたきり、押し黙る。
リーモンは先程の地下牢から追い出した不敬を憤っているものと思ったが、様子がおかしい。
何やら顔色が優れず、気まずそうにリーモンから視線を逸らしている。
その様子を見て確信した。

(ああ。陛下はをご覧になってしまったのだな。)

此処は魔王城で、魔王のテリトリーの中心。
遠隔からの視察など赤子の手を捻るよりも容易いことだろう。

(アレを見られるくらいなら無礼者と思われた方がマシかと思ったが…いや。
依頼者たる陛下に拷問を見せたくないというのが、そもそも不条理な言い分だったか。)

ばつが悪いが、魔王からは何も言われないためスルーさせていただく。

「流れとしましては軽い拷問で様子を窺い、心身ともに壊れることはないと見受けられれば、より厳しめな拷問を施そうと考えております。」
「…うむ。」

『あれが軽い拷問なのか』と言いたげな目を受け流し、リーモンは口を開く。

「不躾ながら、これまで彼奴に施してきた拷問の記録などは御座いませんか?
今後の参考とさせていただきたいのです。」
「ああ。保管庫にある筈だ。
しもべどもに申し付けるといい。」
「痛み入ります。」
「うむ。ではこのくらいにしておこう。」

解放されたリーモンは、魔王のしもべに保管庫に案内してもらう。

「これか…」

リーモンは念入りに手袋を装着し、ページを捲る。
それには語るもおぞましい拷問の内容が、長文に渡って記されていた。
火で炙った鞭で打ちつけた記録。
気絶するまで水に沈めては解放してを繰り返した記録。
体の表面が焦げ付くまで雷を浴びせた記録。
土に首だけを残して埋め、長時間身動きとれない状態で放置した記録。
魔法に頼ったもののみならず、高所から何度も突き落としたり、目前で血の通った生物を残酷に嬲り殺して脅したりなどの原始的な拷問などもしていたようだ。

(魔界で治癒魔法に精通している者は少ない。
拷問吏どもは腐心しただろうな…)

しかしリーモンにとっては降って湧いた幸運、新たな収穫だった。
これで確信した。
彼奴には一般的な拷問吏がやるような、殴る蹴るの拷問は通用しない。
そもそも彼奴は伝説の勇者の息子で、魔王の幹部を倒した経験もあるほどの手練。
魔物の悪意や攻撃など、日常茶飯事のように受けてきたことだろう。


(クックック…!!!)

リーモンはひとりほくそ笑み、保管庫を後にした。
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