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平行線で交わろう

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金曜日の夜。
美人三姉妹の上二人が訪ねて来た。
もう鳴らさずとも合鍵で勝手に入って来る。
俺はもちろんそんなの作った覚えがないから奴らが勝手に。

彼女たちの訪問は毎週のことでルーティンと呼べるだろう。
彼女たちは決して飽きない。
俺が拒否しても許してはくれない。
そして決して他言しない。
未だに良好な関係が続いてる。
嬉しいような楽しいようなそれでいて悲しいような苦しいような。
ただこの関係をズルズル続けていいものか?

いつかはバレてしまうのではないかと言う恐れ。
この関係を清算したいと言う身勝手な思い。
二つの感情が入り混じり自分が分からなくなってくる。
ここは一つバシッと言ってやるか。

「こんなことしてていいのかお前たち? 」
あれ? 脅しをかけて二人を意のままに操りたい。そんな願望に囚われている?
おっといけないいけない。俺は何を考えてるのだろう?
どうであれ生徒と教師と言う一点においては決して交わらない関係。
平行線だ。
教師を捨てられないし美人三姉妹に嫌われたくもない。
だが俺だって教師である前に男であり人間である。
たとえ教師と生徒であっても男と女。間違いが起こることも度々ある。
「ホラ先生焦らない焦らない」
分かっていてもどうにもならない。
いっぺんに二人と相手するのはタフなのは間違いない。
「先生早く! 」
「怖いの? 」
焦って見たり急かしてみたり訳が分からない。
それを指摘すれば気分を害し最悪お流れとなる。
それだけはどうしても避けなければならない。

長女は恥の概念がないのか何のためらいもなく脱ぐ。これは脱ぎ慣れてるな。
二女は少し恥ずかしそうに。まだ慣れてないのか? 違いを見せる為か?
「そうだ。この間の事件はどうなったんだっけ先生? 」
「おい今更気にすることか? 知らなくても良いこともあるんだ」
制服消失事件は俺の手で秘密裏に解決した。もう終わったこと。触れる必要はない。

制服と言えば二人の格好。
夏休みに入ったから私服でもいいのだが俺がお願いして制服を着てもらっている。
そちらの方が燃えるからな。しかも敢えて冬服で。
室内を二十四度に設定。
すぐ脱ぐから無駄に冷え過ぎに思えるがそんな時は布団を掛ければいいさ。
熱気で暑いぐらいだ。

「先生! 」
ここでは先生はやめて欲しいな。俺はそんな大層なものでもない。改めてそう思う。
聖職者と言うには乱れ過ぎている。
もちろんそれだけではない。ふと我に返りそうで嫌なんだよね。
「分かった…… 分かった」

ここで暗闘。
激しい主導権争い。もはや限界が近い。
主導権を握れば俺の思いのままにことが進む。
一対二ではさすがに不利だが強引に抑えつければ屈服させられる。
逆に相手にされるがままも決して悪くない。
いや楽でいいぐらいだ。だからって譲るつもりはないが。
あーまたしても術中に嵌っている。そんな気がする。
俺はやっぱり甘いんだろうな。
厳しく指導してるつもりでも隙があるからそこを突かれ立場が逆転する。
もっと厳しくして生徒たちに尊敬されるようにならなければ。
それが理想だ。理想は理想。現実ではない。

「なあ夢が叶ったらどうなるんだろうな? 」
ふとつまらないことが浮かぶ。少しナーバスになってるのかな俺?
「ふふふ…… どうしたの先生。柄にもなく真面目なこと言って」
つい気を許してしまった。彼女たちは俺の弱点を常に突こうとしている。
俺の弱みを握り奴隷のように扱おうと。もう充分扱われているが。

「もちろん俺は金曜日が来るのが待ち遠しかった。
こうして夢が叶った今俺はどうしたらいい? 」
もっと哲学的な話だがどうせ理解してもらえないだろう。
二人には分かりやすく例を挙げてみた。
「それを本人を目の前に聞くの? 先生どうかしてるよ」
長女は相手にせず信じられないと憤る。
「ははは…… そうだな。俺どうかしてたぜ。お前らに聞いて分かるはずがない」
「そうだよ先生。今日はおかしいよ先生」
二女が笑いながら指摘する。冗談ではないのだがな。

二人は俺の頭を疑うがそうじゃない。
夢が叶った時、人はどうなってしまうのか?  
無になる気がする。それが怖い。
まさか新たな夢を目指せとでも?

俺の夢。俺の願望は彼女たちと戯れること。
まさか心の奥では彼女たちを服従させたいのか?
俺の思い通りにしたいのか?
そんなことないと言えば嘘になる。
夢が叶えばもっと具体的な夢へと変化していくのだろうな。
彼女たちと戯れるから彼女たちを屈服させ意のままに操りたいへと。

所詮俺はクズ。クズ教師なのだ。
彼女たちも俺に劣らずにクズ。
そもそも彼女たちが俺をこの道に引き込んだ。
あの日を境にクズに転落した。
結局のところ俺たちは密会を楽しむクズ仲間でしかない。
ははは…… 俺たちは一体どこでこうなっちまったのだろうな?
後悔とは少し違う。

                    続く
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