59 / 59
エピローグ 永遠のトナラー
しおりを挟む
<エピローグ>
女性が一人駆け込んできた。
「はいどうかされました? どうぞ落ち着いてください」
お巡りさんが対応する。
「実は…… 」
あれどこかで見たような……
「お母さん? カス君のお母さん? 」
俺より前にトワが正体に気づく。
「お母さんって…… ああっ! 何で母さんが? 」
もう意味が分からない。
「身元引受人って奴か? 」
前田さんはこんな時にまで冗談を言う。
「おおマミー」
ブブンカは故郷を思い出したのだろう。涙目。
「お母さん。息子さんがとんでもないことを。
まず私に痴漢を働きそれからストーカーですからね。もう信じられませんわ」
左横田さんはあることないこと吹き込む。そんな戯言を誰が信じると言うんだ?
少しは考えて発言して欲しいよな。迷惑なんだから。
「そうかお主の母上か。お疲れであろう。ここに座るが良い」
爺さんが席を譲る。
「ありがとうございます」
そう言って椅子に座り麦茶を飲み干すとかばんから何かを取り出す。
「それで母さん。何でこんなところに? 」
息子のピンチに駆けつけたとしてもなぜここが分かるのか?
「そう言えばお爺さんとここに向かう前に念の為カス君の実家に連絡したんだった。
後で連絡するってそのまま…… 」
すっかり忘れてたと笑うトワ。
「ああお爺さんと一緒に近くの交番に行くと言ってたからね。
トラブルになってるんじゃないかと心配になって飛んで来たんだよ。
家でも時々おかしなこと呟いてたからさ」
どうやらトワに原因があるらしい。心配させるなよな。
「それにしては遅くないか? 」
怖い方のお巡りさんが訝しむ。
「それがこれも馬鹿息子の尻拭いさ」
容赦のない母。困ったな。恥ずかしいじゃないか。
「もう! それで何の用があったって? 」
今はそんな話は本当はどうでもいい。
失踪事件の真相が知りたいんだからさ。
「だからこれ! あんたのだろ? 」
かばんから乱雑に取り出す。
「まさかこれって? 」
フィギアが一体。
見覚えがある。これはまさしく俺が求めていたもの。
元カノのトワではなくこの子。
「アトリ…… 」
「そう言えば見覚えがあるな」
上司はアトリ計画と名付けた張本人。見覚えがあって当然だろう。
「アトリ! アトリ! ああアトリ! 」
つい我慢出来ずにアトリの名を連呼する。
何日振りかの再会に涙が溢れそうだ。
「ふう届けたからね」
そう言って帰ろうとしたので必死に止める。
「何で母さんが? 」
「それが今朝連絡があってね。期限切れだから荷物を引き取りに来いとさ」
「期限切れ? あれ…… 確かあそこは三か月分前払いしてるから…… 」
「何だおかしいね。やっぱりオレオレ詐欺かねこれは? 」
「ちょっと待て! お主の三か月分は新居の話。
レンタル倉庫は確か先月までしか払っておらんかった気がするが」
お爺さんは紹介したので詳しい。
「あれ…… そうでしたっけ? 」
「まあまあ。それでは詳しくお話をお聞かせください」
お巡りさんにことの経緯を説明する。
「アトリ! ああアトリ! 」
大事に大事にフィギュアを抱きしめる。
「最低! 」
トワは呆れて帰ってしまった。
「儂らも帰るわ」
トナラーたちもようやく解放される。
「さあ帰ろうかね。今日は泊まっていくんだろ? 」
「うん。今日は疲れたよ母さん」
「だったら俺も帰ろうかな」
上司も帰り支度を始める。
「待ってください! あなたにはお聞きしたいことが山ほどあるんですがね」
交番で暴れたのだからただで帰す訳にはいかないそう。
仕方なく上司を置いて帰ることに。
「おい待ってくれよ! 置いて行かないでくれよ! 」
上司はたっぷり絞られたが被害者に処罰感情もないので不起訴となった。
ようやくアトリが戻って来た。
俺を捨てたのではなかったのだ。
小さなアパートを借りてアトリと二人暮らし。
ようやく念願が叶った。
「アトリ。もう寝ようか」
「はいご主人様! 」
元気なアトリが戻って来た。
こうして二人は夢が覚めるまでいつまでも幸せに暮らしましたとさ。
<完>
おまけ。
「ようやく解決ですね」
「お前なあ。サボってないで仕事をしろ! 」
交番にも平和が戻った。
「あれから皆さんどうしてるんでしょうね? 」
「知るかよ! 結局ただの失踪事件だからな。
しかも人間も人形も見つかったんだ。もう関係ねえ。
迷惑な奴らだったからな。清々するぜ」
彼らのせいで一時交番内がパニックになった。
二度と起こしてはいけない失態。
「それで何やってるんですか? 」
「呑気だなお前は。失踪事件だろうが! 」
一難去ってまた一難らしい。事件は待ってくれない。
「失踪事件? 」
「ああ失踪事件だ。このポスターに見覚えはないか? 」
「うん…… ありましたっけそんなの? 」
「ほら昨年の夏に失踪した…… 」
「ああ何でも一人が生き残ったって言う凄惨な事件。確か…… 」
「それじゃない! 転落失踪事件は一応解決しただろうが! 」
「だったら何? 」
「ポスターをよく見ろ! 」
そう言うと一枚手渡される。
「ああこれなら覚えてます。突然失踪したって」
「そうだ。高校のクラブの夏合宿で引率二名生徒数名が失踪」
失踪事件が無事解決したと思ったら今度は前代未聞の消失事件。
まったく手掛かりが掴めずに一年近くが経とうとしている。
「確か顧問が疑われてませんでしたか? 」
「ああ教え子に手を出すとんでもない教師でそれ以外にも悪い噂があった」
「やっぱり。それで…… 」
「捜査を尽くしたが結局常冬村で足跡が途絶えている。
とにかく俺たちも一刻も早い解決に全力を注ぐぞ! 」
「無理。無理ですって! そんな雲を掴むような話」
我々の手で失踪事件を解決したものだから張り切り出してしまった。
そんなレベルの事件のはずがない。
集団で突如失踪したのだ。たかが交番勤務では太刀打ち出来ない。
「よし食事にしようぜ」
同僚はもうすっかり失踪事件のことは忘れたのだろう。
何て切り替えが早いのか。
我々には我々の任務がある。
それを全うすることが一番。
ではお昼にしようかな。
<完>
この物語はフィクションです。
女性が一人駆け込んできた。
「はいどうかされました? どうぞ落ち着いてください」
お巡りさんが対応する。
「実は…… 」
あれどこかで見たような……
「お母さん? カス君のお母さん? 」
俺より前にトワが正体に気づく。
「お母さんって…… ああっ! 何で母さんが? 」
もう意味が分からない。
「身元引受人って奴か? 」
前田さんはこんな時にまで冗談を言う。
「おおマミー」
ブブンカは故郷を思い出したのだろう。涙目。
「お母さん。息子さんがとんでもないことを。
まず私に痴漢を働きそれからストーカーですからね。もう信じられませんわ」
左横田さんはあることないこと吹き込む。そんな戯言を誰が信じると言うんだ?
少しは考えて発言して欲しいよな。迷惑なんだから。
「そうかお主の母上か。お疲れであろう。ここに座るが良い」
爺さんが席を譲る。
「ありがとうございます」
そう言って椅子に座り麦茶を飲み干すとかばんから何かを取り出す。
「それで母さん。何でこんなところに? 」
息子のピンチに駆けつけたとしてもなぜここが分かるのか?
「そう言えばお爺さんとここに向かう前に念の為カス君の実家に連絡したんだった。
後で連絡するってそのまま…… 」
すっかり忘れてたと笑うトワ。
「ああお爺さんと一緒に近くの交番に行くと言ってたからね。
トラブルになってるんじゃないかと心配になって飛んで来たんだよ。
家でも時々おかしなこと呟いてたからさ」
どうやらトワに原因があるらしい。心配させるなよな。
「それにしては遅くないか? 」
怖い方のお巡りさんが訝しむ。
「それがこれも馬鹿息子の尻拭いさ」
容赦のない母。困ったな。恥ずかしいじゃないか。
「もう! それで何の用があったって? 」
今はそんな話は本当はどうでもいい。
失踪事件の真相が知りたいんだからさ。
「だからこれ! あんたのだろ? 」
かばんから乱雑に取り出す。
「まさかこれって? 」
フィギアが一体。
見覚えがある。これはまさしく俺が求めていたもの。
元カノのトワではなくこの子。
「アトリ…… 」
「そう言えば見覚えがあるな」
上司はアトリ計画と名付けた張本人。見覚えがあって当然だろう。
「アトリ! アトリ! ああアトリ! 」
つい我慢出来ずにアトリの名を連呼する。
何日振りかの再会に涙が溢れそうだ。
「ふう届けたからね」
そう言って帰ろうとしたので必死に止める。
「何で母さんが? 」
「それが今朝連絡があってね。期限切れだから荷物を引き取りに来いとさ」
「期限切れ? あれ…… 確かあそこは三か月分前払いしてるから…… 」
「何だおかしいね。やっぱりオレオレ詐欺かねこれは? 」
「ちょっと待て! お主の三か月分は新居の話。
レンタル倉庫は確か先月までしか払っておらんかった気がするが」
お爺さんは紹介したので詳しい。
「あれ…… そうでしたっけ? 」
「まあまあ。それでは詳しくお話をお聞かせください」
お巡りさんにことの経緯を説明する。
「アトリ! ああアトリ! 」
大事に大事にフィギュアを抱きしめる。
「最低! 」
トワは呆れて帰ってしまった。
「儂らも帰るわ」
トナラーたちもようやく解放される。
「さあ帰ろうかね。今日は泊まっていくんだろ? 」
「うん。今日は疲れたよ母さん」
「だったら俺も帰ろうかな」
上司も帰り支度を始める。
「待ってください! あなたにはお聞きしたいことが山ほどあるんですがね」
交番で暴れたのだからただで帰す訳にはいかないそう。
仕方なく上司を置いて帰ることに。
「おい待ってくれよ! 置いて行かないでくれよ! 」
上司はたっぷり絞られたが被害者に処罰感情もないので不起訴となった。
ようやくアトリが戻って来た。
俺を捨てたのではなかったのだ。
小さなアパートを借りてアトリと二人暮らし。
ようやく念願が叶った。
「アトリ。もう寝ようか」
「はいご主人様! 」
元気なアトリが戻って来た。
こうして二人は夢が覚めるまでいつまでも幸せに暮らしましたとさ。
<完>
おまけ。
「ようやく解決ですね」
「お前なあ。サボってないで仕事をしろ! 」
交番にも平和が戻った。
「あれから皆さんどうしてるんでしょうね? 」
「知るかよ! 結局ただの失踪事件だからな。
しかも人間も人形も見つかったんだ。もう関係ねえ。
迷惑な奴らだったからな。清々するぜ」
彼らのせいで一時交番内がパニックになった。
二度と起こしてはいけない失態。
「それで何やってるんですか? 」
「呑気だなお前は。失踪事件だろうが! 」
一難去ってまた一難らしい。事件は待ってくれない。
「失踪事件? 」
「ああ失踪事件だ。このポスターに見覚えはないか? 」
「うん…… ありましたっけそんなの? 」
「ほら昨年の夏に失踪した…… 」
「ああ何でも一人が生き残ったって言う凄惨な事件。確か…… 」
「それじゃない! 転落失踪事件は一応解決しただろうが! 」
「だったら何? 」
「ポスターをよく見ろ! 」
そう言うと一枚手渡される。
「ああこれなら覚えてます。突然失踪したって」
「そうだ。高校のクラブの夏合宿で引率二名生徒数名が失踪」
失踪事件が無事解決したと思ったら今度は前代未聞の消失事件。
まったく手掛かりが掴めずに一年近くが経とうとしている。
「確か顧問が疑われてませんでしたか? 」
「ああ教え子に手を出すとんでもない教師でそれ以外にも悪い噂があった」
「やっぱり。それで…… 」
「捜査を尽くしたが結局常冬村で足跡が途絶えている。
とにかく俺たちも一刻も早い解決に全力を注ぐぞ! 」
「無理。無理ですって! そんな雲を掴むような話」
我々の手で失踪事件を解決したものだから張り切り出してしまった。
そんなレベルの事件のはずがない。
集団で突如失踪したのだ。たかが交番勤務では太刀打ち出来ない。
「よし食事にしようぜ」
同僚はもうすっかり失踪事件のことは忘れたのだろう。
何て切り替えが早いのか。
我々には我々の任務がある。
それを全うすることが一番。
ではお昼にしようかな。
<完>
この物語はフィクションです。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
【完結】夫もメイドも嘘ばかり
横居花琉
恋愛
真夜中に使用人の部屋から男女の睦み合うような声が聞こえていた。
サブリナはそのことを気に留めないようにしたが、ふと夫が浮気していたのではないかという疑念に駆られる。
そしてメイドから衝撃的なことを打ち明けられた。
夫のアランが無理矢理関係を迫ったというものだった。
妻のち愛人。
ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。
「ねーねー、ロナぁー」
甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。
そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる