タピタピクライシス 閉ざされた楽園 美しくも儚い青春残酷物語

二廻歩

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鏡の墓場

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第三ゾーン。ゾーンファイナル。
ミルルの仮説では異世界の扉は複数あるとのこと。
俄かには信じられないがもしそうだとするどう言うことになるんだろう?
我々は現在その一つに向かっていることになるのかな?

「音はどうなってる? 」
本当に正しいのか不安になる。
徐々に異世界に近づいて来てるはずだから音が強くなってると思うんだが……
「何かよく分かんねーけどすごく強く感じるんだ。
でもそれがどこかって言うと途端に分からなくなっちまう。そうだろ部長? 」
疲れからか言葉遣いが荒くなっているようだ。
ワイルドカズトが出てしまっている。

「痛い! 痛い! もうやめてくれ! 近い! 近い! 早く! 早く! 」
そう言って耳を塞ぐイセタン。重症だなこれは。
近づくにつれてどんどん悪化してるのが見て取れる。これは危険だ。危険過ぎる。
「青井先生。もうこのくらいで…… 」
ミホ先生がイセタンをやさしく支えてやる。

「この辺りなのは確かなんだ! でも…… 俺にはよく分からない」
悔しがるカズト。イセタンはそれどころではないと苦しそう。
二人の差は一体何なのだろう?
ただ単にイセタンの方が感受性が強いのか?
それともカズトが鈍感なだけなのか?
どうであれ異世界に導けるのは二人のみ。
貴重な役割を担っている。それだけにプレッシャーもあるし痛みも伴う。
残念だが俺たちでは力が及ばない。ただサポートするのみ。
悪いな二人とも。頑張ってくれ。

「カズトではここまでか? イセタンの方はどうだ? 
もう随分落ち着いたろ? 」
「先生! うわああ! 」
痛みに耐えるのにも限界か?
懸命に何かを伝えようとしているが残念ながらまったく伝わらない。
本当に大丈夫かな?
俺が代わってやれたらな…… それが無理なのは百も承知だがそれでも……
見ていられない。とは言えもはやどうすることもできない状態。
異世界にさえたどり着ければ恐らく何とかなるはずだ。
それもただの希望的観測でしかないが。

「もう限界! 」
ミホ先生とタオ、アイの三人が我慢できずに地べたに座り込む。
もう動けないと文句を言う。
それも当然か。俺が頼み込んで連れてきたようなものだからな。
随分無理をさせてしまったらしい。
まさかここまでの過酷な旅になるとは思わなかった。
イセタンにしろ彼女たちにしろ責任は俺にある。

一人元気なミルル。さすがは常冬村の者。見た目に反して体力は立派なもの。
三人の介抱をする。
ミコはさすがに疲れたのか踊る元気は残ってないようだ。
大人しくミルルの手伝いをする。

「大丈夫かイセタン? 」
「はい。どうにか…… でも苦しくて苦しくて」
イセタンの悲痛な叫び。何て悲惨なんだ。
まるで何かを暗示しているかのよう。
「それで音はどうだ? 」
「先生! 先生! あの辺りから聞こえます。それも激しく。
こうやって耳を塞いでもどうにもならないぐらい強烈な奴」
鏡がまるで並べらえてるかのように配置された天然のミラーロード。
ある意味自然だ。

「あそこだな? もう一度指で指してみてくれ」
イセタンに正確な場所を特定してもらう。
「はい! あそこです」
カズトもその辺だと濁したがやはり彼よりもイセタンの方が正確に捉えてるらしい。
それはカズトが不正確なのではなくイセタンがより一層正確に感じ取れるのだろう。
「よしもっと近づいてみよう」
「うわ…… これ以上は無理ですってば! 」
嫌がるイセタンをカズトと二人で引っ張っていく。
さあこれでついに念願の異世界か?

その時だった。突如化け物が襲ってきた。
一瞬の隙を突かれて鏡を用意する暇はなかった。
急襲により準備不足の上疲れで女性陣が離れてしまう。
すぐにミルルが鏡を取り出すが一人では無理。

「まずい! 急げこっちだ! 」
焦って呼び寄せるがその間を化け物が抜ける。
危うく怪我するところだったがどうにか回避したらしい。

今は抑え込むよりも女性陣に近づかせないことが大事。
パニックになりつつあるが冷静に鏡で動きを限定させミラーロードへ追い込む。
こうして化け物は吸い込まれ鏡によって封じ込められる。

一見ミラーロードに見えたこの天然の鏡群だが……
左右対称をなしておらず残念ながらミラーロードとまでは言えない。
どちらかと言えば鏡の墓場と言ったところか。
これをごみと捉えればごみの最終処分場とも言える。

                 続く
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