タピタピクライシス 閉ざされた楽園 美しくも儚い青春残酷物語

二廻歩

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他言無用 アークニン探索隊

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紹介されたバーには客は俺一人。いわゆる貸し切り状態って奴だ。
少し気まずいがこれなら何の気兼ねもなく聞ける訳だ。

そろそろ暖まって来たことだしそろそろ本題に入りますか。
「マスターの過去は置いておくとしてこの町について教えて欲しいのですが」
表情を見るが特に変化なし。
「何なりと。自分の分かる範囲でお教えしましょう」
そう言うと癖なのかコップを拭き始めた。
これは緊張を和らげるため? 俺は聞く者を誤ったか?
危険な予感。まさかマスターまで?

「ではさっそく。なぜこの辺りは寒いのでしょうか? 今は真夏ですよ」
常識では考えられない。せっかく泳ごうと思ったのに…… 
「ははは…… 寒いでしょう? 私も慣れるまでは寒くて仕方ありませんでしたよ。
今はさほど気になりませんがね」
「ええ真夏から真冬に一気に。堪ったもんじゃない! 」
マスターに愚痴ったところで変わらないが共感してくれる者を探していた。
ここの者は昔から変わらないから気にするはずもない。
生徒の前では恥ずかしくて寒い寒いと泣き言も言ってられない。
ミホ先生に慰めてもうのも違う気がするしな。

「私の知る限りでは東方から流れ出た冷気が町を覆い町全体を冷やしてると。
お客さんも観光で来てさぞかしビックリされたかと思います。
残念なことにこれが一年中続くんですよここは。この辺りではね」
流れ着いたある意味同じ境遇の先輩の有難いお話。
この町に慣れ我々に協力的なマスター。良い情報源だ。
うまく活用できれば悲願達成も夢ではない。
問題はここの者に気づかれることなく旧東境村への行き方をどう探るかだ。

それが一番難しいんだよな。
手掛かりは今のところ噂ぐらいなものだし。
このままただ闇雲に動き回っていてもな。
いつその旧東境村を知る者に出会えることか。
明日か? 一週間後か? 一ヶ月か? それとも十年後か?
いつ会えるとも知れない不確かな情報に踊らされる打破すべき現状。

「一つ疑問なんですがなぜこれほど若者が少ないのかご存じありませんか? 」
出会う者出会う者ほぼ老人または一歩手前。若くても少し下の世代。
若者と言ったら漁師の二人だがそれだって結構年を喰っていた。
昼間に集まった奴らも若いとは言えない。
俺と同世代かそれ以下の少年少女の姿が見当たらない。
ああでもお里さんの二人はクソガキだったな。
でもそうではなくこの間の世代がごっそり抜けている。
特に女の子が居ない気がする。
もちろん我々は歓迎された訳ではないので全員を把握することはないが。

「マスター? 聞いてますマスター? 」
「はい。私が流れ着いた時にはもうこの状態でして…… 詳しくは分かりません。
ただどこの地方も高齢社会に悩まされてると聞きます。
単純にここもそうなのでは? 若者は都会へ。そのまま帰って来ない。
残念ですがこれがこの国の現状です。他には? 」
おおこれは調子に乗って来たな。さあこのまま一気に行ってしまうか?
でも話してしまえば最悪敵に計画のすべてを知られることに。
判断は慎重を要す。
それに下手に話せばこのマスターだって巻き込まれる。
うーん。どうする? どうしたらいい?

「あのマスターは口が堅いですか? 」
「ははは…… 変なこと聞きますね。他言無用でと言うなら守りますよ。
評判を落とされては敵いませんからね」
そうやって笑うが本当に信用できるのか?
確かに下手に漏らせば信用を失い店が潰れる。
だが逆に言えば知らせなかったら町の者に潰されてしまうのではないか?
旧東境村に関わろうとそうでなかろうと平穏を乱す者を排除するのは自然なこと。
だからって暴力で訴えるのは違うが。それはただの正論でしかない。
脅威を感じればためらいはしないだろう。

「あなたを信用していいですね? 」
「ははは…… そんな危険な話を? 困っちゃうな…… 」
コップ拭きを終えてこちらに視線を向ける。
どうやら自分の意志を示したつもりらしい。

「マスターは引っ越す気は? 」
「この町をですか? それは分かりません。この町は気に入ってるんでね」
「では最後の質問…… 」
さあここまで確認を取れればいいだろう。
「はい。他言無用ですね。分ってます。分ってます。
出来るだけお客様に満足してもらうのが仕事ですからね。信用してください」

「何だと思いますか? 」
探り探りここまで慎重に進め今ようやくと言う時に怖気づきおかしな質問をする。
「そう言えばこんな話前にもしたな。あなたみたいな人たちがいましたよ」
マスターは仕方なくアークニン探索隊について話してくれた。
おいおい他言無用ではなかったのか?

                 続く
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